江戸のデザイン: 2010年10月アーカイブ

にんべんの創業者・初代 高津伊兵衛は、
延宝7年(1679)に勢州(現三重県)四日市で生まれました。
元禄4年(1691)に江戸に上り、
日本橋小舟町の雑穀商「油屋太郎吉」で年季奉公をしました。
そして、江戸元禄12年(1699年)、東京・日本橋で戸板を並べて
鰹節と塩干類の商いを行ったのが、にんべん創業の始まりです。

宝永元年(1704)、小舟町に鰹節問屋を開業した後
瀬戸物町に移りました。
翌年には伊兵衛と改名し、屋号を「伊勢屋伊兵衛」としました。
「にんべん」という社名は、
初代高津伊兵衛の屋号、伊勢屋伊兵衛に由来します。
苗字と名前の「伊」につく「イ(にんべん)」に、
商売を堅実にするためのお金(かね尺の形)を合わせ、
カネにんべんを暖簾印にしたところ、
江戸町民からは「伊勢屋伊兵衛」ではなく、
いつからか「にんべん」と呼び始められたのが
社名の始まりだと言われています。
「にんべん」は江戸の町民から親しみを込めて
つけられた名前なんですね。


にんべんの商標は時代と共に「イ」の書体形状は
太く変わってきていますが
かね尺の中に「イ」を入れるコンセプトは継続されています。
文字を文様化するのは古くからおこなわれていますが
これは、訴求力の強さ、意味の明快さを求めて
図案化されていたと考えられます。



上の写真は、日本橋本店の資料室に保存されている
江戸時代のにんべんのお店。

江戸時代末期(1830年)から発行している世界最古の商品券。
この商品券は、鰹節のフォルムをした銀の薄板で、
表面には金額を記し、裏面には発行店のにんべんの刻印をしてあります。
この券を使って鰹節との交換は、老若男女の別なく行われました。
また、銀の薄板であったため金属価値が認められ
江戸の街ではたいそう尊重されていたそうです。


これは、現在の日本橋本店の最後の店頭風景です。
と言うのも10/21で閉店し
3年後に新本店としてお目見えするそうです。

本店のすぐ隣のCOREDO室町1階に
10/28 オープンするのが新店舗のにんべんで、
ここでは「日本橋だし場・DASHI  BAR」として
目の前鰹節を削りだしをとって提供する
面白い新サービスをするそうなので楽しみです。
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