研究会ブログ

2014年01月 7日 Tue. Jan. 07. 2014

書評③~南場智子著 『不恰好経営』

文化経済が注目した2013年ベストセラー本の第三弾は、

南場智子著の『不恰好経営』。

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1999年に立ち上げられたDeNAが現在に至るまでを創業者の南場智子氏自身が語る。冒頭で「チームDeNAはなにもそこまでフルコースでぜんぶやらかさなくても、と思うような失敗の連続」と語られるように、様々な失敗談の集積がこの本である。

 

DeNAと言えばモバゲーやネットオークションで成功を収めたIT企業の星の一つであり、ベイスターズのオーナーでもあるが、どれほどの失敗を重ね、どれほどの紆余曲折を経てここまでやってきたか、その原点を振り返るためにこの本は書かれたのだという。

著者の南場氏はかのマッキンゼー出身の経営コンサルタント。

 

マッキンゼー時代の顧客にネット・オークション事業を開始するべきだと示唆した際に、

「そんなに熱っぽく語るなら自分でやったらどうだ?」

と言われたのが全ての始まりだったそうだ。

そこから彼女は「熱病に掛かったように」ネット・オークション事業のことしか考えられなくなってしまい、マッキンゼーから少数の仲間を集めてDeNAを立ち上げる。

 

そこから怒涛の失敗劇の連続である。

サービスを開始する直前になってシステムが全く出来ていないことが発覚する。

やっと立ち上げたオークションは肝心のウェブでの出品機能が未実装。

バックアップ処理中のデータの消失。

などなど。

 

なんとか全て対処したからこそ今のDeNAがあるわけだが、緊急に対処できるエンジニアを起こすために朝の6時からエンジニアが住んでいるマンションの前で起きろと叫びまくるエピソードを代表として、どの立ち直り方も全て非常に格好が悪い。

 

正に『不恰好経営』というタイトルの通りだ。

 

様々な不恰好な人間が登場する本だが、南場智子氏の夫もその一人である。

躍進するDeNAの切り盛りに南場氏が追われている最中、突如として告げられる夫の癌宣告。2011年4月末。

 

「今行くから。助けに行くから。これまでの人生は全部このときのためにあったんじゃないだろうか」

 

マッキンゼー時代の同僚だったという2人は、お互いに自由を保ち、家に帰っても時間を共有することは余りなく、マッキンゼーの同窓会で「久しぶり!」と言い合うこともあったという。

 

癌宣告を受けたときに、そのような関係だったことを彼女は振り返った。

「今を起点にベストを尽くす」

だから問題なのはこれからどうするのかだ。そう思ったという。

 

起こってしまったことは仕方がない。

回避しようと思えば回避できた事態を招いてしまった事を後悔しても仕方がない……とは言わない。ここまで失敗ばかりを描くこの著作に「後悔しても仕方ないよ!」なんていう言葉は似合わない。

 

「生きることに固執し、悪あがきをし、いろんな人に支えられて踏ん張った」甲斐あって、なんと余命数ヶ月と言われていた癌から夫は復帰する。

 

南場智子も、その夫も、不恰好に何かに固執するが、その自分たちの姿勢に一遍の疑いも抱かない。そこにあるのは希望に向かって進んで行こうとする意思だ。

その時、この本の中では「不恰好」だとか、「悪あがき」だとかは寧ろ褒め言葉になっている。不恰好こそカッコイイ、そう胸を張っているようでもある。

そうすると南場氏はある意味一番のカッコ付けなのかもしれない、そう思った。


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