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2015年02月13日 Fri. Feb. 13. 2015

トマ・ピケティ著『21世紀の資本』~経済メディアの需要を振り返る~

トマ・ピケティ著『21世紀の資本』。

大ベストセラーですね。皆さんもう読まれましたか?

1970年以来、米国の上位1%が独占している富が増大し続けていることや、資本は本質的に格差を招き、それを避けるためにグローバルな累進課税が必要であると主張しています。

 

今回は本書が日経ビジネス、週刊ダイヤモンド、週刊東洋経済の主要経済誌でどのような取り上げられ方をしてきたのか、いくつかの記事をあげて見ていきたいと思います。

 

まず日経ビジネス14年5月19日号で『現在のマルクス』という見出しの記事と内容概略をご覧ください。既に欧米でヒットしていたこの本のヒット分析を行っています。

 

「仏経済学者トマ・ピケティの『21世紀の資本論』が世界的ベストセラーとして話題。米アマゾンではフィクションも含めたベストセラーの第1位に躍り出た。

(中略)

本書が大ヒットした要因は、最高のタイミングで、最も話題になっているテーマを取り上げたこと。格差の問題は特に米国で、少し前からホットな話題として急上昇していた。特に最近はウォール街が過剰に富を得すぎていることに怒りが爆発、富の再分配が問題になり始めていたところに、本誌が注目を浴び、一般の人にとって経済学が関心のあるテーマとなりつつある。」

 

14年7月26日号の週刊東洋経済では『21世紀の資本論』という記事。書籍の主張をかいつまんで分かりやすく解説してくれている(おそらく日本ではかなり早い段階の)記事ですのでこれもご紹介します。

 

「重厚な経済書が欧米で飛ぶように売れている。仏経済学者ピケティ教授『21世紀の資本論』だ。

1.経済成長率よりも資本収益率が高くなり、富めるものが更に富む

2.この不平等は世襲を通じて拡大する

3.この不平等を是正するには、世界規模での資産への課税強化が必要

 

以上が3つの趣旨。

不平等を放置すると、人々はスケープゴートを作る。外国人、移民労働者、EU、ドイツなど様々なグループが槍玉に挙げられ、実際にWW1も起こった。5月の欧州会議での極右の台頭もこの傾向を示している」

 

さて、ここまで『21世紀の資本論』とピケティの書籍を表記しました。

実際にこのような表記が邦訳版が発行されるまでは一般的だったのですが、実際に去年末に発行された書籍の邦題は『21世紀の資本』。『Capital in the Twenty-First Century』という原題の直訳ですね。しかしそれ以前に日本で呼ばれていた『21世紀の資本論』という通称はピケティとマルクスのイメージをスムースにつなげる役割を果たしたと思われます。

 

そして週刊ダイヤモンド15年2月14日号では知識人がそれぞれピケティをどう読んだかが掲載されていますのでこちらも幾つか紹介いたします。

 

佐藤優「『21世紀の資本』には検証可能なデータが多く、知識人として誠実。だが(ピケティが主張している)国家による経済統制は国家資本主義に近い。非常に窮屈な世の中になる」

 

池田信夫「膨大なデータを分析したこと自体は凄い。しかし不平等についての論証は荒っぽい。資本収益率が経済成長率を常に上回るというのも全ての国に当てはまるわけではない」

 

竹中平蔵「グローバル化が進み、新たなフロンティアに入れるかどうかで絶望的な格差が生じている。それは格差を超えた「フォールト・ラインズ(大断層)」と呼ばれる。この本はその議論の決定版。福祉社会の北欧でも格差は広がりつつある」

 

成毛眞「ポピュリズムに利用されて階級闘争を引き起こす可能性が心配」

 

逆に、週刊東洋経済15年1月31日号には批判者の声も紹介されています。

 

デヴィッド・ハーヴェイ(ニューヨーク市立大学教授)「資本が不平等を生み出すということはマルクスが『資本論』の中で証明している。ピケティは資本について何も語っていない」

 

タイラー・コーエン(ジョージメイソン大学教授)「ピケティが主張するほど資本が機動的ならば、富裕層の富は政府の力など安々とすり抜けるだろう」

 

チャールズ・I・ジョーンズ(スタンフォード大学教授)「富の集中が進んだのは事実だが、それが果てしなく続いていくというピケティの予測は推測の域を出ていない」

 

マルクスは『資本論』一冊で(実際は9巻ありますが)世界を真っ二つにしてしまいました。

ではマルクスの時代よりも格段に強固な地盤を築いているこのグローバリズムの世界で、ピケティが呼ぶ論争はこれからどんな方向に変容していくのでしょうか。

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