研究会ブログ

2016年04月 1日 Fri. Apr. 01. 2016

岩佐十良氏のご著書『里山を創生する「デザイン的思考」』

5月19日文化経済研究会でお話いただく株式会社自遊人代表取締役 岩佐十良氏のご著書『里山を創生する「デザイン的思考」』をご紹介します。

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2012年5月、魚沼にある大沢山温泉が廃業すると知らせを受け、その築150年の古民家を買い取ったところから、体験する宿「里山十帖」はスタートします。

十帖とは「10の物語」の意味で、たくさんの物語を詰め込んだリアルな雑誌、それが里山十帖という旅館です。

新潟県南魚沼市、大沢山温泉は、新潟県内でも知る人のほとんど居ないマイナーな温泉地だったそう。

ところが、今や里山十帖は閑散期ですら予約が困難な人気宿泊施設です。その秘訣はどのようなところにあるのでしょうか。

 

■データ上はほぼ失敗が確定していた

ビッグデータの分析はマーケティングの常套手段ですが、データを参照すれば魚沼市を観光地としてPRするというのはほぼ「狂気の沙汰」と言っても過言ではないほど絶望的な状況でした。

しかも大きな古民家のリノベーション、配管工事、暖房設備などを含めた総工費は3億5000万円を超え、これを回収するには1泊3万円以上で年間客室稼働率は60%超をクリアする必要がありました。

スキーエリアとしては知られているものの、夏の観光はきわめて弱い。平均客単価も下がり続けているので、里山十帖のような高価格帯の宿の成功はありえなかったのです。

銀行担当者をなんとか説得して一度は資金の調達に成功したものの、担当者が変わったとたんに、「新潟のどんなデータを当てはめても実現は不可能」と資金を引き上げられてしまう事態に。

実際、稼働率60%という数字は、年間50日ある土曜日、春と秋の連休、夏休み、年末年始の合計100日間を満館にし、残りの閑散期も50%以上の稼働率を達成しなければたどり着けない数字。データを参照すれば、銀行が資金を引き上げたのも当然といえます。

 

■口コミと共感により奇跡が起きる

オープン当初の平日稼働率は30%。焦りと絶望感が募っていきますが、やがて予約が増えていき、オープンから3ヶ月に成る8月、客室稼働率は92%を記録します。

しかし、特別にプロモーションを掛けたわけではありません。

その秘訣は「口コミ」と「共感」にありました。当初から岩佐氏には、里山十帖を雑誌以上に強力な「共感メディア」にしたいと思いがあり、単なる宿泊施設ではなく、リアルな体験を媒介として「里山」のストーリーを伝えました。

例えば、人気料理の「大根餅のミルフィーユ仕立て」は、雪室で寝かせた大根をたっぷりのだしで煮込み、米粉と大根おろしをあわせて焼き上げた大根餅ではさんだ料理。

「こんな料理を待っていました」

「豪華食材ばかりだと太るので、そういう料理の旅館にはもう飽き飽きしていました」

など大きな反響がありました。

 

■人格憑依マーケティング

雑誌「自遊人」を発行する岩佐氏は、里山十帖に対して「編集する」という概念で望みます。

里山十帖は、「メディアであり、ショールームであり、ショップ」でもあるのです。

旅館に置いてあるベッド、椅子、ソファは全て「おすすめできるもの」で、「座り心地抜群の椅子特集」、「快眠を誘うベッド特集」など雑誌の特集を作るのと同じ感覚で旅館作りに臨み、里山十帖はまさに「体験するメディア」としての旅館なのです。

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また、岩佐氏独特の手法として「人格を憑依」させると称し、様々な顧客を想定し実際に彼らになりきって考えるという方法を採られています。

従来のデータを重視する「考える」マーケティング、ではなく「感じる」ということを重視する手法こそが、データ上では勝算はゼロだろうと目されていた里山十帖を成功に導いた秘訣だと思われます。

「相手になりきる」。

マーケティング論では当たり前のようなこの考え方ですが、「自分に置き換えて考える」と「相手になりきる」では大きな隔たりがあります。

 

5月の文化経済研究会では、この独特のマーケティングメソッドについてもより詳しくお話いただけることと思いますので、ご期待の上ご参加ください!

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