研究会ブログ

2015年12月18日 Fri. Dec. 18. 2015

ロンドンオリンピックが、デザインと観光にもたらしたレガシーとは

12月16日、インテリアデザイナー澤山乃莉子氏のお話をお伺いいたしました。

澤山氏はロンドン在住で、ロンドンオリンピック前後で起こった変化の様子を如実に感じ取られました。国全体がかつての輝きを失いつつあったロンドンがオリンピックをどのように活かし、いかに変貌を遂げたか。デザインシティとして新たに生まれ変わった彼らの戦略を学びました。


■デザイン立国、イングランド

「オリンピックを前に自称を含むアーティストの方たちに手を上げてもらい街作りにそれを活かすことでありとあらゆるところにレベルの高いアートが生まれました。

今やそれを巡るツアーもあるぐらいにそれらは一つのディスティネーションとなり、デザインの街が出来上がりました。

バンクシー(※)などもここから生まれたんです」


※バンクシーは神出鬼没の覆面アーティスト。

ストリートに場所を選ばずに一夜にして仕上げられるウォールペインティングは今や高額で取引され、今年の夏にはパレスチナ人自治区のガザの壁面に作品を遺し話題になりました。


「このころ、新英国デザインというキーワードでイギリスのデザインとは何だということを皆が追求しました。元々自分たちのカルチャーにデザインは奥深く根付いていたのでそれを問い直した形です。

それにともなって国を挙げて起業が推奨されました。つまり、ロンドンに居なくても働けることを目指した。イギリスは今や新しいデザインの発祥地になりましたが、それを支えたのが政府です」


■教育の力、本物を観る目を育てる

「それだけでは足りないということで、中高一貫の起業教育も行われました。算数国語理科社会以外に、音楽や美術などが重視され、デザイナーの最終目的とは自分で会社を興し、世に問うことであるという認識が共有されたんです。

また、本物の美術に触れさせるということも積極的に行われ、美術館が近くにない地域の人のためにギャラリーにはナショナルギャラリーから様々な絵画が貸し出されています。本物を見た子どもたちは、本物しか買わなくなり今イギリスのアート市場は10兆円規模に及んでいます」


■ディストリクト化の効果

「秋はロンドン中がデザインに沸きます。デザインフェスが開催される7つの地区は、それぞれが、工房が多い、アーティストが多いなど非常に特徴的な個性を持っています。

それぞれの街がディストリクト(区画)化されていて、訪れやすい。

観光という観点から考えても、観光客が訪れやすいようなつくりになっています。パリやミラノにもデザインの街というのはあるんですが、ロンドンは非常に回りやすい。どこにいけばどんなものがあるというのがディストリクト化されているからです。

 

街も自らの特徴を打ち出して街をあげて集客ができるんです。スタンドや看板を皆でお金を出し合って作ったり、ボランティアやSNS,自治体とも連携できます。空きオフィスを安価で提供するようなこともしています

例えばチェルシーのエリアは通りごとに系統の違うショップが並んでいて、一つの通りだけをとってもアートとデザインがクロスオーバーしたものばかり。

10年前はデザインにかかわるものが全く無かった場所でも今やデザイン事務所やアーティストが沢山集まる場所になっています。そこに行ってアーティストのお話を聞くというだけでも多くの人を呼んでいるんです」

 

■デザインプロモーションで日本も市場拡大を

伝統+革新+サステイナビリティでジャパンブランドデザインを追及して欲しいです。ロンドンオリンピックの時は、イギリス人が自分たちのアイディンティティーを問いました。その時、古いものだけではなくそれを現代に刷新するということがなされたんです。

また、デザインのプロモーションも行って欲しい。デザインは楽しい、面白いし儲かるものだと伝えて欲しい。日本にはまだまだ埋もれた未開拓の市場があります。起業が当たり前になる教育環境の整備、将来の市場の形成というロンドンの流れを見てきて、日本のヒントになることをご紹介させていただきました」

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