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谷口正和 プロフィール

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2017年9月11日

タラブックス

 

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近年は地産地消の延長で、足元から作り、育て、

そしてそのことをマーケットや社会につないでいくという思想が、

地域の一番小さい単位の自立構造をもっている。

 

今回、紹介する『タラブックス』というのは、

手作りで絵本を生み出す出版社である。

 

丁寧なステップを踏みながら、一冊一冊に心を込めて手作りする。

それはクラフトマンシップであり、

まるで一人ひとりにアートを届けるような姿勢が感じられる。

 

タラブックスでは、書く人、描く人、作る人、

そうした人たちがファミリーとなってビジネスをしている。

ファミリービジネスというのは形態のことではない。

家族のように思いを交換しながら、家族で子どもを産み育てる、

そして世の中に出していく、そういう濃縮した認識論がそこには埋まっている。

 

そうした流れの中で、

素敵な絵本を出されているので注目をしていたが、

今回そのコンセプトブックとも呼べるような形のまとめ本が出版されたので、ここでご紹介したい。

 

私自身もデザイナーで、イラストを描く目線から見た時に、

その豊かな表現力と、一点一点を版画のように組み立てていくような

丁寧さが感じられる。

まるで本自身がアートのようである。

 

この一冊の本が生活の中に入った時、

そこから送り出されるシグナルは、

我々自身のクリエイターとしてのコンセプトと

大きく重なっている気がする。

 

量産に馴染み、総量形成と利益優先の構造の中で、

売れない本ばかりが溢れてしまう。

そういうものに対して、丁寧な刺繍のように提示することの豊かさを、

この本は教えてくれている。

 

出版:玄光社

価格:2,200+税

 

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