研究会ブログ

2016年05月13日 Fri. May. 13. 2016

松浦弥太郎氏著書『正直』

2016年1月に文化経済研究会でご講演いただいた松浦弥太郎氏著書『正直』を読みました。

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皆さんは松浦氏に対して、どのような印象を持っていますか。


エッセイスト・文筆家を経て『暮しの手帖』編集者として9年間励みその売上を伸ばした後、クックパッドに移籍、新たに立ち上げたWEBメディア『くらしのきほん』でも丁寧で細やかな生活の気配りを届けている。

その経歴から、どうしても温厚で物静かな人物という印象が先立つのではないでしょうか。

実際その一面は間違いではなく、どんな人に対しても松浦氏は丁寧に自分の言葉を届けてミーティング一つにせよ心配りを欠かさない方です。


本書タイトルである『正直』は松浦氏の人格に非常にマッチする言葉と言えるでしょう。

しかし、本書を読み終えればこのタイトルは全く違う印象の言葉に置き換えることもできるでしょう。

それは「野心」。


野心、野望、高み。

ハングリーさや強さの一方、荒んだ印象を受けるこれらの言葉ですが、松浦氏はこれを「生まれたままの心。飾りを取り払った自分の本質」と説明します。


30代だった松浦氏はアメリカと日本を行き来し向こうで買った古着をこちらで売ったり、書籍の訪問販売などのビジネスを始めます。

何のコネクションも持っていなかった状態のそれは「ビジネス」というスマートなニュアンスではなく、まずは会ってもらうのが一苦労。

名も無い30代の青年から掛かってきた営業まがいの電話を取り次いでくれる人はなかなかおらず、電話をかけても断られる日々が続いていた頃。


「これはどこか恋愛にも似ている。誰かを好きになって、この人と仲良くなって付き合いたいと思うと、いろんなことを考える。

(中略)

すると、どんどんアイデアが浮かんでくる。親しくなる方法を無限に思いつく。ばかばかしいアイデアばかりかもしれないが、恋をすると、自分はばかになっていく。だが、ばかになることがすばらしいのだ」


これはサンフランシスコを放浪していた頃のエピソードに寄せ、思いついたことを実行することの原動力についての一文です。

電話でのアポイントメントが橋にも棒にも掛からずにいた松浦氏は、直筆手紙を書くという方法に切り替えます。

しかしそれでもなかなか会ってもらえない。更にこれを推し進め、全ての文字を毛筆で書き始めてから状況が全く変わりました。

毛筆の手紙が来れば、まずダイレクトメールと一緒に捨てられることもなく、貰った人も佇まいを正し、しっかりと手紙を向き合うようになります。

このようにしてまだ30代だった松浦氏は、文化人との面識を重ねていくのでした。


どうしても会いたい人が居るときに、ばかばかしくてもいいので色んな手を考える。

この原動力となるのが野心であり、それは誰かや社会に対する攻撃的な感情というよりも、社会とより深く繫がって誰かのための誰かでありたいという純粋な気持ちです。

誰かに強く求められたい、そう思うのは人間という動物の本能であるとも言えます。


「正直」「野心」「ばか」それらに共通するのは無骨でむき出しであるということ。

徒手空拳だった松浦氏が社会の中でもがいてきたエピソード、そこから掬い取った教訓や想い。

単純に松浦氏の冒険や試行錯誤を追うだけでも面白く、清々しい気持ちになります。

自分がやりたいこと、なりたい自分に対して正直になろうと思わせてくれる一冊です。

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