研究会ブログ

2015年01月23日 Fri. Jan. 23. 2015

文化経済2015.1月講演レポート①/長谷川祐子氏

第75回文化経済研究会の様子をお届けします。

第1部は東京都現代美術館チーフキュレーターの長谷川祐子氏。

 

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「イメージしてください、という言葉を私はよく使います。イメージするとは、自分の中の像を拡大して他者と共有するという作業です。キュレーターというのは視覚的な素材をマッピングします」

 

他者と感覚を共有するための糸口を与えるのがキュレーターのお仕事の一つであると思いました。哲学的な考え方をすれば、他者と自分が同じ物を見ていても、同じ感覚を味わっているかどうかは確認のしようがありません。しかし、他者と像を共有しようとイメージすることはその努力であるとも言えます。ではそのイメージによって人は何を獲得するのでしょうか。

 

「私にとって第一のプライオリティ、それは多様性や偶然性との出会いです。作品に出会う人は全員が違う体験をする、また、同じ建物でありながら何度も違う体験をすることができる。アートと出会う主体、即ち鑑賞者が作品を作るんです」

 

言い換えれば、現代芸術とはある意味では常に未完なのだと思います。正しい解釈、あるいは作者の意図が明らかであれば、ある意味ではそこに鑑賞者が意味を付け加えることは蛇足です。しかし、解釈の多様性を第一義とするなら、作品は鑑賞する人によって何者にもなり、常に未完であると言える。これが長谷川祐子氏が美術館をキュレーションする魅力にも繫がっています。

 

「90年代には日本に300もの美術館が日本にはありましたが、どこも来場者が減っていると言われていました」

 

しかし、長谷川祐子氏が作る空間は「来てもらわないと分からない」。

かつて、芸術は「今ここ性」というようなものを持っていたと思います。美術や壁画はその建物に行かなければ観ることができない。音楽も演奏を聴きに行かなければ味わうことはできない。

しかし、美術は印刷技術によって、音楽も録音技術によって徐々にその性質を失っていく。

現代芸術というのは、芸術が本来持っていた「今ここ性」を保持している。そこに現代芸術の芸術性があるのだと思います。

長谷川祐子氏は金沢21世紀美術館の芸術監督を務められましたが、来るたびに違う体験ができる金沢21世紀美術館は、今では兼六園と並ぶ金沢の観光名所にまでなりました。

 

「20世紀は3つの「M」によって象徴されていた時代だと解釈しています。すなわちMan、Money、Materialism。人間中心主義と、拝金主義と、物質主義ですね」

「それを超克するための3つの「C」を私は考えています。Collective Intelligence、Co-existence、Consciousnessです。集合する知性・知識、共存、意識。」

「作品がある場所は、見てもらうだけではなく、考えてもらうための場です。新しい考えを提案する」

 

3つの「M」、人間、お金、物質は言い換えればどれも一つだけの尺度しか許していませんが、3つの「C」、集合知、共存、意識は多様な尺度が入り混じることができる。保守だのリベラルだのなんだかカリカリしている今こそ皆で現代美術を鑑賞したいものです。


皆様もぜひ東京都現代美術館に是非足をお運びください。新たな思考の次元が開かれるはずです。

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