研究会ブログ

2015年08月28日 Fri. Aug. 28. 2015

「富山市ガラス美術館」と「負ける建築」

「富山市ガラス美術館」が8月22日開館します。(富山市ガラス美術館が開館 建築デザインは隈研吾(Fashionsnap.com))

 

隈研吾氏には第19回文化経済研究会にてお話をいただきました。

同氏の代名詞といってもよい「負ける建築」というコンセプトは、周囲の情景に良く馴染み、共存していくような受動的な建築。

 

しかし、リンク先の外観を見ていただければこれは「負ける建築」というよりもむしろ「勝って」いるのではないかという印象を強く受けました。

 

自然素材を生かした建築に代表されるように、植物がそこに生えているかのような自然さでその場にあることが同氏の特徴だったはずですが、石、ガラス、アルミで構築された富山市ガラス美術館はその意図はあまり感じられません。

ということは、隈氏はそもそもこの建築で負けようとしていないのだと思われます。

 

富山が「ガラスの街とやま」をコンセプトに掲げ始めたのは30年前で、そこまで古いわけではなくガラスというのは富山が新たに築いてきた文化です。

一方「負ける建築」というのは、先進国の競争や資本主義経済と物量主義による人々の疲弊に対する建築側からの答え。

文明社会と自然との対立的な構造の中でこそ、「負ける建築」は必要とされますが、「文明社会と自然」の関係というのは「富山とガラス」の関係と相似ではありません。

前者においては「文明」が勝ち、「自然」が負けという図式があった。だから建築があえて「負ける」必要があった。

しかし後者の間には勝ち負けは無く、むしろ「ガラス」を他の都市との「差異」としてアピールする。

 

争いがそもそもない。だからわざわざ「負ける」必要もない。

 これが富山ガラス美術館が一見「勝って」いるように見える理由ではないでしょうか。


21世紀において人類がたどり着いた境地というのは、栄華を極めたもののどこか空しさを覚えた老人のような境地であり、そこに生まれたのが「負ける建築」でしたが、

富山の試みにあるのは、老成した境地というよりは芸大の学生のようにエキセントリックさがあります。

そこからは「勝ったとか負けたとかどっちでもいいから面白いことやろうぜ」と言っているような溌剌さを感じました。

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