江戸のデザイン: 2010年12月アーカイブ

暮れも押し迫った12月22日、江戸美学研究会は「浮世絵セミナー①
画狂人北斎」を開催しました。講師に浅草の木版画廊「六華庵」の島田
賢太郎氏をお迎えしました。島田氏は北斎研究をされており、2010年
「北斎誕生250年画狂人北斎」をマリア書房から出版されています。

 テキストを用意して頂きました。

ukiyoeseminar1.JPG


セミナーの様子。皆さん真剣に聞いてます。
北斎84歳の時に描かれた「田植図」の説明から始まりました。
浮世絵のヴィジュアル的な美しさだけでなく、絵の中の我々の身近な生活
につながる情報を歴史的背景を交えて説明頂きました。
「北斎の物事を見つめる心が美しい」と語る島田氏。

ukiyoeseminar2.jpg


そして北斎誕生日を示す「大黒天図」や70年間の画号の変遷など興味
深い内容が続きました。

北斎代表作、「冨獄三十六景 神奈川沖浪裏」をご披露頂きました。
摺師長尾直太郎氏の刷った貴重な絵です。
今回はお茶と上野うさぎやの和菓子を食べながらのセミナーとなりました。

ukiyoeseminar3.JPG


「写楽」を用いて多色刷り版画の制作工程を説明する島田氏。
摺師は1日200枚を刷るそうです。
次の日は色の調合が微妙に変わるので200枚刷るそうです。

ukiyoeseminar4.JPG


江戸美学研究会会員の方々からの質問も鋭いものばかり。
多くの質問が寄せられ、予定より30分を超えました。

初めてのセミナーとなりましたが、小さいけれど中身が面白く、
江戸美学研究会らしいものになったと
思います。
2011年は定期的にテーマを絞ったセミナーやイベントを開催します。
是非、皆様のご参加をお待ちしております。

また、師走のお忙しい中、7名の会員の方々に来て頂き感謝しております。
ありがとうございました。

それでは皆様良いお年をお迎え下さい。

 
□年末年始の江戸帖のお申込について

12月28日より1月4日までお休みとさせていただきます。
詳しくは下記のサイトよりご確認下さい。

http://www.jlds.co.jp/edotyo/

今回は、日本唯一の楊枝専門店「さるや」の商標です。
江戸時代、「さるや」は何軒もあり、
楊枝見世の屋号は 「さるや」が決まりのようになっていて、
どこもみな猿を看板にしていました。
とくに、浅草寺の境内では、楊枝屋が江戸中期に83軒、
文化末期(1815年)には249軒もあったことから
その普及ぶりが知られます。
「さるや」の店名の由来は元禄時代の文献『人倫訓蒙図彙』に
「猿は歯が白き故に楊枝の看板たり」という説と、
柳亭種彦の『柳亭雑記』に大通で、小猿を背にして、
楊枝をけずりながら売っていたという説があるということです。

下の右図にその風景が描かれています。


日本橋てりふり町(現在の小舟町1,8,9,15番地南側道路辺り)の
「さるや」は、
上の商標にあるように、化粧品・小間物も販売していたようです。
この店がいまも現存する日本唯一の楊枝専門店「さるや」で、
宝永元年(1704年)に創業したので300年も続いている老舗です。


錦絵に描かれているのは当時の「さるや」の店先です。
お供を連れ、華やかな振りそでに着かざった武家の子女や
あでやかな町場の女性たちが店先を賑わしています。

暖簾に円形フォルムの商標らしきものが入っています。

商標は、時代の変遷と共に変化し、
さまざまな使われ方をしてきたようです。

下のものはさるやの店名が入ったものです

現在の「さるや」の商標は、縁起物の「括猿」が使われています。
「括猿(くくりざる)」とは、
布に綿を入れて作った猿の縫いぐるみで、
着物・幟のぼりなどや絵馬堂に下げてお守りにしたり、
念願の成就を祈ったりしたものだそうです。




この商標は、猿の顔をイメージして
近年になって創作されたものでしょう。
猿の目の周りのイメージを同心円で表現しています。
また、口元や頭の毛で猿の特徴をシンプルに表し
個性的な商標に仕上げています。




さて、さるやの楊枝は「金千両」と
書かれた贈答用の桐箱が有名です。
この金千両は代々の当主が一年がかりで
一つ一つ書き上げるのが習わしだそうです。
来年の干支は、「卯」ですが、この「金千両」と
セットのものがありました。

これで、いいお正月いい年を
迎えることができそうです。



 

最近の記事
バックナンバーを見る
バックナンバーを見る