研究会ブログ

2017年07月18日 Tue. Jul. 18. 2017

文化経済2017.7月 講演レポート①/丹埜 倫氏


 

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7月13日に行われた第90回文化経済研究会、第1部では株式会社R.project代表取締役の丹埜倫氏にご登壇いただきました。

 

合宿事業と外国人向けバジェットトラベル事業といった、主に宿泊業を手掛ける同社。「日本が本来持つポテンシャルを発揮する」という理念のもと、同社がどのような視点から事業を展開し、そしてどのような今後を展望しているのか、お話をいただきました。

 


 

・オーストラリア人の父に説かれた「日本の面白さ」・

 

丹埜氏の父親はオーストラリアのゴールドコースト生まれ。ゴールドコーストと言えば、その豊かな自然によって世界的に有名な都市です。日本に移住し、都心に居を構えながら、週末は千葉の山林で自然に囲まれて暮らすことを欠かさない父親だったといいます。

 

そんな父親に連れられ、丹埜氏もご自身も、幼少期は都市と大自然とを往復する暮らしをしていました。その行き帰りの道中、父親は「日本人は不思議な民族だ」と口癖のように言っていたそうです。80年代のバブル期、日本人はゴールドコーストやハワイなど、海外の土地を多く購入していました。

 

しかしながら、同時期の千葉の山林が、東京から車で2時間も掛からない「近所」であるにも関わらず、非常に手頃な価格で購入できたということも事実です。地方にはこんなにも豊かな土地があるのに、日本人はそれを無視し、外ばかりを見る。これこそが、「日本人は不思議な民族だ」という口癖の真意でした。マイナーな存在だった地方を丹埜氏が意識するようになったのは、父親の存在があったからでした。

 

 


・証券会社で培った「嗅覚」と、起業までの道のり・

 

大学ではスカッシュの日本代表として活躍されていた丹埜氏。大学卒業後は、証券会社で株のトレーダーとして働き始めました。残業も接待もない職種であることから、スカッシュの練習時間が確保できるという点が決め手でした。

 

ところで、株の売買には「嗅覚」が肝心なのだそう。高値が付く株、そうでない株と様々ですが、その値付けを疑う感覚こそが「嗅覚」。例え高値であっても、その企業が過大に評価されていれば暴落する危険性を孕みますし、逆に、安値の背景には過小な評価があるかも知れない。そういったことをいち早く察知する「固定概念にとらわれない」感覚を、丹埜氏は株のトレーダーとして働く中で養いました。

 

その感覚が昂じて、トレーダーとして働くうちに、ますます地方への関心が高まったと言います。過小評価されている地方のポテンシャルを、どうにか発揮できないか。社会的な意義がありながらも、同時にビジネスにもなり得る道を模索し始めたのは、丹埜氏が20代後半に入ってからのことでした。

 

そんな時、脳裏を過ぎったのは、活用されなくなった地方の遊休施設の存在。折しも、少子高齢化や過疎化による地方の財政難や廃校問題が表面化し始めていた時期でもありました。遊休施設の再活用方法として、丹埜氏が選んだのは、小学生から社会人まで、誰しもが経験するであろう「合宿」でした。

 

 


・合宿事業、誰も目を向けなかったポテンシャル・

 

その選択の背景には、とある体験がありました。

 

スカッシュの選手として大学のサークルに所属し、合宿へ出かけた時のこと。サークルは100名を超える大所帯。一人当たりの宿泊費は安価でも、トータルで見れば相応の額になります。お世辞にも綺麗とは言えないがらりとした民宿で、何処に宿のスタッフがいるかも分からない中、サークルの会計係は大金の入った封筒を持っている……。

 

その光景を思い出し、合宿の市場規模は思っている以上に大きいのではないか、という予測が生まれました。加えて、合宿はある程度固定的な需要が見込めることから、恐らく安定した市場でもある。まさに、「過小評価」された分野でした。

 

誰も正確に市場規模を算出してこなかった分野のため、銀行の融資を受けるのも難しかったそうですが、融資に漕ぎ着け、千代田区が所有していた保田臨海学園を譲り受けることができました。リノベーションと新設工事を経て、『サンセットブリーズ保田』としてリニューアルオープンに至ったのは2007年のことでした。

 

以後は震災の影響を乗り越えながら、順調に運営施設数を拡大し、今では合宿施設が8箇所。加えて、外国人バジェットトラベラー向けの宿泊施設が3箇所と、計11箇所の運営を担っています。施設の老朽化、利用者の現象、そして後継者不足と、様々な要因から未使用となった施設に、新たな命を吹き込んでいます。

 

 

 

・施設という「財」で、教育の役割を引き受ける・

 

R.projectと丹埜氏が今後見据えるのは、教育事業の展開。インターナショナルスクール(高校)の形式で、既存のカリキュラムにとらわれない教育環境を、日本全国に拡大したい考えです。

 

日本は世界有数の経済大国であるにもかかわらず、教育の選択肢が非常に限られている点を丹埜氏は指摘。英語で行われる授業や、国籍を問わない交流の機会など、多様性が求められていると言います。

 

しかし既存のインターナショナルスクールは、高額な学費がネック。これは、主に施設のコストと、海外から招く教員のコストによるもの。

 

R.projectは既に自社で黒字運営の施設を有しています。そして教員についても、産学など外部との連携によってコストをコントロール。ハードとソフト、両面の工夫から、インターナショナルスクールの学費を日本の私立学校水準まで下げることが同社の目標です。

 


 

・灯台下暗し、それでも足元に目を向ける・

 

今回、丹埜氏のお話から強く印象に残ったのは、決してぶれない堅実なひたむきさでした。

 

「私達は可能性を見いだす会社です。みんなが気づかずに通り過ぎてしまうようなもの。みんなの話題にも上らなくなっているもの。そういうものの中に価値を見いだす会社でありたいと思っています。」

 

  

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株式会社R.project 企業ロゴマーク

 


R.projectの企業案内のページを捲ると、まず最初にこの言葉があります。灯台の下は得てして暗いものです。眩しい灯台の明かりにとらわれてしまい、足元に何があるのか、わざわざ気遣う人は少ないのかも知れません。それでも、敢えて目線を落とし、決して派手ではないけれどしっかりとした可能性の芽を見つける。固定観念にとらわれないという姿勢は、「突飛な視点」という霞ではなく、とても地道で当たり前の、強固な地面に根ざしたものなのではないでしょうか。

 

 

 

 

 

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