トムズボックス 土井章史さんに
おすすめの絵本について
うかがいました!
トムズボックスオーナー土井章史さんのインタビューでは、
子どもの部分が残った”上等なおとな”の目線で、
おすすめの絵本も3冊ご紹介いただきました。
3冊ともトムズボックス(土井さん)による編集。
不思議、ナンセンス、なんじゃらほい、
そして「乾いた笑い」の意味が
とてもよくわかるような気がしました。
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『ぎゅうぎゅうどうぶつえん』
井上洋介/えとぶん 芸術新聞社/刊
1冊目は土井さんに”追っかけ”をさせて今に至らせた
ひとり、井上洋介さんの『ぎゅうぎゅうどうぶつえん』です。
ただ単に「ボクのへや」に次々といろんな動物が
入って来るだけのお話なんですが、
読み進むうちにだんだんエキサイティングな気分に
なってくるから不思議。
キリンが入ってきて、バッファローが入ってきて、
カバ、セミ、カブトムシ、ゾウ、ワニ、クジャク、ゾウガメ、
フクロー、モグラ、ヤマアラシ、バクと続き、
「それで ぼくの へやは
ぎゅうぎゅうどうぶつえん」
とついにクライマックスを迎えるのです。
バッファローやゾウとセミ、カブトムシが
同じ大きさなのですが、「ボクのへやに入ってきた!」という1点で
嬉しさは同じ。だから大きさも同じ、ダイナミックに描かれています。
この展開を楽しめるかどうかが勝負だ、と土井さん。
そしてどこのページにもいる「狂った時計」が最高です。
「けんだま」もどういうわけかいるのです。
同じ部屋なのに時計のかたちが変わってます。
これぞナンセンスの真骨頂!
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『ぎゅうぎゅうどうぶつえん』中面より。
動物たちが入ってくる向き、「ボク」が迎える顔の向きは
どのページも同じです。
左ページに「狂った時計」、右ページに「けんだま」
があるのも同じ。でも色やかたちは同じ部屋なのに
なぜか変わっちゃうんです!
「狂った時計」の振り子と「けんだま」のひもが
どんどんどんどん動きが激しくなり、
クライマックスに向けて盛り上がっていきます!
これにはまるかはまらないかというところで
子どもの心を持っているかどうか分かれるんだそうです。
はまってくれると面白いなあ、と土井さん。
文字はすべて井上洋介さんの手描き文字。
これまた味があります。
本気で絵本を出そうと思うと、こういう方向は危ないそうですが、
学生にはこういう思い切ったやつをどんどん描けと言うそうです。
一方ワークショップに来るプロを目指している人、
ちゃんと絵本を学ぼうと思う人には、
こういう絵本は難しいだろうな、とおっしゃっていました。
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『さるのせんせいとへびのかんごふさん』
穂高順也/ぶん 荒井良二/え
ビリケン出版/刊
2冊目は『さるのせんせいとへびのかんごふさん』です。
この絵本は子どもに相当うけていて、
1999年初版、現在29刷になってます。
読み聞かせをすると子どもたちは最高に面白がるので
ぜひ読み聞かせてあげてほしい絵本だそうです。
「ナンセンスとまでは言わないけれど乾いた感じ」と土井さん。
この絵本の特長は、リズムがすごくいいところと
へびのかんごふさんの使い方がすごいところです。
試験管になったり注射になったりはかりになったり
電車ごっこのつなにもなります。
ストーリーの本筋とは関係のないところでの
荒井良二さんの芸の細かさも特筆ものです。
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『さるのせんせいとへびのかんごふさん』中面より。
ふたごのくまが健康診断にやってきます。
めもりが付いてはかりになったへびのかんごふさんに
こどもたちは身長をははかってもらおうとしています。
読者の目線がすっかりへびのかんごふさんと
ふたごのくまたちに行っているその横で
たいへん! おかあさんぐまは
ひそかにハチにさされてます!
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『さるのせんせいとへびのかんごふさん』中面より。 「この絵本は子どものエンターテイメントになりきっている」
次のページをめくると、へびのかんごふさんは
頭まわり、胸まわりをはかってくれて
さらに電車ごっこのつなにもなってくれてます。
ここでも読者の目が彼らにくぎづけになっているその横で
おかあさんぐまは、さるのせんせいに
ひそかに治療してもらってるのです!
と土井さん。
なんのメッセージもないけれども、
展開の面白さ、ことばのリズムの良さが
際立っているのです。
とくに穂高順也さんの文章が効いています。
穂高順也さんは、ご自身ですごく味のある絵コンテを
描かれるそうです。
土井さんに言わせると
「偏屈なやつで独身でもてない男だけど考えることは面白い。
おとなになりきれていない42歳」なんだそうです!
これって、絵本を作る人にとっては
まあ、褒め言葉ですよね? ね?!![]()
『じょうろさん』
おおのやよい/作 偕成社/刊
3冊目はおおのやよいさんの『じょうろさん』です。
おおのやよいさんは土井さんの絵本ワークショップに
来ていた人で、ふだんは園芸家でありイラストレーターです。
この絵本は『にわのともだち』に続く2冊目だそうです。
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『じょうろさん』中面より。
主人公は年寄りのじょうろさん。
でも、じいさんだから水がもれるようになっちゃって
庭のともだちの葉っぱたちが穴を埋めようと
葉っぱを落としてくれたりするのですが
新しいじょうろを買ってこられちゃった・・・。
哀愁漂うじょうろさん。じょうろさんピンチ!
どうなる、じょうろさん?!
この絵本は、無機質なモノに表情を付けた
「アニミズム」で、長新太さんお得意の分野です。
モノにも表情があって感情がある。
園芸家ならではの目線で、ちゃんと植物を描きながら、
身近なところに面白いお話があるという提案をしています。
子どもは生きているもの死んでいるものいっしょに考えるので
「アニミズム」を素直に受け取れるのだそうです。
「じょうろさん」と、「さん」が付くことで
なんだかとてもいとおしく感じられますね。
この感覚、私たちも大事にしたいと思いました。
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トムズボックスオーナーの土井章史さん。
おすすめ絵本を選んでいただく際に、
1冊1冊、土井さんに解説しながら
「読み聞かせ」をしていただけて、とてもラッキー!
どの絵本も最高に面白かったです。
土井さん、素敵な絵本をご紹介いただき、
本当にありがとうございました。(ミヤタ)













