研究会ブログ

2015年12月11日 Fri. Dec. 11. 2015

松浦弥太郎著『考え方のコツ』

2016年新1月度文化経済研究会でご登壇いただく松浦弥太郎氏。

『暮らしの手帖』編集者を9年間務められたあとに今年4月クックパッド株式会社に移籍され、立ち上げられたウェブサイト「くらしのきほん」は大きな話題になりました。

考え方や暮らし方を丁寧にするための著作を多数出版されています。

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今日は特に松浦氏の暮らしの姿勢がよくまとまっていると思われる『考え方のコツ』から明瞭で普遍的な箇所をいくつか引用します。


■考えるための時間を確保する

「考える習慣とは、思考の時間を確保することです。僕はできる限り1日2回、思考の時間をスケジュールに組み込んでいます(本文19ページ)」

  

人間考えるということだけは他の「食べる」や「読む」と違って何か別のことをしながら片手間で済ませてしまえると考えがち。(「食べる」や「読む」も片手間でやっている人もいますが……)

確かに何かに関する「意識」を常に持つことはできますが、「意識」というのは言わば作業台か調理テーブルのようなもの。そこに材料や食材を置いているだけでは意味が無いのに、何故か「考える」という行為に関してはその混合を起こしてしまう。

何かをしながら「考える」というのは、調理台に食材だけを置いて料理をしたような気分になっているようなものなのかも。

  

松浦氏はまず午前中は1時間は思考のためだけの時間を確保します。午後になると気だるさや雑念が頭の中を多く占めるようになるのに対し、午前はまだ起きたてで思考がクリアーな状態。

睡眠から醒めて脳がすっきりとした状態の時に思考回路を働かせることで日々の仕事に丁寧さを行き渡らせます。

 

■目の前のことに集中できるか

ここで松浦氏の仕事を見てみましょう。松浦氏がクックパッド株式会社に入社された後に立ち上げられた「くらしのきほん」は生活の隅々にまで行き届いた心配りが感じられるサイトです。

その心配りとは、「目の前の記事に集中させてくれる」ということ。

 

最近のウェブサイトは隅々にまで情報が張り巡らされており、一つの記事を読み終わらないうちに別の記事が常に横に表示されています。「くらしのきほん」では、「○○を××するための10の方法!」や「△△が面白すぎる15の理由!」などの記事タイトルが自らをクリックしろとアピールしてくることはありません。

 

何かをするときにはそれに集中する。思考するときにはそれに集中し、記事を読むときにはそれに集中する。松浦氏はこれを貫かれているように感じました。

自らの発信したものに接している生活者も、その間は目の前のものに集中して欲しいから「くらしのきほん」のページのつくりは非常にシンプルで、センセーショナルなサイドバーが興味を煽り立ててくることもありません。

 

■日々を丁寧に過ごすための、夢との向き合い方

ではそうやって日々の暮らしを積み重ねた先には何があるのか。

「夢」に関して言及された箇所も以下に引用します。

 

「なりたい自分を想像し、きちんと計画してコツコツやっていくより、今、目の前にあることをしっかりと務めて、流れに身を任せたほうがうまくいく(本文94ページ)」

 

決してネガティブなことを言っているのではなくむしろその逆で、夢を抱いてそこからの逆算で自分の行動原理と生活スタイルを作ってしまえば、いざ夢がかなったときにそれ以上の人になれない。

夢からの逆算法は夢がゴールなのに対し、松浦氏はあくまですべてが道程であるというスタンス。

と言っても、松浦氏が夢を持っていないわけではなく、もし夢を聞かれたら、即答で「親孝行」をあげるそうです。

これはとても個性的だと思います。というのも、「夢」を尋ねられると多くの人はキャリアに関連したことを答えるはずですし、聞くほうもそれを想定している。

しかし夢をあえてキャリアとは一見関係のない方向においておくことで、たとえ夢とは関係ないことが目の前にあったとしてもそれに集中することができ、それは日々の暮らしを丁寧にすることに繫がる。

 

『考え方のコツ』とは目の前のことにいかに集中するかということに関する松浦氏の哲学です。

本書にはこれ以外にも多くの考えが収められていますが、すべては「目の前のことに集中する」という簡単なようでありながら実は非常に困難な行為を成し遂げるための方法に繫がっているように思いました

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