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谷口正和 プロフィール

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2017年7月31日

幸福実感社会への転進

 

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『構想の庭』で、お世話になった

月尾嘉男さんから書籍をいただきました。

 

月尾さんの着想は、あらゆる課題を

100年単位で何がチャンスかを大胆に整理されており、

私たちを勇気付けてくれます。

 

6800の島で構成され、陸地のほとんどが山林に覆われている日本。

その中、あらゆる課題に対する「不易流行の見極め」が提示されています。

そして、企業が果たすべき役割まで戦略的な視点で描いていらっしゃいます。

 

科学技術を軸足にした継続すべき未来の形とリンクする

解釈がこの本の持っている魅力です。

 

先入観を打破すれば、新しい未来が出現します。

 

まさに歴史の教訓から長期ビジョンの中にある

社会的着想を紐解く一冊。

 

 

出版:モラロジー研究所

定価:1200円+税

2017年7月31日

水の国を考える 嘉田由紀子

 


 

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琵琶湖周辺の集落では、昭和30 年代には16%の集落で琵琶湖や河川の水を直性に飲み水にしていました。その理由は、当時、し尿をはじめ、汚水を一滴たりとも河川や湖に流さなかったからです。米の研ぎ汁やナスのヘタなども溜めておき、牛などの家畜の餌にしたり、畑に持っていき、風呂の落とし水ですら川に流さず、尿と一緒に畑に撒いていました。「もったいない」と栄養分を使い回しをした、これが「伝統的用排水システム」です。

しかし、高度成長期以降、このシステムは崩壊してしまいました。その根源は、トイレの水洗化です。近代住宅の登場により、汚水をすべて川に流してしまう住宅が日本中に広がっていきました。この時期を境に汚い水を川や琵琶湖に流さないという観念が失われてしまったのです。

一方、日本には「神仏習合」の思想があります。土着文化を排除するのではなく融和するというこの思想は、多様化が叫ばれる現代社会において重要な意味を持つと思っています。

私も滋賀県知事として、原発の危険性を訴え「卒原発」の暮らしを提唱しても何も変わりませんでした。人と水、人と自然との共生を社会に融和させていくため、「琵琶湖の番人」として私は毎朝琵琶湖から昇る朝日に手をあわせ、琵琶湖の水を飲むことを日課にしています。神仏習合の思想を貫き、地域循環型の「もったいない」サステナブルライフを構築しながら、比良山の向こうの若狭湾岸の原発を監視していきたいと思っています。電源の代わりはあっても琵琶湖の代わりはありません。

[2016 年4 月1 日発行『構想の庭』第2 号 再録]

日本各地には、それぞれ独特の文化があり、個々の価値を持っています。私はそれを「文化資源」と呼んでいます。文化資源は歴史と伝統がつくりだし、日々、堆積していくものです。それが熟成し、やがて発酵していきます。それは、独特の匂いを発しますが、その癖のある匂いも徐々に芳醇な香りとなって深みのある味わいを醸し出していきます。その香りこそが地域に眠る財産であり、その価値をヨソモノが発見してくれます。日本はすでに成長期を終えた社会です。これからの高齢化や人口減少を考えたとき、ヨーロッパのような熟成感のある滅び方を考える必要があります。国民国家の歴史はたかだか2世紀余り、国家が滅びても都市は生きのびるでしょう。京都はそういう生きのびる都市のひとつでしょう。
これまでのやり方では通用しない、ギアチェンジしなければならないのに、今の日本にはそのための動機付けとなる危機感が不足しているのではないでしょうか。戦略的な視点から、利用可能な文化資源を最大限活用した地方や都市の経営を推進していってもらいたいものです。
[2015年8月1日発行『構想の庭』第1号  再世界は、もはや「グローカル」という新しい時代に突入していると思います。今、物ではなく体験が売れる時代です。それは、訪れた観光客が文化体験を購入していることからも明らかです。それが、いまの時代の商品です。そういった豊富な商材を持ち合わせているのが、地方です
 

嘉田由紀子(かだゆきこ)

1950 年埼玉県生まれ。京都大農学研究科博士課程、ウィスコンシン大学大学院修了。農学博士。滋賀県立琵琶湖博物館総括学芸員、滋賀県知事などを経て、現在、びわこ成蹊スポーツ大学学長。環境社会学者。著書は『知事は何ができるのか――「日本病」の治療は地域から』『いのちにこだわる政治をしよう!』(ともに風媒社)など多数。

 

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2017年7月30日

「微力だけど、無力じゃない。」 田中康夫

 


 

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1981年に刊行した処女作『なんとなく、クリスタル』(1981 年刊)の最後に、合計特殊出生率と高齢化率の将来予測数値を付記しました。当時24 歳の僕は、「量の拡大」から「質の充実」へ、認識と選択を転換せねば日本は立ち行かなくなると、漠然とながらも感じていたからです。

その35年後、衝撃的だった予測すら遙かに超える合計特殊出生率1.42、高齢化率26.7%の超少子・超高齢社会に突入し、日本は黄昏かも知れないと少なからぬ人々が不安を感じています。けれども、実はタイの合計特殊出生率は日本と同じ1.4台。ヴェトナムも1.7 台。平均年齢が若いASEAN 諸国も30 数年後には、日本と同じく逆ピラミッドの人口構造へと陥るのです。

嘗て、日の入りは「誰そ彼(たそかれ)」、夜明け前は「彼は誰(かわたれ)」と呼ばれました。そうして後者の「彼は誰」は、江戸初期まで両方の時間帯を指す言葉でした。即ち、一人ひとりが五感を働かせて、向こうに立っている人が誰かを見極めねばとの意味合い。

とするなら、「量の維持」でなく「質の深化」へと認識と選択を転換し、IOT の時代たればこそ、人が人のお世話をして初めて成り立つ福祉・医療・教育・環境の分野で新しい労働集約的産業のあり方を構築してこそ、世界に先駆けて21 世紀のロールモデルを日本から発信する「彼は誰」=夜明けとなるのです。

[2016 年4 月1 日発行『構想の庭』第2 号 再録]

これまでのやり方では通用しない、ギアチェンジしなければならないのに、今の日本にはそのための動機付けとなる危機感が不足しているのではないでしょうか。戦略的な視点から、利用可能な文化資源を最大限活用した地方や都市の経営を推進していってもらいたいものです。
[2015年8月1日発行『構想の庭』第1号  再世界は、もはや「グローカル」という新しい時代に突入していると思います。今、物ではなく体験が売れる時代です。それは、訪れた観光客が文化体験を購入していることからも明らかです。それが、いまの時代の商品です。そういった豊富な商材を持ち合わせているのが、地方です
 

田中康夫(たなか やすお)

1956 年東京都武蔵野市生まれ。作家。一橋大学法学部在学中に『なんとなく、クリスタル』で「文藝賞」を受賞。2000 年~ 06 年長野県知事、2007 年~ 12 年参議院議員、衆議院議員を務める。近著に『33 年後のなんとなく、クリスタル』『たまらなく、アーベイン』(ともに河出書房新社)。http://tanakayasuo.me/

 

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2017年7月29日

「おもろいこと」が世界を変える 山極壽一

 


 

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  今、大学に課せられたミッションは長期的な視座を持った「未来人材」を育成することだと思っています。今、世界は地球資源が有限であることに気づき、閉塞感の中にいます。今こそ、進化という視点で人間はどのような能力を持っているか改めて考えるべき時です。

  そもそも現代人が楽しんでいる野球やサッカーは、それ自体を目的として進化した能力ではありません。人類は、猿人から約700 万年の時を経て、様々な能力を手にしてきました。それは現在のように近代的な機器を応用する能力ではなく、生身の体で自然と接していく能力です。つまり、別の目的のために進化した能力が、今の暮らしの中で応用されているということです。5 ~ 10 数万年前に人は画期的な知恵となる言葉を得ました。しかし、現代の社会ではSNS の普及とともに感情を逆なでするような言葉の暴力に晒されています。

しかし、いまさら後戻りはできません。IT 技術と賢く付き合っていく必要があると思っています。バーチャルと身体を一体化させることで人は命のつながりに快感を覚え、人間の生きるエネルギーに転化させています。今、IT 技術に求められる課題とは人にどういう幸福感を与えられるかだといえるでしょう。そういう生きるためのエネルギーとなる「おもろいこと」が発想できる「未来の人材」を大学で育てていきたいと思っています。

[2016 年4 月1 日発行『構想の庭』第2号 再録]

日本各地には、それぞれ独特の文化があり、個々の価値を持っています。私はそれを「文化資源」と呼んでいます。文化資源は歴史と伝統がつくりだし、日々、堆積していくものです。それが熟成し、やがて発酵していきます。それは、独特の匂いを発しますが、その癖のある匂いも徐々に芳醇な香りとなって深みのある味わいを醸し出していきます。その香りこそが地域に眠る財産であり、その価値をヨソモノが発見してくれます。日本はすでに成長期を終えた社会です。これからの高齢化や人口減少を考えたとき、ヨーロッパのような熟成感のある滅び方を考える必要があります。国民国家の歴史はたかだか2世紀余り、国家が滅びても都市は生きのびるでしょう。京都はそういう生きのびる都市のひとつでしょう。
これまでのやり方では通用しない、ギアチェンジしなければならないのに、今の日本にはそのための動機付けとなる危機感が不足しているのではないでしょうか。戦略的な視点から、利用可能な文化資源を最大限活用した地方や都市の経営を推進していってもらいたいものです。
[2015年8月1日発行『構想の庭』第1号  再世界は、もはや「グローカル」という新しい時代に突入していると思います。今、物ではなく体験が売れる時代です。それは、訪れた観光客が文化体験を購入していることからも明らかです。それが、いまの時代の商品です。そういった豊富な商材を持ち合わせているのが、地方です
 

山極壽一(やまぎわじゅいち)

1952年東京都生まれ。日本のゴリラ研究の第一人者。京都大学理学部卒、同大学院理学研究科博士課程修了。カリソケ研究センター客員研究員、京都大学大学院理学研究科助教授を経て、同研究科教授。2014 年10 月から京都大学総長、現在に至る。近著に『父という余分なもの--サルに探る文明の起源』(新潮文庫)ほか多数。

 

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2017年7月28日

プラチナ社会への挑戦 小宮山宏

 


 

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長く続いた食べるために労働する以外生きるすべのなかった時代を克服し、豊かな社会を実現した人類は今、「自由であるからこそ叶えられる心も豊かな暮らし」を希求することができるようになりました。心もモノも豊かな暮らしの具体的な姿を見出すことが、先進国の目標なのではないかと考えています。

私は人が心の豊かさを感じ取る基盤は、社会の絆にあると信じています。絆のある社会に生活し育まれ豊かさを実感する、そんな社会を私は「プラチナ社会」と名づけ、プラチナ構想ネットワークを立ち上げ、6年目を迎えました。

世界的には「絆」が強いと言われている日本の社会ですが、昨今、それが失われつつあります。古代から続く稲作を基盤とした地域社会や、工業化を担い終身雇用に支えられた企業社会の復活に「絆」の再生を求めることは困難でしょう。「絆」を生み出すための参加型社会を新たに構築していかねばなりません。参加型社会の目標として、私はプラチナ社会を提案しています。その主役を担うのは、他の誰でもない私たち自身ですから、歩みを止めることなく進み続けていければと考えています。

[2016年4月1日発行『構想の庭』第2号  再録]

世界は、もはや「グローカル」という新しい時代に突入していると思います。今、物ではなく体験が売れる時代です。それは、訪れた観光客が文化体験を購入していることからも明らかです。それが、いまの時代の商品です。そういった豊富な商材を持ち合わせているのが、地方です。
日本各地には、それぞれ独特の文化があり、個々の価値を持っています。私はそれを「文化資源」と呼んでいます。文化資源は歴史と伝統がつくりだし、日々、堆積していくものです。それが熟成し、やがて発酵していきます。それは、独特の匂いを発しますが、その癖のある匂いも徐々に芳醇な香りとなって深みのある味わいを醸し出していきます。その香りこそが地域に眠る財産であり、その価値をヨソモノが発見してくれます。日本はすでに成長期を終えた社会です。これからの高齢化や人口減少を考えたとき、ヨーロッパのような熟成感のある滅び方を考える必要があります。国民国家の歴史はたかだか2世紀余り、国家が滅びても都市は生きのびるでしょう。京都はそういう生きのびる都市のひとつでしょう。
これまでのやり方では通用しない、ギアチェンジしなければならないのに、今の日本にはそのための動機付けとなる危機感が不足しているのではないでしょうか。戦略的な視点から、利用可能な文化資源を最大限活用した地方や都市の経営を推進していってもらいたいものです。
[2015年8月1日発行『構想の庭』第1号  再世界は、もはや「グローカル」という新しい時代に突入していると思います。今、物ではなく体験が売れる時代です。それは、訪れた観光客が文化体験を購入していることからも明らかです。それが、いまの時代の商品です。そういった豊富な商材を持ち合わせているのが、地方です
 

 

小宮山宏(こみやまひろし)

1944年栃木県生まれ。東京大学工学部卒。東京大学総長退任後、2009年4月から三菱総合研究所理事長、東京大学総長顧問に就任。プラチナ構想ネットワーク会長を務める。専門は化学システム工学、地球環境工学、知識の構造化。著書に『低炭素社会』(幻冬舎)、『「課題先進国」日本』(中央公論新社)など多数。

 

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2017年7月27日

ファインダー越しに見える「美」のエネルギー 遠藤湖舟

 


 

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私はもともと科学者になりたかった。科学者は、日々、実験や観察を行い、経過を見つめることが仕事です。しかし、それは科学の分野だけではなく、事の本質を捉える上で、とても大切なことだと思っています。しっかりと対象を凝視しないと本質は見えてきません。

 

そうした理由から、本質を見るための一つの手段として写真を撮っています。日々の暮らしの中では、様々な事象が流れていきます。その中、大切なものも見逃してしまっているのではないかと思っています。だから、あえて一旦、時間を止めて物事をじっくりと考えることも必要なのです。人の目は、すべて主観的です。だから、写真で客観的に瞬間を捉え対象を見つめるという複眼的視点が大切だと思っています。

写真一点からどの方向へいくかは、見た人本人の想像力に委ねられています。実際に写真展を訪れてくださった方の中には写真を見て涙された方もいらっしゃいました。人類に限らず、地球上にある生命体は、すべて太陽がもたらしてくれています。写真を見て涙されたということは、皆さんの中にある感性が、無意識にそれを捉えたのではないかと思います。


201641日発行『構想の庭』第2  再録]

世界は、もはや「グローカル」という新しい時代に突入していると思います。今、物ではなく体験が売れる時代です。それは、訪れた観光客が文化体験を購入していることからも明らかです。それが、いまの時代の商品です。そういった豊富な商材を持ち合わせているのが、地方です。
日本各地には、それぞれ独特の文化があり、個々の価値を持っています。私はそれを「文化資源」と呼んでいます。文化資源は歴史と伝統がつくりだし、日々、堆積していくものです。それが熟成し、やがて発酵していきます。それは、独特の匂いを発しますが、その癖のある匂いも徐々に芳醇な香りとなって深みのある味わいを醸し出していきます。その香りこそが地域に眠る財産であり、その価値をヨソモノが発見してくれます。日本はすでに成長期を終えた社会です。これからの高齢化や人口減少を考えたとき、ヨーロッパのような熟成感のある滅び方を考える必要があります。国民国家の歴史はたかだか2世紀余り、国家が滅びても都市は生きのびるでしょう。京都はそういう生きのびる都市のひとつでしょう。
これまでのやり方では通用しない、ギアチェンジしなければならないのに、今の日本にはそのための動機付けとなる危機感が不足しているのではないでしょうか。戦略的な視点から、利用可能な文化資源を最大限活用した地方や都市の経営を推進していってもらいたいものです。
[2015年8月1日発行『構想の庭』第1号  再世界は、もはや「グローカル」という新しい時代に突入していると思います。今、物ではなく体験が売れる時代です。それは、訪れた観光客が文化体験を購入していることからも明らかです。それが、いまの時代の商品です。そういった豊富な商材を持ち合わせているのが、地方です
 

 

遠藤湖舟(えんどうこしゅう)

1954年長野県生まれ。早稲田大学理工学部応用化学科卒業。アートシーン、人物、風景、天体写真など幅広い撮影を手掛ける一方、デザイン、コピーライトなど総合的なアート表現を行う。2015年、日本橋髙島屋を皮切りに京都、大阪、横浜の髙島屋で大規模写真展を開催、約8万人を動員した。

 

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2017年7月26日

「社会構想」というアポリアを抱きながら 望月照彦

 


 

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「哲学と思想の不在」がすべての根本原因とつながっています。フランスのベルナール・スティグレールという哲学者は、産業革命以降の産業技術の難問が今でも続いているといいます。

産業革命で機械化が進んだということは、人間が持っている「創る力」を失わせてしまうことにつながるのではないかという疑念を持っています。

日本の社会構造において大きな力を持っているのが暗黙知です。職人の極みである精巧な技能は「暗黙知」という力で、これは機械がどれほど発達しようとも神に代わるような人間の力にはかなわない。

その暗黙知がなくなってしまったら、未来の文明が崩壊してしまうと言っても過言ではありません。個々のアイデンティティーはもがき苦しんだ末に生まれてくるものです。つまり、個人的経験が非常に大切になります。しかし、今はその実体験の苦しみも失われています。

京都には、東京にはない「哲学の道」があります。

アポリアに対して解決の糸口を探っていくためにも、日本の多くの人が自ら考え、自分で構想力を培っていくような「道」や「庭」が大切だと私は思っています。そこで自分自身のアポリアについて深く考えるようなモチベーションを作ることが大切なのです。

 

[2015年8月1日発行『構想の庭』第1号  再録]

世界は、もはや「グローカル」という新しい時代に突入していると思います。今、物ではなく体験が売れる時代です。それは、訪れた観光客が文化体験を購入していることからも明らかです。それが、いまの時代の商品です。そういった豊富な商材を持ち合わせているのが、地方です。
日本各地には、それぞれ独特の文化があり、個々の価値を持っています。私はそれを「文化資源」と呼んでいます。文化資源は歴史と伝統がつくりだし、日々、堆積していくものです。それが熟成し、やがて発酵していきます。それは、独特の匂いを発しますが、その癖のある匂いも徐々に芳醇な香りとなって深みのある味わいを醸し出していきます。その香りこそが地域に眠る財産であり、その価値をヨソモノが発見してくれます。日本はすでに成長期を終えた社会です。これからの高齢化や人口減少を考えたとき、ヨーロッパのような熟成感のある滅び方を考える必要があります。国民国家の歴史はたかだか2世紀余り、国家が滅びても都市は生きのびるでしょう。京都はそういう生きのびる都市のひとつでしょう。
これまでのやり方では通用しない、ギアチェンジしなければならないのに、今の日本にはそのための動機付けとなる危機感が不足しているのではないでしょうか。戦略的な視点から、利用可能な文化資源を最大限活用した地方や都市の経営を推進していってもらいたいものです。
[2015年8月1日発行『構想の庭』第1号  再世界は、もはや「グローカル」という新しい時代に突入していると思います。今、物ではなく体験が売れる時代です。それは、訪れた観光客が文化体験を購入していることからも明らかです。それが、いまの時代の商品です。そういった豊富な商材を持ち合わせているのが、地方です
 

 

望月照彦(もちづきてるひこ)

1943 年静岡県静岡市(元清水市)生まれ。1979年望月照彦都市建築研究所を設立。多摩大学経営情報学部教授、 同大学院教授を経て、現在、構想博物館の館主を務める。エッセイスト。『商業ルネッサンスの時代』(ダイヤモンド社)、『都市民俗学講座全5巻』(未来社)、『センス・オブ・ハピネス』(日本紀行)など多数。

 

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2017年7月25日

再編集せよ、日本の伝え方

 

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 「2020年に4000万人、2030年に6000万人」という数値は、

オリジナリティを提げた日本の伝え方を革新する再編集の時代。

 

提供者論理のアドバタイジングという発想から、

新たな視点で「JAPAN ISLANDS & SEA」を見直す。

 

6800余りの島々と海洋を抱えた海文化の国。

周囲が海に囲まれ、国土の約7割が森林と稀有な環境。

 

しかし、どのエリアも足元の財が整理されずに

温泉と美味しい魚というステレオタイプな訴求が常態化している。

 

地域の一つひとつに個性があり、

その魅力を組み立てられないまま、

ただ「観光客に来て欲しい」ではない。

 

日本の新しい学び方、そして魅力の伝え方を

別枠で捉えるのではなく、共に財を掘り起こしていく。

 

そして、訪問に値する価値を発見し、磨いていく。

伝え方の革新こそ、今の日本に求められている。

 

日本の旅の魅力を考える「トレジャーアイランドジャパン」の

プレゼンテーションブックを現在、執筆中。

 

乞うご期待ください。

 

 

2017年7月25日

日本の滅び方 上野千鶴子

 


 

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世界は、もはや「グローカル」という新しい時代に突入していると思います。今、物ではなく体験が売れる時代です。それは、訪れた観光客が文化体験を購入していることからも明らかです。それが、いまの時代の商品です。そういった豊富な商材を持ち合わせているのが、地方です。
日本各地には、それぞれ独特の文化があり、個々の価値を持っています。私はそれを「文化資源」と呼んでいます。文化資源は歴史と伝統がつくりだし、日々、堆積していくものです。それが熟成し、やがて発酵していきます。それは、独特の匂いを発しますが、その癖のある匂いも徐々に芳醇な香りとなって深みのある味わいを醸し出していきます。その香りこそが地域に眠る財産であり、その価値をヨソモノが発見してくれます。日本はすでに成長期を終えた社会です。これからの高齢化や人口減少を考えたとき、ヨーロッパのような熟成感のある滅び方を考える必要があります。国民国家の歴史はたかだか2世紀余り、国家が滅びても都市は生きのびるでしょう。京都はそういう生きのびる都市のひとつでしょう。
これまでのやり方では通用しない、ギアチェンジしなければならないのに、今の日本にはそのための動機付けとなる危機感が不足しているのではないでしょうか。戦略的な視点から、利用可能な文化資源を最大限活用した地方や都市の経営を推進していってもらいたいものです。
[2015年8月1日発行『構想の庭』第1号  再録]
世界は、もはや「グローカル」という新しい時代に突入していると思います。今、物ではなく体験が売れる時代です。それは、訪れた観光客が文化体験を購入していることからも明らかです。
それが、いまの時代の商品です。そういった豊富な商材を持ち合わせているのが、地方です。
日本各地には、それぞれ独特の文化があり、個々の価値を持っています。私はそれを「文化資源」と呼んでいます。文化資源は歴史と伝統がつくりだし、日々、堆積していくものです。
それが熟成し、やがて発酵していきます。それは、独特の匂いを発しますが、その癖のある匂いも徐々に芳醇な香りとなって深みのある味わいを醸し出していきます。その香りこそが地域に眠る財産であり、その価値をヨソモノが発見してくれます。
日本はすでに成長期を終えた社会です。これからの高齢化や人口減少を考えたとき、ヨーロッパのような熟成感のある滅び方を考える必要があります。国民国家の歴史はたかだか2世紀余り、国家が滅びても都市は生きのびるでしょう。京都はそういう生きのびる都市のひとつでしょう。
これまでのやり方では通用しない、ギアチェンジしなければならないのに、今の日本にはそのための動機付けとなる危機感が不足しているのではないでしょうか。
戦略的な視点から、利用可能な文化資源を最大限活用した地方や都市の経営を推進していってもらいたいものです。
[2015年8月1日発行『構想の庭』第1号  再録]

 

 


 

上野千鶴子(うえの ちづこ)

1948 年富山県生まれ。京都大学大学院社会学博士課程修了。社会学博士。コロンビア大学客員教授や東京大学大学院人文社会系研究科教授を歴任。2011 年4 月から認定NPO 法人ウィメンズアクションネットワーク(WAN)理事長。専門は女性学、ジェンダー研究。著書に『ケアのカリスマたち』(亜紀書房)など多数。

 

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2017年7月24日

ノックしないドアは開かない 水野誠一

 


 

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今こそ、もう一度、経済概念を見直す時が来ていると思います。

きっと、誰もがあらゆるところで矛盾があることを頭ではわかっていると思います。しかし、根本的な部分を腹でわかっていないと本当の理解は得られません。そこから脱却できないのは、過去の成功体験が邪魔をしているからでしょう。その成功体験を捨てることが大切なことです。

成熟期には「似て非なるものが通用しない」という特徴があると思います。しかし、たとえば、シニア向けの商品開発を行っている企業は、蓋を開けてみるとほとんど「似て非なるもの」です。

その上で、今、戦略、構想、マーケティング、ターゲッティング、それらすべてに「したたかさ」が求められます。シニアを対象にした商品も、コピペした商品であれば、すぐに見抜かれてしまいます。その本物であるかどうかという違いは、とても感覚的なことですが、それが今、強く求められていることです。

私の妻の台詞で印象的な言葉があります。私がアイデアを話したり、批判したりする言葉を聞いて「ノックしないドアは開かない」と言われました。

結局、何事も自ら実践していかなければならないということです。しっかりと行動に移し、社会を自ら変えていくという気概を持っていくことが何よりも大切なことなのです。

[2015年8月1日発行『構想の庭』第1号  再録]

この共感する人が多いほど価値がある情報は「情緒」と表現するのがいいと思います。日本は情報では出遅れたかもしれませんが、「情緒」では世界でも有数の国です。これが魅力ある国の基本になると思います。
[2015年8月1日発行『構想の庭』第1号  再録]

 


 

水野誠一(みずのせいいち)

1946 年東京生まれ。西武百貨店社長、米国ネットスケープ・コミュニケーションズ社顧問、慶応義塾大学総合政策学部特別招聘教授を経て、1995 年参議院選挙に当選。同年(株)インスティテュート・オブ・マーケティング・アーキテクチュア(略称:IMA)を設立。現在、地域と流通企業のブランディングプロデュースを手がける。

 

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2017年7月23日

気持ちを突き動かす「ファッション化」の未来 浜野安宏

 


 

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人類は都市文明によって、欠乏から解放されました。人類は欲望のまま生きていく自由を手に入れました。次に何をしようかという変化を生み出すのが欲望です。

それを「ファッション」と表現し、現代社会をファッション化社会と呼んでいます。そして、変化が産業を育てていきました。だから、すべての都市はファッション都市となるような言い方をしています。

私も含め、古い社会体質の中では自分の個性というか、願望をもっと強く表に出して創造的に生きたいが、それを抑えて生きていかなければなりません。

私の場合、その葛藤を釣りで代替えしてきました。しかし、本当は自分を表現したかったのだと思います。それは、祇園の高級お茶屋でランチを始めた若女将や泉岳寺の建築紛争で立ち上がった女性、みんな自分を表現したいと思っているのではないかと思います。たまたま私の場合、それが映画でした。私が表現したかった世界観を『さかなかみ』であらわしたのです。

その根底にあるのは、一人ひとりが熱意を持って何かに打ち込めば、必ず誰かの気持ちを突き動かすことになるという想いです。

混沌とした今の日本社会を見ていると、その熱意がどこか冷め切ってしまっているように感じてしまい、残念に思えてなりません。

誰もが「ファッション化」していける社会になってくれることを願っています。

[2015年8月1日発行『構想の庭』第1号  再録]

日本が乗り遅れた情報社会の情報には2種類あります。一つは、新聞のニュースのように、知る人が少ないほど価値がある情報です。もう一つは、知る人が多ければ多いほど価値がある情報です。それはベストセラーの小説やミリオンセラーの音楽です。一人だけが素晴らしいと評価してもあまり価値はなく、多くの人が素晴らしいと評価すれば価値が増える情報です。
この共感する人が多いほど価値がある情報は「情緒」と表現するのがいいと思います。日本は情報では出遅れたかもしれませんが、「情緒」では世界でも有数の国です。これが魅力ある国の基本になると思います。
[2015年8月1日発行『構想の庭』第1号  再録]

 


 

浜野安宏(はまのやすひろ)

1941年、京都生まれ。株式会社浜野総合研究所代表取締役社長。FROM-1st、東急ハンズ、AXIS、QFRONT、青山AOなどを総合プロデュース・商業コンサルタント、その他多数プロデュース。昨年、初の映画監督作品「さかなかみ」を公開。著書に『ファッション化社会』『質素革命』『浜野安宏想いの実現』ほか多数。

 

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2017年7月22日

情報社会から「情緒社会」への転換 月尾嘉男

 


 

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世界の人々に日本の魅力を知ってもらうことから始めなければならないと同時に、日本人は自国の文化に自信を持つべきです。

ダグラス・マグレイは文化力を「グロス・ナショナル・クール(GNC)」と表現しましたが、「グロス・リージョナル・クール(GRC)」と表現するほうが正しいと思います。

たとえば、「和食」という概念には、京料理や加賀料理など地域ごとの食文化もすべて含まれています。しかし、それぞれ違っています。工芸品についても、日本の伝統工芸品はなく、竹細工や漆器は地域ごとの伝統工芸品です。

国という枠組みを越えて地域の人たちが自分たちの特徴が魅力であるということを認識する必要があるのです。日本が乗り遅れた情報社会の情報には2種類あります。

一つは、新聞のニュースのように、知る人が少ないほど価値がある情報です。もう一つは、知る人が多ければ多いほど価値がある情報です。それはベストセラーの小説やミリオンセラーの音楽です。一人だけが素晴らしいと評価してもあまり価値はなく、多くの人が素晴らしいと評価すれば価値が増える情報です。

この共感する人が多いほど価値がある情報は「情緒」と表現するのがいいと思います。日本は情報では出遅れたかもしれませんが、「情緒」では世界でも有数の国です。これが魅力ある国の基本になると思います。

[2015年8月1日発行『構想の庭』第1号  再録]

日本が乗り遅れた情報社会の情報には2種類あります。一つは、新聞のニュースのように、知る人が少ないほど価値がある情報です。もう一つは、知る人が多ければ多いほど価値がある情報です。それはベストセラーの小説やミリオンセラーの音楽です。一人だけが素晴らしいと評価してもあまり価値はなく、多くの人が素晴らしいと評価すれば価値が増える情報です。
この共感する人が多いほど価値がある情報は「情緒」と表現するのがいいと思います。日本は情報では出遅れたかもしれませんが、「情緒」では世界でも有数の国です。これが魅力ある国の基本になると思います。
[2015年8月1日発行『構想の庭』第1号  再録]

 


 

月尾嘉男(つきおよしお)

1942年愛知県生まれ。1965年東京大学工学部卒業。名古屋大学工学部教授、東京大学工学部教授、総務省総務審議官などを経て、2003年に東京大学名誉教授。著書に『100年先を読む―永続への転換戦略』(モラロジー研究所)、『日本が世界地図から消滅しないための戦略』(致知出版社)など多数。

 

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2017年7月21日

新書『構想の庭』発刊によせて 谷口正和

 


 

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この度、『構想の庭』の創刊号並びに第二号を取りまとめた新書版『構想の庭』を発刊いたしました。

「1000年の視座から次なる日本、アジア、そして地球社会への思考のヒントを提言すること」を狙いに12人のオピニオンから頂いたメッセージから、どのような未来が見えてくるのでしょうか。

自らの存在を超え、新たな価値と連帯していく潮流は、相対化された価値軸ではなく、往来しながら複合する価値に加えて、先行的な価値軸を作り出し、新たな気づきの連鎖をもたらします。

未来を照らす言葉の片鱗から、次なる生き方が皆様にわずかながらでも視点・視座を届けることができたとすれば、『構想の庭』が、果たすべき役割を少しは担えたのではないかと思っています。

本日から、登場いただいたオピニオンの方々のメッセージを掲載していきます。お一人お一人の言葉から「構想する未来」を感じていただければ幸いです。

 

 


 

谷口正和(たにぐちまさかず)

京都出身のマーケティング・コンサルタント。株式会社ジャパンライフデザインシステムズ代表取締役社長、立命館大学大学院経営管理研究科教授(2003年4月〜2013年3月)。京都学芸大学(現:京都教育大学)付属小・中学校、京都府立鴨沂高等学校、武蔵野美術大学造形学部産業デザイン学科を卒業。1981年7月 株式会社ジャパンライフデザインシステムズを設立し様々な企業のマーケティング、経営コンサルを行っている。またマーケット情報分析誌『IMAGINAS(イマジナス)』の発行。商業、観光、産業の経営を学ぶ「文化経済研究会」を主宰。著書に、『文化と芸術の経済学』(ライフデザインブックス)など多数。

 

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2017年7月18日

気づきの偶像

 

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私が描いたイラストです。

 

現在、日本での高齢化と共に課題とされている単身世帯の急増。

そもそも、人は一人で生まれ死んでいく性。

一人住まいを嘆くのではなく、個々が連鎖し、新しい家族観として、疑似家族の台頭が予想できる。

婚姻によって結ばれた関係も、生きる意味に置き換えれば生涯独身とも言える。

 

すでに6569歳の世代が、日本の全人口の中で一番多く、2024年には全国民の三人に一人が65歳以上に。

そして2035年には、独身が5割に達すると言われている中、一人が大きな潮流となっている。

 

一人ひとりが丁寧に時代を見つめ、もう一度、その貢献すべき単位を量から質へ転換していく必要がある。

 

その特徴を読み解き、個人化の流れをどう理解すべきなのか。

 

個人の課題解決が、社会の課題解決の柱となる。

今の時代をしっかりと見据える着眼で行動を変えたい。

 

過去に縛られたものは未来を語らない。

理想への挑戦に躊躇すれば、やがて滅びる。

 

1000年の変化を生きてきたというDNAが、私たちの中に流れていることを忘れてはならない。

2017年7月11日

ジャコメッティ キューブと顔

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この本はパルコ出版で、1995年に発行されたものである。

 

著者は、ジョルジュ・ディディ=ユベルマン。

1953年生まれ。パリの社会科学高等研究院で「視覚世界の人類学」を担当された人物。

 

パリの現代美術館で開催のジャコメッティ展のために出版された書籍で、

それを、私の義理の弟である石井直志が翻訳を手がけた書籍。

しかし、その後、肝癌を患い、48歳という若さで亡くなってしまった。

 

ジャコメッティが今、再び注目され、エキシビジョンイヤーとして広がりを見せている中、

早稲田大学文学部でフランス文学の教授を務めていた彼が残した成果の一つと言える。

 

20世紀、フランスは芸術の階段を駆け上っていく時代。

重要なステップとして、キューブという概念をジャコメッティが作品の中で表現した。

球体に込められた哲学的思考は、シンボライゼーションとして思考のバックヤードが潜在化している。

 

彼を評価したのはジャン=ポール・サルトル。

芸術は本来、表現の構造を超え、その内面で何を伝えようとしているのかが、

ジャコメティが登場したあの時代の思想と哲学に対するプレゼンテーションとなった。

 

絵の上手い下手ではなく、そこに込められた価値に気づいて欲しい。

 

そのコアとなる思考を炙り出すためにジャコメティの翻訳を引き受け、

石井直志氏の翻訳にも、丁寧に思考された多面的な相互批評で成り立つ。

その幾何学的な思考の足跡は、ジャコメティ研究を立体化している。

 

石井直志氏は、政府交換留学生として、ソルボンヌに学び、

その結果、歴史と生活に匂いを持ち帰ったフランス文学者として何を紹介するかを私は注目していた。

 

真面目な男だった。

奥さんはフランス人で、彼女のサポートも非常に理解のあるものであり、

思い出を込めて、時代の流れがジャコメティに来ている今、身内の話であるが、皆さんに紹介できて嬉しい。

 

出版:パルコ出版

定価:3600円+税

2017年7月 6日

歴史の証人 ホテル・リッツ

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東京創元社の編集長であり、専務でもある井垣真理さん。

 

父が東京創元社で編集チーフしていた時に若手の仲間であった彼女が

総ヘッドになったという感激も去ることながら、

新刊となる『歴史の証人 ホテルリッツ』に東京創元社らしい美意識が感じ取れた。

 

ナチスの占領下のパリ、そして解放時のパリの姿、その歴史舞台そのものがホテルリッツだった。

その生々しいまでのエピソードには女性記者までを総動員した戦争の長い影をリポートしている。

 

著者は『シャネルNo.5の秘密』を執筆した

ノンフィクション作家ティラー・J・マッツェオ。翻訳を羽田詩津子さんが務められた。

 

パリの写し鏡であるホテルリッツが織り成すリアルなシナリオをご紹介する。

 

出版社:東京創元社

価 格:2500円+税

2017年7月 5日

ベル・エポックの肖像

 

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先般、フランス文学者であり、ジャーナリストでもある高橋洋一さんのご訪問を受けました。

 

高橋さんはジャンコックトーの研究家。

文化社会学・比較文化を専門とされています。

 

私の父が、東京創元社の編集者また、翻訳者としてでジャン・コクトー全集を企画する中、

高橋さんにも声をかけ、ご一緒いただいたと、当時のお話を伺いました。

そして生まれた『ジャン・コクトー全集』全8巻は日本翻訳家協会から最高賞をいただいた。

 

私も、父の影響を受け、マルチアーティストであるジャン・コクトーを強く興味を持つに至っている。

いづれ、私なりの視点でまとめてみたいと思っているところです。

 

その高橋さんが、小学館から出されたのが、この『ベル・エポックの肖像』。

 

パリを中心とした文化的に爛熟した人間模様は時代の象徴するもの。

その時代を生きた人物として、エミール・ガレやマルセル・プルースト、トートレック、ミュシャ、ヴィクトル・ユーゴー、そして大女優のサラ・ベルナール。その一つひとつのレポートから、ジャン・コクトーの姿が蘇り、美しき時代が織り成す情景が浮かび上がります。

 

19世紀から、20世紀へ、そして次なる社会へ。

回転しながらも、新たな成熟期を迎える今、どのような未来が待っているのか。

 

多彩な美意識が彩り、未来へのヒントとなる21世紀の成熟を、オリエンタルな美意識を複合した

東京には、どのような新しい物語が紡ぎ出されていくのか。

 

高橋洋一さんからいただいた「感性の系譜」を紹介します。

 

出版社:小学館

価 格:2300円+税

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