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2018年07月 2日 Mon. Jul. 02. 2018

文化経済2018.6月 講演レポート②/齋藤 精一氏

 

 

 

 

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6月7日、カヤックの柳澤氏に続いて登壇されたライゾマティクスの齋藤精一氏。

ライゾマティクスはリサーチ、デザイン、アーキテクチャーを軸に、インタラクティブな広告や先鋭的なアート作品で注目されるクリエイター集団であり、アートと建築、広告、街づくりなど、分野を横断しながら誰もが考え付かなかった斬新なコンテンツを世界に提示し続けています。

豊富な人生経験を織り交ぜながら、新たな建築概念と都市の在り方を提唱すべく活動する氏の最先端のクリエイティビティを学びました。

 

◾️キリギリスの時代に必要な「非分野主義」

今回の登壇で昨今の時代性を表した言葉に「アリとキリギリス」という言葉がありました。

20世紀はアリの時代、21世紀をキリギリスの時代と表現しており、前者は今まで培ってきた技術や知識をそのまま使える時代、後者はそれらを刷新しなければならない時代を表しています。

氏は自らを「キリギリスに囲まれて育ったアリ」と語り、ライゾマティクスを立ち上げてからはキリギリスのような”超社会不適合者”が集まったと笑いながら話します。

 

今の時代のクリエイティブとは一つの分野に突出するのではなく「分野を横断してつくる非分野主義が重要」と語る氏。

産業構造の複雑化により、一つの事業にも都市開発や規制や運営、ビットコインなど多くの分野が関連してきます。それに対応できるように、ライゾマティクスは一つの領域ではなく、スタッフがやりたいと考える領域を全て挑戦させ、キリギリス的な発想をできる限りリスペクトするように心がけて来ました。

時には社員が無断で高額な機材を購入し、カードの保証会社から連絡が来たこともあったそうですが、それだけ社員の「ものをつくりたい」という意識が高いようです。

 

◾️アートとコマーシャルの役割

ライゾマティクスはお金にならない投資案件である「アート」と広告や開発など、クライアントから報酬をもらう「コマーシャル」の2つの軸で事業を行っています。

アートはクライアントの要求によっては制約が多く、自分たちの表現を出せないため、「これを作ったら面白そう」というアイデアをすぐに自社保有のアトリエで制作しマネタイズします。

一方でコマーシャル事業では、単に案件を受発注するだけでなく、時にはクライアントの中に入り、部署間の意見の相違をまとめたり、商品開発のアドバイスも行なったりと一歩踏み込んだ対応を行なっています。

そしてユニークなプロモーションを行うために、行政や自治体に規制緩和を求めたり、新しいブランドづくりを提案するなど、様々な実証実験を行なって来ました。

 

しかし最近はアートとコマーシャルの境界線がなくなって来ていると感じているようです。

2014年に企業広告の案件で、鈴鹿サーキットでベストタイムを出した故アイルトン・セナのドライビングを光と音で再現するプロモーションを行いました。

このプロモーションはカンヌライオンズ2014で最高賞を受賞し、広告として大きく評価されたのですが、現場で見守っていた制作スタッフたちがその美しいプロモーションを見て、涙を流したそうです。

その時に「広告表現としていいものをつくるのは当たり前。

重要なのは一緒に作っている人のモチベーションをどう上げるか」ということにも気づかされたそうです。

 

◾️「ものをつくる」人間として

氏はプロダクション集団と呼ばれることが大嫌いだと語ります。

創業時代からプロダクションにとどまらず、プランニング、ディレクション、プロデュース、クリエイティブディレクション、エージェンシーを段階的に目指していました。

そのために大企業から案件を受注するだけでなく、ベンチャー企業と共同して新しい開発や事業を投資案件として進めているそうです。

 

縦割り構造の日本では「建築家は単なる図面を起こすだけの人」という認識が多くあると氏は言います。
様々な企業や人と接することで多くの情報ソースを得ることができます。

ものをつくる人間はそのソースを生かして、世の中の文化や事象、興味関心や人の営みを俯瞰して、類似しがちな業界をどう変えていくか、というアクションを起こしていかなければならない。

単なるバックキャストではなく、どうしたら世界をよくしていけるか、未来の絵を提示し、それを現実にするために、果敢に「ものづくり」を行なっているそうです。

 

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着飾らない氏の話に多くの方が聞き入っていましたが、最後に「テクノロジーは魔法ではない」という言葉が印象的でした。

テクノロジーはあくまで道具であり、テクノロジーを使えば人が集まる、お金が儲かることには繋がりません。

技術発展の速度は加速度的に上がりますが、テクノロジーをどうを使うか、そしてそれによって世の中がどう変わるのか、という意味をしっかりと考える必要があると締めくくっていました。

 

 

 

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