研究会ブログ

2015年11月13日 Fri. Nov. 13. 2015

「川島蓉子と社長の未来のおしゃべり会」

去る10月29日、ifs未来研究所主宰、「川島蓉子と社長の未来のおしゃべり会 ービジネスには、カッコいい感性が必要だ」に参加してきました。

ゲストは糸井重里氏で、糸井氏との対話形式でセミナーは進められました。

 

冒頭では糸井氏の生活スタイルが話題になり、それによると最近は睡眠時間がどんどん後ろ倒しになっているのが悩みだそう。

 

糸井重里氏と言えば、西武百貨店の「おいしい生活」やジブリの名コピーを生み出したコピーライター。またデイリーPV数100万を超える「ほぼ日刊イトイ新聞」の創設者として知られています。

当然会場には(私も含めて)その成功の秘訣を聞きたいと思う聴講者が詰め掛けていましたが、糸井氏が放ったのは人々の期待をある意味では突っぱねる言葉でした。

 

話が経営の方向に進んでいき、30億円の売上を誇る企業をゼロから創りあげるにはどうすればいいのか、核心にさしかかろうとした時に糸井氏は

 

「僕と同じようにやっても僕のようにはならないよ」

 

とおっしゃいました。

多くのマーケッターは成功した商品や企業、ビジネスモデルの事例を世界中から集め、その成功の秘訣を分析して普遍化し、別のビジネスに応用しようと試みます。

しかし、成功事例をいくら集めてみたところで、過去の状況が全く同じように目の前に再現されていなければ同じような手法を試みたところでそれは成功しません。

 

完全に同じ状況を作り出して行われる科学の実験でもない限り、過去の成功の再現は期待できない。

これまでに数多のマーケッターが糸井氏のコピーや手法を解明し、普遍化しようと試みてきました。そして実際に糸井氏を引き合いに出した「なんとなくそれっぽい」マーケティング手法は書店やインターネットでいくらでも見つけることができます。

糸井氏はそれらの動きに辟易していたのかもしれません。

 

「よく『糸井さんがコピー書いてくれたらうちの商品もきっと売れるんでしょうね』と言われますが、そういうときには『ええ、そりゃあもう魔法のように売れます』と、言外に否定しています(笑)」

 

と世間の認識に対し少し棘を刺されていました。

糸井氏は例えどんな粗雑な商品であっても大量に消費させてしまうような魔法を知っているわけではなく、その都度その都度どうすればいいかを必死に考えていたということ。

糸井氏のやり方を真似しても糸井氏のようになれないのは当然で、そんなメソッドがあれば知りたいと他ならぬご自身が思っていらっしゃるのではないでしょうか。

その証拠として、

 

「デザインとは何ですか?」

 

と問われた際に糸井氏は「生活のインフラを作る行為」であるという答えを返すのですが、返すまでに本人も

 

「え?なんだろう(笑)」

 

と困惑されつつも、

 

「やっぱり基盤のような……生活のインフラ?あ、ほら段々できてきた(笑)」

 

とあれこれ言葉を探っておられました。


とは言え、ただ闇雲に言葉遊びをしているわけではなく、糸井氏がお話の最中に「あれはそもそも○○世紀の○○王朝が……」というように、歴史からの引用を度々なさっていたことにその機知の一旦のようなものがあるのではないかと推測します。

歴史や文化などに接すること、それらを吸収することが好きな人であればこそ、ご自身の中にパターンの引き出しのようなものが無意識のうちに蓄積している。

人間やその営みに対する興味が、糸井氏を形作っているのではないでしょうか。

糸井氏を真似るには、結局その人間に対する興味やモチベーションを真似なければならず、おそらくそんなことをしても意味は無い……というより、それができれば自分なりの方法が分かってくるので真似る必要が無くなる。

 

技術的なイノベーションを起こすのは理系の方々ですが、それらがますます興隆を極めているからこそ、人間そのものに対する問いを続けなければいけないのかなと感じました。

それこそが最も普遍的なマーケティングの解なのかもしれません。

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