研究会ブログ

2014年08月 8日 Fri. Aug. 08. 2014

文化経済研究会会員様インタビュー/株式会社ワンスアラウンド、鈴木理善様 前編

株式会社ワンスアラウンドは小売店の実践型コンサルティングを

メインプログラムとし、「お役に立つ」が企業理念。

鈴木理善代表取締役に、小売業界の現状やその想いをお伺いしました。

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◆実践型コンサルティングの設立

-会社設立の想いを教えてください。

この会社は設立して12年目になります。もともと鈴屋という小売業にいたのですが、97年に民事再生法が適用され事実上倒産しました。そこから私がオーナーに代わって再生に携わったのですが、2002年に大体の目処が付いたのでこの会社を設立しました。

それに当たって、私は谷口先生の大ファンなのでご挨拶にお伺いしたんです。すると結局君は何がしたいのかと問われたので、私はやはり小売業を元気にしたいと答えました。

ネットや通販、アウトレットなど色々な意味で販売は多岐に渡るだろうという予測があったのですが、その中にあるリアル店舗を、そこのスタッフや店長を元気にしたかった。

その際に「プロフェッショナルキャリアデリバリー」、そして「ハンズオン」という言葉を谷口先生に頂きました。「ハンズオン」は実践という意味ですね、実践的に、プロフェッショナルなキャリアそのものをお届けする。そして現場を元気にする。それが僕に響いて実践型の会社を作ろうと思ったんです。

 

◆徹底した現場主義

ワンスアラウンドはカテゴリーで言うとコンサルティングに当たりますが、お話をするだけではなくて実践型のソリューションをコンセプトにしています。実際に現場に赴いて会社やお店を元気にするんです。またビームスさんなどのアパレル系ブランドを中心に19店舗を手がけており、その運営を代行して現場の問題を日々拾いながらコンサルに活かしています。

「ワンスアラウンドさんに頼んだら絶対に売上は大丈夫だよね」

とよくお客様に言っていただくのですが、実際は凄く難しくて(笑)。でも思うようにならないからこそこの運営代行をやっています。そこで試行錯誤が生まれるので、次に活かすことができますから。

 

-コンサルタントと小売の間にあるんですね。

いえ、私にとって両者は同じなんですよ。コンサルティングも運営代行も、現場と1人ひとりを元気にすることがミッションですから。

わが社の場合は現場に立つことで両方ができます。そうすると様々な反応も分かりやすい。現場で起こっていることは常に新しいことで、昨日はもう古いんですよ。新しいものを毎日キャッチアップしながらコンサルができるっていうのは私の理想でもあるんです。

 

◆ファッション専門店も今は昔

-今のほうが昔より変化は激しいですよね?その対応も難しいのでは?

ちょうど40年ぐらい前に私が居たファッション専門店という業態は、当時のベンチャー。

つまり、今のIT企業のように伸びしろや活躍の場があったんです。そうすると店長やスタッフも伸びる。でも今の時代どこに伸びる余地がありますか?やりがいが非常に感じ辛いんです。それが非常に問題ですね。

片やショッピングセンターの数は激増し、20年前の平均坪効率が100だとすれば、今は6割ぐらいで、どんどん売上は下がっています。空中戦でネットもあります。そういう中でリアル店舗の店長はやりがいを感じられず、人も足りず、売上も達成できない。更に本部からは合理化ということで人を削られる。以前とは大違いです。

 

◆専門店は小料理屋になるべし

逆に言えばお店を持っている販売員が何をすべきか非常にはっきりしているんですよ。それはネットではできないこと、つまり人的な暖かさやホスピタリティ、おもてなしです。例えばね、刑事ドラマなんかでよく最後に主人公が女将の居る小料理屋さんで一息付いているでしょ。あれが専門店なんですよ。女将に会いたいから会いにいく。料理の美味しさはブランドの商品力だと考えればいいです。あとは人の魅力。それが店長たちのミッション(働く使命)だと私は伝えています。

ちょっと話しに行きたかったり、ファッションのアドバイスを貰いたかったり、そういう時に必要とされる存在になれればそれがお店スタッフのやりがいだと思いますね。お客様が自分たちのために来てくれる訳ですから。ミッション(働く使命)を明確に、具体的にして、こんなお店にしたいというビジョン(目標)を持たないといけません。そうでないお店はネットに負けてしまいます。

これは企業理念の「お役に立つ」ということとも繋がります。「お役に立つ」とは1人ひとりが、そして会社が得意分野をつくるということなんです。ある人の笑顔を見て誰もが元気になることができれば、その人は笑顔が得意な人ということです。私は、得意とは“状況を変える力”だと言っています。

 

◆マーケティングの経験とノウハウ

-得意であることをもって現場を元気にするということですね。

そう。得意をもって実践する、つまり「ハンズオン」ですね。実践的に行うことが一番相手の心を打ちますからね。社名である「ワンスアラウンド」というのも、もう1度周ってみよう、現場に答えがあるということです。共に周って課題を発見します。

その時に面白い話があって、ある地域の客層ってその地域の大きな本屋さんを見れば大体分かるんですよ。VERYなのか、Can Camなのか。ランキングも含めて見たらもっとよく分かります。

あとよく観るのは足元。どういう靴を履いているのか。例えばおおたかの森にあるSCと柏の葉にあるSC。2カ所はそんなに離れていません。しかしここの調査をすると、おおたかの森にあるSCは革靴ユーザーが圧倒的に多く柏の葉にあるSCはスニーカーが多かった。どういう事かというと、おおたかの森は40代50代の富裕層とその家族が多く、柏の葉はニューファミリーが多かったんです。

これらは項目の一部に過ぎませんが、こういう分析の手法は大手のコンサル以上に「実践的」ですよ。データの分析じゃないんですよ。例えば、スイカの中身ってプロは叩いて甘いかどうか見分けますよね。私たちが目指しているのはそれです。

(後編につづく)

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