研究会ブログ

2015年11月20日 Fri. Nov. 20. 2015

文化経済2015.11月講演レポート①/伊藤明氏

第80回文化経済研究会セミナー(2015.11.19開催)の様子をお届けいたします。

第1部は銀座伊東屋 代表取締役社長、伊藤明氏。

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演題は「『書く』は文化を創る 100余年の系譜」

 

■「商人は革新をしつづけなければいけない」

「文化という言葉は文に化けると書きますが、何かが文にされたときに文化が生まれます」

書くという行為が文化を創ってきました。

 

文房具店のほとんどが卸売りですが、伊東屋はほぼ店頭販売。その意味でも伊東屋が単なる文房具店ではなく伊東屋というブランドを築いているということが分かります。

そのブランドは100余年の間守り続けてきたもののおかげというよりも、その間ずっと変わり続けてきたからこそ出来上がったもののようです。

 

「もの作りでは伝統は守れますが、商人は革新をし続けなければいけません」

 

と仰られていたように、何かの商品を作っているメーカーならばいざしらず、自らが良いと思ったものを仕入れて編集して売り出す伊東屋という業態の性質上、生活者にとってより魅力ある存在とならなければこれだけの長い年数にわたってブランドは保たれません。

 

IT革命と言われた2000年ももはや15年前。働き方はそれによって随分換わりました。パソコンやスマートフォンは1人1台が当たり前。それによって、オフィス以外の場所でも働くことが可能になり、「働く」という行為には不可欠だった文房具も変化を余儀なくされています。

 

文房具とはオフィスに固定されて動かないものという意識から、流動性の高い道具へ。固定からモバイルへ、というコンセプトが伊藤社長の中で大きな部分を占めているように感じられました。

 

■伊東屋リニューアル。ファミリー企業のメリット

今年6月16日、銀座伊東屋はリニューアルされた新店舗がオープンしかつてのそれとの変わりように今まで伊東屋に慣れ親しんでいた人も驚かれた方が多いと思います。

建て替えの際に心がけていたのは今後100年も耐えられるビル。

そこで、古臭くならずに飽きないためにシンプルな形にし、装飾が無く、改装をしやすくするために天井は高くスペースをとり、外との連動性を持たせるために大きな窓が取り付けられています。

商品ごとに分かれていたカテゴリーは廃止し、「シェア」「デスク」「ミーティング」「トラベル」など生活シーンごとのカテゴリーが設けられています。

それによって、残念ながら離れてしまった既存ファンの方もやはりいらっしゃるそうですが、逆に20代や30代などの従来の伊東屋を知らなかった新たなファンを開拓できたよう。

 

「僕は5代目なのですが、ファミリー企業では世代交代でガラッと代わります。息子は父親に反抗して別のことをしようとするので(笑)」

 

トップが替わっても体質がほとんど変わらず、それが良い方向に作用している企業も多くありますが、トップの交代が世代交代と綺麗に結びつくのがファミリー企業のメリット。

バイヤーやスタッフも新たな世代の人材を起用することで、若い顧客の好みや生活に合わせた提案が以前よりもスムーズにできるようになります。

 

■「毎日来ても心地よい」に表れる覚悟

そのために掲げているビジョンは、

「毎日来ても心地よく、笑顔になれて 新たなインスピレーションが得られる店」

 

伊東屋といえば100年の伝統を持つ文房具店というイメージも少なからずあると思いますが、伊藤社長のお話からは「伝統」や「歴史」という言葉はほとんど聞かれず、既に記したようにいかに変えていくか、いかに新たな風を呼び込んでいくかということへの挑戦の方が垣間見られました。

 

「毎日来ても心地よい」という言葉に表れているのは、働き方がITによってモバイルなものとなっている生活者に寄り添い、これからも革新を続けていくというスタンスを表わしているのではないでしょうか。

 

伊藤社長が冒頭でお話されたように、「書く」ということ、文章化されることが文化を創ってきました。文明はそれをより普遍化し、誰が何をしても同じ効果を得られるようなツールやシステムの開発を目指します。

文明と文化は不可分ではなく、文明の進歩に文化は否応も無く晒される宿命です。

文房具とは文明と文化を媒介するような存在に思えますが、伊藤社長は講演に自らMACを持ち込み、資料も全てご自身で作られるIT通。

今後、伊東屋の中で文化と文明がどう交じり合っていくのかが注目を集めます。

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