研究会ブログ

2016年08月 5日 Fri. Aug. 05. 2016

山本豊津氏著書『アートは資本主義の行方を予言する』

9月15日の文化経済研究会でご講演いただく山本豊津氏ご著書、『アートは資本主義の行方を予言する』を紹介します。

山本豊津氏は日本で最初の現代美術の画廊「東京画廊」の長男で、日本の現代美術を世界に紹介し、世界での普及に大きく貢献されています。

本書は、アートに何故あんな高額な買値がつくのか?そもそもアートって何だろうか?そんな素朴な疑問に分かりやすく答えてくれる書籍です。

 

■なんで絵画に数十億や数百億の値段が付くんだろう?

 

「○○の絵が××億円で落札!」

こんなニュースを見るたびに誰もが頭に思い浮かべる疑問ですが、大きく分けると理由は2つ。

 

・絵画は希少価値が高いから

世の中の「商品」は「使用価値」と「希少性」によって価格が決まります。ペンや消しゴムなど「使用価値」が高すぎるものは大量流通するので「希少性」が下がります。

芸術を「商品」と見た場合、「使用価値」がほぼゼロであるが故に流通はし辛く、ほぼ全てが一点もの。翻って、「希少性」が非常に高いコレクター商品となるのです。

 

・富豪の投資対象として社会的なコンセンサスがあるから

壷や現金や金塊と違い、持ち運びしやすい絵画はいざという時に抱えて逃げられるので大金持ちにとってはありがたい換金装置です。

また、お金を見せびらかすわけにはいかないけど絵画なら見せびらかしても度が過ぎなければいやらしくならず、絵画に対して投資をする自らの文化度を誇示できるという側面もあります。

 

■「美」は武力に勝る?

美術が持つ力が国家すら動かした例が日本にあります。

戦国時代、諸侯は部下に戦果の褒章として土地を与えていましたが、段々と褒章のための土地も無くなってきたころに織田信長は「茶」に目をつけます。

お茶に通じている教養人ほど偉いということにして部下に序列を付けたのです。褒章も、土地の代わりに高価な茶器をあげることにしました。

 

ではその茶器の良し悪しは誰が決定するのか。白羽の矢が立ったのは、堺の商人の中でも特に高い審美眼と知見を持っていた千利休でした。

 

利休の審美眼に適ったものであれば一介の瓦職人の作った茶器でも城以上の価値に値上がりするほど。

茶器の世界において室町時代までは「唐様」と呼ばれる中国の様式が主流で、「中国>日本」という図式がありましたが、これを期に日本の作品の価値が上がり、利休の権威も一時は秀吉を凌ぐほどだったとか。

それが災いし、秀吉に恐れられた利休は町人であるにもかかわらず切腹を命じられてしまいますが、これは今も続いている茶の湯の歴史であり、日本文化の一つの潮流は、ここに始まったのです。

 

■美が世界を動かしていく

美と芸術が持っている力は相変わらず強大です。

その証拠に、世界最大の軍事力と経済力を持つアメリカが何よりも欲したのは文化と芸術における覇権でした。1935年から1943年にかけて行われた連邦美術計画といわれる芸術家支援で、5000人から1万人に及ぶ芸術家が20万点もの作品を制作し、それが全米の公共機関や学校、病院やビルを飾りました。

1964年、ラウシェンバーグがヴェネツィア・ビエンナーレで最優秀賞を受賞したことで、米国は芸術の中心地としての地位をパリから勝ち取ったのです。

 

国家も人も、経済力や武力だけでは他者から尊敬されることはありません。文化や芸術においても高い見識を持っていることを認められてこそ、ようやく誇りを感じることができます。

文化・芸術・アート。

これらの言葉からは戦争や暴力とは正反対の清廉なイメージが喚起されますが、実は戦争や暴力以上に強大なパワーと権威を秘めています。

 

9月15日の文化経済研究会では、アートの最前線でその裏も表も知り尽くす山本豊氏に、芸術が持つ「力」をお話いただきます。ご講演に是非お越しください。

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