江戸のデザイン: 2010年11月アーカイブ

江戸の商標、5回目は福神漬で有名な「酒悦」です。
酒悦の初代創業者「野田清右衛門」は、関ヶ原の戦いが終わり
徳川政権が江戸に幕府を置き社会が安定し始めた頃、
江戸にやってきました。
延宝3年(1675年)本郷元町に山田屋という店を構え
海産物を商っていました。
やがて店を寛永寺の門前町である上野池之端に移し、
「うに」「このわた」「のり」などを扱うと共に
香煎(大麦・米などを炒って粉としたもので、
白湯にふりかけて飲むもの、焦がしともいう)の販売でも
その名を知られ、上野近辺の寺々に出入りしていました。
商品は良質のものを扱い、更に吟味して納めたので
町中の人々に評判になったそうです。
特に東叡山、輪王寺の一門を総領する白川宮から大変高く評価され
白川宮に「酒悦」と言う名称をいただいたといわれています。

 

 

上記の商標の中央上部には商売繁盛を願う砂金袋が描かれていて、
この砂金袋が同店の商標の原点である事がわかります。

時代が明治に移り変わっても「酒悦」は益々盛況したそうです。
「福神漬」は十五代野田清右衛門によって明治10年頃発明されました。
この時の商標が下図のもので砂金袋の中には
社名である「酒悦」の文字が入っていて
商標としてのベースが出来ています。

 

 

現在の商標は、ビジュアルコンセプトである
砂金袋のフォルムを整え左右対称で
よりボリューム感のあるデザインにしています。
社名である「酒悦」は、
明治期の「悦酒」の文字位置を現代読みに変更し、
また読めるようにとルビ扱いで、
ひらがな表記も追加されています。

 

 

商標と社名ロゴによる店頭看板や暖簾の表情に
江戸時代から続く老舗のデザインが見てとれます。

 

追記
「福神漬」の名前の由来は原料が7種の野菜であることから
不忍池にある弁天様の七福神に因んで当時の流行作家「梅亭金鵞」が
名付けたと言われています。
また、「福神漬」は大変美味しいことからおかずがいらないので、
知らず知らずの内にお金がたまる縁起の良い漬物であり、
漬ける時に福の神も一緒に漬けているのだろうということで
「福神漬」と呼ばれるようになったとする別説もあります。
そして、カレーライスに福神漬が添えられるようになったのは
帝国ホテル、または資生堂パーラーが最初であるという説も有りますが、
本当のところは明治35年から36年頃、日本郵船のヨーロッパ航路の船の食堂で
出されたカレーライスに福神漬が添えられたのが、どうやら最初だったようです。


江戸美学研究会では『江戸帖 EDO DESIGN DIARY』を
制作、販売しています。
詳しくはコチラをご覧ください。⇒ http://www.jlds.co.jp/edotyo/

また、江戸美学研究会で一緒に江戸を楽しみ、

一緒に研究してくださる方の
メンバー登録もお待ちしております。
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11月3日、文化の日は彼方此方でイベントが開催された。
数あるイベントの中でも江戸にまつわるものも多く、
浅草では時代祭、青山の東京デザイナーズウィーク2010では
江東区伝統工芸会がレクサスにて
「トーキョーアート&クラフト展」を開催。
六本木ではTOKYO URBAN LIFE 2010(今月末迄)では
「ECOごころ、EDOごころをご一緒に」を開催。
TSUTAYA ROPPONGI TOKYOにて
江戸美学研究会もトークイベントの機会をいただいたので
手前味噌ではあるが、今回はその様子をご報告。

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お茶を飲みながらくつろぐ人、待ち合わせをする人、
お目当ての本を探す人……、
祭日の夕刻ということもあり、店内はかなりの賑わい。
しかし、何処の何方が聴いてくださるのか
わからない状況はかなり
アウェイ。
用意されたテーブルに竺仙さんの浴衣地、
江戸小紋をセットし、定刻を待つ。
テーブル脇には美しくディスプレーされた『江戸帖』と
竺仙オリジナルの来年の干支手拭い。
感謝感激。
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今回、『江戸帖』のカバー&本編のビジュアルにご協力いただいた
竺仙五代目当主 小川文男さまにゲストとしてお越しいただいた。
お着物で……、という我が儘リクエストにもお応えいただき
、恐縮至極。
そして反物までお持ちいただき、実際のものを見ながら
ご来店の皆さまには、話を聴いていただく形とした。
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江戸から伝わるデザインの力強さや勢いは実際に見なければわからない。
無駄を削ぎ落としたマイナスの美学……、
それが江戸の
「粋」といわれるもののひとつ。
背景には庶民の生活環境であったり、
幕府より贅沢を禁じられていたりなどさまざまあり、
その中で楽しみを季節や娯楽、信仰などに見いだし、

創造力を発揮したのが江戸である。
そうして生まれたデザインは世界に誇ることのできるものであり、

生活は現代が求める循環型のエコ社会だったのだ。
小川氏には、そんなことも織り交ぜながらお話いただいた。
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なんの気なしに入店された方も足を止めていただいたり、
お茶をしながら、耳を傾けていただいたり……、
頷きながら聞き入ってくださった方、
ありがとうございました。
そして小川さま、ありがとうございました。
不慣れなため短い時間、駆け足で終わってしまいましたが、
この続きは江美研のセミナーにて、ということで。

TSUTAYA ROPPONGI TOKYO
にお立ち寄りの際には、
『江戸帖』と干支手拭いを手に取って見ていただければ幸いです。
当日は、江美研メンバー募集の告知をすっかり忘れてしまってました。
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竺仙さんの干支手拭いの柄をご覧になりたい方は
コチラ⇒
http://www.chikusen.co.jp/whats/

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