研究会ブログ

2015年07月17日 Fri. Jul. 17. 2015

文化経済2015.7月講演レポート①/石井幹子氏

第78回文化経済研究会セミナー(2015.7.16開催)の様子をお届けいたします。

第1部は照明デザイナーの石井幹子氏。

 

石井氏は国内では東京タワー、東京駅、姫路城のライトアップが代表作で国外でも世界的に活躍されている照明デザイナーのパイオニア的存在です。

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 石井氏が進路を選ばれるときは戦後の復興期も少し過ぎた頃、女性であってもなりたいものになれるように徐々に時代が変わり始めていた時期です。

そこで高校時代に近代美術館でバウハウス展に衝撃を受けた石井氏はプロダクトデザイナーになるべく東京藝術大学の門を叩きます。

更にフィンランドの会社に手紙を出し、その熱意が通じたのかアシスタントとして雇ってもらうことに。1年間照明器具のデザインに携わり、その後は右肩上がりだったドイツで建築の照明に携わります。

 

しかし、ヨーロッパでの修行を経て帰国してからがむしろ大変で、ご本人は

「あれをもう一度やれと言われたらもう無理かもしれません」

と振り返っていたように、

まず「照明デザイン」というものの概念が伝わらない。何故それが必要なのか、何故それにお金を払うのかを説明しなければならない。

ダメだったらドイツに帰ろうとすら思っていた時に大阪万博でお仕事を受注し、ようやく軌道に乗り始めるかと思ったのもつかの間、

オイルショックにより“照明=電気の無駄”という空気が瞬く間に日本中を覆い、仕事は激減。やっともらえた仕事は品川のパシフィックホテルにあるシャンデリアの電球をいくつまで間引いてもシャンデリアとして成立するかデザインしてくれという哀しい依頼。

 

とは言え、地球はうまく回るもので日本を脅かしたオイルショックは中東でオイルマネーとなり中東を中心として仕事を請けるように。

やがて横浜ライトアップフェスティバルというイベントをきっかけに照明デザインの価値が見直され、徐々に日本国内でも仕事が軌道に乗り始めたそうです。

 

そもそもライトアップという概念は、1920年にフランスの電力会社が電気をもっと文化的な方向に使って欲しいという活動を始め、世界に定着していったそうです。

ライトアップは基本的に全て無料。それは建築やランドマークと一体化して都市のアイディンティティーを形成します。

 

石井氏が手がけられた代表作の一つである東京タワーも、当初はパリのエッフェル塔と同じく嫌われ者だったそうですが、石井氏のライトアップによって「東京タワー現象」と呼ぶべきプチムーヴメントが起こり、

例えばマンションの広告などでは、実際には東京タワーが見えない部屋であってもあたかもそれが窓から見えるかのようなチラシが制作されたほど東京タワーは誇るべきランドマークとしての地位を得たのでした。

 

街全体の照明をデザインしたもので象徴的なのは函館市。

函館市の100万ドルの夜景と言えば神戸・長崎以上に抜きん出ていますが、高所から見下ろせば一望できてしまうためにもっと街中を周遊させることはできないかという依頼でシンボリックな建物をいくつも照らしていくデザインを手がけられました。

 

ライトアップを楽しもうと思えばどうしても宿泊する必要があり、夕食、宿泊、朝食までを考えれば経済効果は約11倍。今やどの都市もなんとか我が市に宿泊を、と熱望し、その強力な装置としてのライトアップが求められています。

 

更にライトアップが強力な効果を発揮するのが日本以外の街で行われたときの興味喚起です。

フランスのパリではセーヌ川にかかるいくつもの橋に日本の絵画や遺産を投影されました。

それは入場料無料のアトラクションであり、ある程度すでに日本に興味のある人々が入場料を払って入る美術展・歌舞伎や相撲などの興行以上に間口を広く日本を訴えかけます。

 

工業や経済ではなく、都市の個性をより際立たせるのがライトアップの力。ハードとソフトの中間にあるそのコンセプトはいわば足し算ではなく掛け算的に対象の魅力を増加させます。加えて、ネットの時代であっても実際に訪れてそれを体験してみたいと思う訪れるべき理由を喚起します。グーグルストリートで世界中の裏路地が覗ける時代だからこそ、ライトアップのような創造力が必要とされているのかなと感じました。

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