研究会ブログ

2015年03月19日 Thu. Mar. 19. 2015

文化経済2015.3月講演レポート①/宮下 盛氏

第76回文化経済研究会セミナー(2015.3.19開催)の速報をお届けします。

第1部は近畿大学水産研究所 所長 宮下盛氏。

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宮下氏は2002年にクロマグロの完全養殖に成功。

稚魚から育った魚が更に稚魚を生むというサイクルを、謎の多いクロマグロという魚種において完成させることは養殖産業において衝撃的な事件でした。

近畿大学が広報に力を入れ、以前の記事でもご紹介したように、その偉業は大きくアピールされ、近畿大学は志願者数ナンバーワンの大学へと躍り出ます。

 

「『なぜ関西のローカル大学「近大」が志願者数日本一になったのか』という著書も出ていますが、そもそも我々関西の人間にとって近畿大学は別にローカルではありません(笑)。」

「これは結局は広報や経営陣の方々の努力の成果ですが、もしも我々水産研究所がそれに貢献できていたとしたら、それは近畿大学にそもそも根付いていた「実学の精神」に負うところが大きいです。」

 

「水産研究所ができたのは大学ができる1年前。昭和23年、世耕弘一初代近畿大学総長は、日本の復興の基盤は食料と考え、「海を耕せ!」と号令を発したわけです。自分たちで魚を育ててそれを売り、それで研究費も賄うと。

そもそもお金が本当に無かったので本当にそうするしかなかったんですよ(笑)。」

 

近畿大学が養殖に成功しているのはもちろんクロマグロだけではなく、マダイ、ブリなど多岐にわたりますが、完全養殖の稚魚を開発して各所に配ることで研究費を得ていきます。

 

それでも手を焼いたのがマグロの育成でした。マグロは方向転換が苦手な割には速いスピードで泳ぐ魚。マグロは生簀では飼えないというのは漁業の常識でした。

生簀に放ったマグロは障害物にぶつかって死んでしまい、なかなか育ってくれません。また、皮膚は非常にデリケートで人が触っただけで深刻なダメージになってしまいます。

 

稚魚にしても、水面や水底にぶつかっただけで死んでしまう浮上死・沈降死を防がなければなりません。とにかく一つの課題をつぶせば次の課題がもぐら叩きのように出てくるマグロの完全養殖ですが、ようやくそれに成功したのが2002年。

この経過のお話は一つの冒険物語を聞いているようで、マグロにまつわる悲喜こもごものストーリーが目に浮かぶようでした。

 

「養殖業を取り巻く今後の課題は何ですか?」という会場からの質問に対し、

宮下氏は、「餌」の問題を挙げられました。

中国におさえられる形で世界的に魚の餌である魚粉(アンチョビ)が世界的に高騰しているそうです。

 

「魚粉以外に何か安価な餌を開発しないといけません」 と宮下氏。

せっかくマグロの完全養殖に成功したにもかかわらず、

今度は餌が足りない可能性が出てくるとは本当に皮肉です。

 

しかし、「課題解決」というビジネスシーンのキーワードを生身で実践されているのが正に宮下氏。

一つの課題に対して思いつく限りの手法とアイデアをぶつけてきたその姿勢に勇気を貰った経営者も多かったことと思います。

 

なお、そんな試行錯誤の結晶である近大マグロですが、

銀座にある近畿大学水産研究所銀座店に行けば味わうことができます。

是非ご賞味ください。


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