研究会ブログ

2016年06月10日 Fri. Jun. 10. 2016

開かれたコミュニティを回遊する 佐々木俊尚氏特別講演

行政・民間・NPOが協力し、UIJターンを促進する「宮崎移住計画」。

6月8日に日本橋で行われた講演では、7月の文化経済研究会で講師としてご登壇いただく佐々木俊尚氏が特別ゲストとしてお話されていました。

 

■3つの拠点で暮らす佐々木氏

一口で地方で暮らすといっても、もともと住んでいた地元に戻るUターンか、都会生まれの人が始めての地方で暮らし始めるIターンかでその意味は全く違ってきます。地方で生まれ都会で働く人が、生まれ故郷とは別の地方に移住するJターンなど、移住には様々なバリエーションがあります。

佐々木氏が特に推奨するのは「マルチハビテーション」という複数の地方に自分の拠点を持つ暮らし方です。

佐々木氏は東京、福井、軽井沢のそれぞれの土地に生活拠点があります。ジャーナリストと言う職業柄、パソコンさえあれば仕事ができてしまうのでどこに行ってもしていることは変わらないそうですが、変化も幾つかあったといいます。

まずは、3つの拠点を移動するためにシンプルな暮らしになったということ。家電類は冷蔵庫や洗濯機などが全ての場所に必要になったために増えたものの、移動をなるべく簡単に済ませたいと心がけるうちに「これは要らない、あれも要らない」と荷物が減っていき、今では取材で海外に行くときですら小さなリュックに収まる程度の手荷物で済ませてしまうほどになったそうです。

加えて、拠点ごとに人間関係が築かれることでネットワークが連鎖していく効果もありました。

 

■全国のシャッター街に変化

今、日本のあちこちにあるシャッター街に小さな変化が起きつつあります。

シャッター街はそもそも自分の土地を寝かせている状態であり、それができるのは退職金が今に比べて高額で、年金においても生活が保証され経済的に余裕があった高齢者世代だったからこそでしたが、世代交代したシャッター街ジュニアの世代には土地を寝かせておく余裕がありません。

そのため、彼らはどんどん誰かに対して土地を貸すようになりますが、その時に借り手として現れるのが移住者です。

全国各地で徐々にではありますがシャッター街に新しいお店が立ち上がり、新オーナーと移住者の間で新たなネットワークが出来つつあるそうです。

今のところ目だって移住者が多いのは徳島県神山町、島根県海土町、新潟県十日町、岩手県遠野市など。

これらの地域には既に移住者に対する受け皿があるためにどうしても移住活性地域というのはこのようなピンポイントに偏りがちだそうですが、これも徐々に増えていき点が面になっていくものと思われます。

 

■地方コミュニティの変化

移住のイメージが全く変わった説明として、「移住≠自給自足」ということでした。

移住と言えば地方で畑と田んぼを耕しながら、自分で食べるものは自分で賄う、というイメージが強かったのですが、逆に地域のネットワークに上手く入り込めさえすればほとんどお金が要らない生活を送ることも可能なのだそう。

佐々木氏のある友人は、食べ物は新鮮なものを人から分けてもらい、自分はちょっとした労働力(壊れたものを直してあげる、車で送ってあげるなど)を提供することで地域のネットワークの一部となり、自給自足とは全く正反対の暮らしを実現しているそうです。

 

加えて、もう1つの現代の移住のポイントは地方のコミュニティに属しつつ、Facebookなどのお陰で都会のコミュニティにも属し続けられるという点があります。

閉じられたコミュニティではなく、複数のコミュニティに所属する。これが冒頭に佐々木氏が述べた「マルチハビテーション」の意味です。

それは単に複数の住居を持つということではなく、複数のコミュニティとネットワークを自らが仲介するということにも繫がると思います。

 

「20年前、シャープが今の状態を誰が想像したでしょうか」

と始め、一点のコミュニティだけに深く依存するのではなく、複数の拠点を持つことがこれからのスタンダードになるのではないか、と今回の講演を総括する佐々木氏。

移住は単なる個人のライフスタイルの問題ではなく、大きな社会潮流を映し出していると感じました。

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