研究会ブログ

2014年06月20日 Fri. Jun. 20. 2014

文化経済研究会会員様インタビュー/つばめグリル、石倉悠吉様 前編

つばめグリルは、1930年に創業。1946年に銀座へと本店を移し、東京を中心に24の店舗を構える。

鮮度に徹底的にこだわり、手間を惜しまずに調理される代表メニューである「つばめ風ハンブルグステーキ」などをはじめ、日本を代表するレストランとして多くの生活者からの支持を得る。

文化経済研究会では、石倉社長に飲食店を経営するうえでのポリシーを伺った。

 

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◆老舗を作りたい

Q ツバメグリルの経営にあたって大事にしている思いを教えてください。

A 僕は食べ物屋の3代目で、僕自身が大学を卒業したときにサラリーマンになるか、飲食店をやるか迷いましたが、結局飲食の道に進みました。

ただ、店をやるにあたっては銀座の様々な店舗を見てきたので、やるなら「老舗」にしたいと思いました。銀座のお店はどれも長続きして儲かってみえたので(笑)。

 

ずっと長く料理人さんがいると、どんどん給料が高くなってきて払い切れなく成るので修行と称して別の店に行かされてしまう。かと言って多店化すると潰れてしまうお店もありました。そこから、料理人さんを長く雇いつつ老舗になるにはどうすればいいのか。そのテーマが最初にありました。

 

自分の経験に対して嘘をつかない

ある人の話によると、銀座の老舗というのは店主同士が同じ小学校で、子どものときからずっと仲良しの友達なんだそうです。お互いの家に出入りするうちに裏側もわかってくるようになる。そんな銀座の商人が一番大事にしていることはお客様に受けること以上に、仲間に後指さされないこと。仲間から「あいつはずるいことやっているな」と見なされるのが一番怖い。仲間に対して恥ずかしい商売をしてはいけない。

 

また、銀座の嘘というのは普通の嘘とは少しニュアンスが違います。法律的にどうこうじゃなくて、「自分の経験に対して嘘をつかない」ということです。こういう職業なので色んなものを食べ歩きます。そこで、自分の商売のコストパフォーマンスやお客様の懐を考えて、それらの兼ね合いの中から提供し、更に日々経験を積みながら最高のものを追い求めていく。それが経験に対して嘘をつかないということです。

 

一番効率の良い料理の作り方っていうのはね、作り置きなんですよ。昔は防腐剤なんてありませんから、ハンバーグだったらソースの中に漬けてしまう。そうすると、とりあえずは腐らない。それで翌日になって暖めなおす訳なんですが、すると最初の出来たてのものと、翌日ソースの中で煮込んで作られたものとは全く別物なんです。出来立てが美味しくても、お客様のところにいくころには化学調味料の美味しか残らない。一応売れるんですよ、それでも。しかしこれは違うなぁ、と。それでは意味がないと思いました。

これは自分に嘘をついていると思いました。

 

調理動線を考えたキッチン作り

それでどうすれば効率よくお客様に美味しいものを出せるかを考えている時に、博多ロイヤルに行ったんですよ。すると、調理動線にあわせてキッチンを作っているんです。料理を作るときの動きの無駄が殆どなくなるような作りでしたね。僕らは何でもオールマイティに対応できる家庭の調理場みたいなキッチンを作っていました。しかし、例えばロールキャベツを作るとなったときに、あっちに調味料を取りにいったり、こっちに取りにいったりしているうちに、置く場所がぐちゃぐちゃになっていまうんです。結局効率が悪くなっていき、やむを得ず作り置きをする、ということになってしまいます。

 

他にもそのころ、居酒屋「天狗」一号店ができたから見に行ったんですよ。そこは焼き鳥は焼き鳥、流しは流しというように、カウンターに向かって全部が直線的な動きで移動できるようになっています。だから、これからは料理によって動線を分けなければいけないなぁと痛感しました。すぐに電話を入れて、作りかけだった新しい店舗の工事を中止させましたね。慌ててキッチンの動線を書き直したんです。やっぱり嘘をつかない、そしてできるだけ安く作るにはこの辺りのことからちゃんときっちり整理しないといけないんですよね。

 

島国、日本の特性

いろいろな人のお話を聞いて見識を深めようと、アメリカにあるジョナサンの元になったお店に聞きました。そこの社長さんが色々お話してくれたんですが、彼は僕にマンハッタンを見てこいと言うんです。何故ならマンハッタンは日本と同じように島で、一定の人数が一定の時間に必ず食事をする。アメリカは国土が広く街が点在しているせいで、セールスマンなんかがかなり長い距離を行ったりきたりします。その時に、行きに立ち寄って美味しかったお店にもう一度行ったら美味しくなくなっていたということが当たり前にある。作り置きですからね。広大な土地を移動する必要のない日本で同じことをやる必要はない。調理手順や物流を整理することによってもっとうまくやれると思ったんです。


後編はこちら

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