研究会ブログ

2014年12月12日 Fri. Dec. 12. 2014

ダニエル・ピンク著書『フリーエージェント社会の到来』新装版

2002年に出版され、様々な人の生き方に示唆を与えたダニエル・ピンク著書『フリーエージェント社会の到来』新装版で今年出版されたのでそのレビューをお届けします。


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著者であるダニエル・ピンクは大統領のスピーチライターとして活躍していましたが、過労と家族との時間が取れないことに嫌気が差し、ホワイトハウスを去ります。

そこでフリーランスという働き方について自ら調査を行ったところ、2002年時点でアメリカでは1650万人、臨時社員は350万人、ミニ起業家は1300万人で合計すれば3300万人、労働人口の4分の1。

アメリカではフリーエージェント人口は製造業や公務員などをすべて合わせた数も上回っています。


多くの調査に基づいてフリーエージェントのライフスタイルが調査されています。

特に第6章ではそれが主題になっていて、仕事と私生活が混在した独特の労働形態が新鮮です。あるフリーエージェントの女性の1日を追ったレポートなどもあって、その生活がリアルに分かります。


また、本書ではフリーエージェントスタイルの負の側面にも触れています。

「劣悪な環境ですずめの涙ほどの給料の為に退屈な仕事をしている臨時社員、正社員と同じ仕事をしているのに派遣社員であるという理由で医療保険などの付加給与を受けられない」

人々がそうです。


しかし、それは全フリーエージェントの「ごく一部に過ぎ」ず、問題は臨時社員か正社員かと言うことではなく、「需要のある能力を持っているか、市場との交渉力を持っているか」というところにあると断しています。

このあたりが本書の少し弱いところのように見受けられます。

 

ここで、この本の舞台であるアメリカから目を転じ、日本でのフリーエージェントを振り返ってみたいと思います。

世論は忘れてしまったかもしれませんが、日本にもフリーエージェントの波は2度来ています。

 

まずは1980年代後半に「フリーター」という言葉が生まれた時代です。

フリーターは、就職という正規のルートから外れても夢に向かって頑張る「坂本竜馬のような人」、「組織に縛られない新たな雇用形態」と、リクルートやマスコミに持ち上げられ、多くのフリーターが量産されました。

 

次は2003年に行われた小泉内閣による労働者派遣法改正です。例外扱いで禁止だった製造業および医療業務への派遣が解禁になり、製造業を除いた業種では派遣期間の上限を1年から3年に。

就職氷河期に直撃してしまった若者の一時的な受け皿となり、この改正により派遣労働者が、約33万人(2000年)から約140万人(2008年)に増加。しかしこの世代の若者たちが「失われた10年」と呼ばれ、労働市場にうまく復帰できていないことは周知の事実です。

 

話を本に戻しますが、

「力の所在が組織から個人に移った結果、資本ではなく人材が最も重要な資源になった」

 

それにより、フリーエージェント間の橋渡しをするフリーエージェントネーションが成立していることが、ダニエル・ピンクの言うフリーエージェント社会の根幹にあることが分かります。

つまり、同一労働同一賃金の前提で労働力の買い叩きへの抑止力が国家によって担保されているということがフリーエージェント社会には欠かせません。

 

しかし日本にはこれがない。

企業を横断する労働組合のない日本は、そもそも同一労働同一賃金という前提が曖昧。

ゆえに、本書で書かれている生き方を100%忠実に日本で実現することは少し困難なように思います。

 

とは言え、この本の帯に書かれている以下のコピーを考えると違った見方もできます。

 

「柔軟で好奇心を大切にするフリーエージェントとして生きたいなら、次のことから始めてみよう。大事なのは夢見ることではない。行動することである。

1. 自分はフリーエージェントになる、と外部に向けて「FA宣言」しよう

2. 自分のホームページをつくり、フリーエージェントとしてやりたいことや、やれることを、とにかく発信しはじめよう

3. 日ごろ思っていることや感じていることについて率直に話し合える仲間を、働いている場所や通っている学校の外にせっせとつくろう」

 

このような行動が大事になるのは、派遣労働者や臨時社員ではなく、本書で定義される3つのフリーエージェントの最後の形、ミニ起業家です。

日本版の装丁の帯にこの言葉が選ばれたということは、派遣労働や臨時社員もひっくるめて「フリーエージェント」としている本書を、日本ならではの解釈で上手く読んでほしいという翻訳者からのメッセージでしょうか。

 

また、本書はフリーエージェントのノウハウ本というよりは、フリーエージェントに必要な心得や基本的な人間力、それが実現されたときの魅力が主に語られています。

思うに、本書はノウハウを学ぶ本ではなくてフリーエージェントという生き方をしたい人がくじけそうになったときに立ち返るための本……という位置づけができるでしょう。

 

フリーエージェントという働き方がこれからの日本でも見逃せなくなってくるのは事実です。マイナス面にも触れましたが、本書が働くことの意味について考える全ての人にとって価値がある本であることは間違いありません。


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