研究会ブログ

2014年09月26日 Fri. Sep. 26. 2014

文化経済2014.9月講演レポート①/尾原蓉子氏

第73回文化経済研究会のセミナーレポートをお届けします。

講師は、一般社団法人ウィメンズ・エンパワメント・イン・ファッション会長

尾原蓉子 氏。

並びにライフネット生命保険株式会社 代表取締役会長兼CEO出口治明 氏。

 

テーマは「社会課題を内包するミッションマネジメント」。尾原氏は女性の社会進出、出口氏は保険業界の透明性という大きな課題に取り組まれてきました。

 

まず第一部は尾原氏。

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高校時代に当時まだ珍しかった交換留学生として渡米。旭化成テキスタイル取締役、IFIビジネス・スクール学長、良品計画社外取締役を経、ファッション産業における人材支援開発がライフワークに。今年、女性のキャリア開発を支援する「ウィメンズ・エンパワメント・イン・ファッション」を立ち上げられました。

 

「今日は2つの視点からお話しようと思います。1つは女性活用。もう1つはファッション・ビジネス。

まずは女性活用についてですが、私が高校生だったころは男子と女子は綺麗に分かれていて、男子が物理を勉強している時間に我々女子は家庭科を勉強しなければなりませんでした。しかし私には、どうしても仕事をして自立をしたいという思いがあったんです」

 

「そうすると、女性の仕事と言えば医者か弁護士ぐらいしかありませんでした。私はどちらかになってやろうと思っていたのですが、たまたま留学生として渡米した時……1950年代だったのでアメリカが絶頂期だったということもあったのですが……老若男女が皆すべてとても輝いて見えたんです」

 

現在でも日本は先進国としては女性の社会活用が非常に遅れている国ですが、尾原氏が働き始めた頃はその今よりも数段働く女性への風当たりは厳しかったことと思います。逆境を生き抜いてこられた尾原氏の話しぶりからは鍛えられてきた信念を感じることができます。

 

「アメリカは女性であってもどんな職業にも就けた国だったんです。それが素晴らしいと思ったので私は日本でも同じことを実現させたくて、ようやく今年になりウーマンズエンパワメントインファッション(以下WEF)を立ち上げました。

ファッション業界は女性が活躍していると思われがちですが、管理職や役員クラスになると結局は男性社会なんです」

 

「政府は女性の管理職の割合を2030年までに30パーセントにするという数値目標を掲げていますが、私は女性の管理職ではなくリーダーを増やしたい。女性マネージャーではなくて女性リーダーですね。組織を回す為に使われるのではなく、自分で意志決定ができるポジションの女性を増やしたい」

 

これは単に女性だけの問題ではなく、老若男女全員が自分にあった働き方のできる社会を実現させるということに繋がります。

時短労働など多様な働き方が認められれば、長時間労働のできる人以外でも働ける社会が実現できれば、労働人口も増えることになり、山積している多くの問題の解決が期待されます。

 

次に、アメリカの最先端のファッション・ビジネスの模様を報告していただけました。

 

「アマゾンは全米の小売業にとって脅威です。アマゾンにいかに対抗するかというカンファレンスが開かれたのですが、それは廊下にまで人が溢れかえるほどの盛況でした」

「そしてそのアマゾンですが、まずは通信や電波の規制などの少ないインドから小型の自動運転飛行機での即日配達を実験的に開始する予定です」

顧客の店内行動を全て把握できるビーコン、ショッピングセンターなどで体をスキャンすれば、自分にあった服がどのフロアにあるのかをお勧めしてくれるSCAN FIT SHOW、3D印刷でできるファッションデザインなど、ICTと融合したファッションが紹介されます。

 

「グーグル創設メンバーであるジャック・ドーシーの言葉で『テクノロジーは電気のようにインビジブル(見えないもの)であるべき』という言葉があります。電気のように停電になって初めてそのありがたみが分かるほど、すべての技術が身近なものになるでしょう」

 

「また、彼の座右の銘で『未来はすでにここにある。全ての人に均等に配分されていないだけだ』というSF作家ウィリアム・ギブスンの言葉があります。テクノロジーのヒントはすでに与えられています。それに気づいて、アクションを起こせる人にだけ成功がもたらされるということですね」

 

常に希望と目標を持って果敢に挑戦される尾原氏の夢、女性の更なる社会活用が実現すれば恩恵を蒙るのは女性だけではありません。それによってもたらされる多様性によって、ようやく日本は本当の意味での先進国に近づけるのではないでしょうか。

 

第二部・出口治明氏のレポートは来週水曜日アップ予定です。

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