研究会ブログ

2015年04月 3日 Fri. Apr. 03. 2015

堀木エリ子氏著『生きる力』

 

文化経済研究会5月度講師、堀木エリ子氏のご著書『生きる力』のご紹介をいたします。
堀木氏は和紙デザイナーとして活躍しておられ、ザ・ペニンシュラ東京スパや成田国際空港第一ターミナル、東京ミッドタウンなどの建築に和紙でデザインを施されています。
本書はその堀木氏が和紙デザイナーになろうとする道程から描かれているのですが、題名にある『生きる力』とは本書の中に出てくる言葉で言えば「腹の底からのパッション」です。
高校を出て銀行員として働いていた堀木氏が、たまたま転職したのが和紙の製作をする会社。そこである時付いていった和紙工房で堀木氏はこの「腹の底からのパッション」を体験します。
「驚いたのは指先を入れただけでも痛くなる氷のように冷たい水の中に、肘までつけて働いている職人さんたちの姿だ。腕はすっかり紫色に変色し、外気と体温との差で体から湯気が上がっている」
幾世代にも渡って続けられている行事はいつからか神性のようなものを帯びていく。堀木氏を打ったのは1500年という人が体験できないような単位に渡って生き延びてきた技術に宿った何か超常的なものだったのかもしれません。
しかし、手漉き和紙は絶滅寸前。
品質の良い手漉き和紙を世の中に送り出したところで、すぐに安価な類似品が出回って駆逐されてしまう。
そこで堀木氏が考え、実行された工程は以下の2点。
まずは世の中に手漉き和紙の良さを分かってもらうこと
世間の人々が手漉き和紙の違いと、機械漉きの和紙の違いが分かっていないのでは手にとって貰うことはできない。
では手漉き和紙が紙の和紙に対して優れているところとは何でしょうか。それは時間を経るごとに劣化していく機械漉きの和紙と逆に、時間を経るごとにむしろ色が白くなっていく。使えば使うほど味が出て行くということです。
第2に、手漉き和紙のメリットを活かせる利用を考える。
時間を経るほどに味の出てくる手漉き和紙は、使い捨ての袋や包み紙にしてもあまり意味が無い。では建築に活かせばどうか。
こう考えたので、建築空間における和紙造形の創造という今に至るまでの堀木氏のメインプログラムが生まれました。
この両輪を回していくのに必要だったのが冒頭に引用した体験から堀木氏が得た「腹の底からのパッション」だと思います。
本書では和紙の技術的なお話の折々に、仕事を実現させるための困難、挫折とそれを乗り越えるための想いと情熱の描写があります。
和紙の世界に飛び込んだ堀木氏でしたが、そもそも和紙に携わる家系に生まれたわけでもなければ、大学でアートやデザインを勉強したわけでもなく、ビジネスのやり方さえ知りませんでした。
当然そんな堀木氏には様々な困難や挫折、失敗が降りかかりますが、座右の銘である「夢は語らないと実現しない」に沿って、訝しがる人や協賛してくれない人もその思いをぶつけて共に同じ目標へのサポーターとしてしまいます。和紙を作っているのは道具や技術ではなく、1500年前からの伝統が呼び起こした情念なのだということがわかります。
その堀木氏から、5月の文化経済研究会では創造の情熱を直接語っていただきます。是非ご来場ください。

文化経済研究会5月度講師、堀木エリ子氏のご著書『生きる力』のご紹介をいたします。


堀木氏は和紙デザイナーとして活躍しておられ、ザ・ペニンシュラ東京スパや成田国際空港第一ターミナル、東京ミッドタウンなどの建築に和紙でデザインを施されています。

本書はその堀木氏が和紙デザイナーになろうとする道程から描かれているのですが、題名にある『生きる力』とは本書の中に出てくる言葉で言えば「腹の底からのパッション」です。


高校を出て銀行員として働いていた堀木氏が、たまたま転職したのが和紙の製作をする会社。そこである時付いていった和紙工房で堀木氏はこの「腹の底からのパッション」を体験します。


「驚いたのは指先を入れただけでも痛くなる氷のように冷たい水の中に、肘までつけて働いている職人さんたちの姿だ。腕はすっかり紫色に変色し、外気と体温との差で体から湯気が上がっている」


幾世代にも渡って続けられている行事はいつからか神性のようなものを帯びていく。堀木氏を打ったのは1500年という人が体験できないような単位に渡って生き延びてきた技術に宿った何か超常的なものだったのかもしれません。


しかし、手漉き和紙は絶滅寸前。

品質の良い手漉き和紙を世の中に送り出したところで、すぐに安価な類似品が出回って駆逐されてしまう。

そこで堀木氏が考え、実行された工程は以下の2点。


まずは世の中に手漉き和紙の良さを分かってもらうこと

世間の人々が手漉き和紙の違いと、機械漉きの和紙の違いが分かっていないのでは手にとって貰うことはできない。

では手漉き和紙が紙の和紙に対して優れているところとは何でしょうか。それは時間を経るごとに劣化していく機械漉きの和紙と逆に、時間を経るごとにむしろ色が白くなっていく。使えば使うほど味が出て行くということです。


第2に、手漉き和紙のメリットを活かせる利用を考える。

時間を経るほどに味の出てくる手漉き和紙は、使い捨ての袋や包み紙にしてもあまり意味が無い。では建築に活かせばどうか。

こう考えたので、建築空間における和紙造形の創造という今に至るまでの堀木氏のメインプログラムが生まれました。


この両輪を回していくのに必要だったのが冒頭に引用した体験から堀木氏が得た「腹の底からのパッション」だと思います。

本書では和紙の技術的なお話の折々に、仕事を実現させるための困難、挫折とそれを乗り越えるための想いと情熱の描写があります。


和紙の世界に飛び込んだ堀木氏でしたが、そもそも和紙に携わる家系に生まれたわけでもなければ、大学でアートやデザインを勉強したわけでもなく、ビジネスのやり方さえ知りませんでした。

当然そんな堀木氏には様々な困難や挫折、失敗が降りかかりますが、座右の銘である「夢は語らないと実現しない」に沿って、訝しがる人や協賛してくれない人もその思いをぶつけて共に同じ目標へのサポーターとしてしまいます。和紙を作っているのは道具や技術ではなく、1500年前からの伝統が呼び起こした情念なのだということがわかります。


その堀木氏から、5月の文化経済研究会では創造の情熱を直接語っていただきます。是非ご来場ください。

 

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