研究会ブログ

2013年10月22日 Tue. Oct. 22. 2013

上野千鶴子の新刊 『ニッポンが変わる、女が変える』

10月10日、『ニッポンが変わる、女が変える』(中央公論新社)が上梓されました。

この本は、昨年7月の文化経済セミナーにご登壇された社会学者の上野千鶴子氏が、1年間にわたり『婦人公論』誌上にて行ってきた対談をまとめたものです。

お相手は12人の女性――高村薫、瀬戸内寂聴、永井愛、国谷裕子、田中眞紀子、辛淑玉、浜矩子、加藤陽子、中西準子、林文子、澤地久枝、石牟礼道子(敬称略)


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 上野氏だからこそ、ゲストの方たちもこれだけいいにくいことを話せたのではないか、というようなエピソードが多く語られ、それに対する上野氏の答えが秀逸。

たとえば、被災地公演を行った劇作家の永井愛氏が「芝居よりも、下着を届けるべきではないかと狼狽もしました」と打ち明けたことに対し、上野氏は「あなたはパンツを持っていくべき人ではない。絶望の反対語はユーモア。そのユーモアこそ、あなたの戦場じゃありませんか」というように答えるなど。

 

また、一冊を通じて繰り返し出てきたのが、「日本を変えるためには、成長型のシステムを縮小型のシステムに換えるほかない」という考え方。

 

上野氏自身の信条でもありますが、ノンフィクョン作家の澤地久枝さん、小説家の高村薫さん、経済学者の浜矩子さんらが現在の安倍政権の志向に反して、“イギリス流の老いらく社会”を唱えています。

「国民総生産なんか落ちてもいい。こぢんまりとした、しかしよその国が『あの国はいいな』というような国」(澤地氏)

「人口が減っていくなかで、価値観や考え方を大きく方向転換しなければならないのに政治家はそれをできない」(高村氏)

「女の知恵が生きる分かち合いの世界」(浜氏)

 

「こうなればこうなるというのにはすでにヨーロッパ型モデルがあって、一番の先進国はイギリスです。かつて7つの海を制覇したコモンウェルスが、ヨーロッパの辺境の島国として生きて行こうとしているのですから。時々、大国意識が邪魔をしますが」(上野氏)

 

 やはり、“上野節”の知性と毒は癖になりますね。

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