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2017年7月26日

「社会構想」というアポリアを抱きながら 望月照彦

 


 

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「哲学と思想の不在」がすべての根本原因とつながっています。フランスのベルナール・スティグレールという哲学者は、産業革命以降の産業技術の難問が今でも続いているといいます。

産業革命で機械化が進んだということは、人間が持っている「創る力」を失わせてしまうことにつながるのではないかという疑念を持っています。

日本の社会構造において大きな力を持っているのが暗黙知です。職人の極みである精巧な技能は「暗黙知」という力で、これは機械がどれほど発達しようとも神に代わるような人間の力にはかなわない。

その暗黙知がなくなってしまったら、未来の文明が崩壊してしまうと言っても過言ではありません。個々のアイデンティティーはもがき苦しんだ末に生まれてくるものです。つまり、個人的経験が非常に大切になります。しかし、今はその実体験の苦しみも失われています。

京都には、東京にはない「哲学の道」があります。

アポリアに対して解決の糸口を探っていくためにも、日本の多くの人が自ら考え、自分で構想力を培っていくような「道」や「庭」が大切だと私は思っています。そこで自分自身のアポリアについて深く考えるようなモチベーションを作ることが大切なのです。

 

[2015年8月1日発行『構想の庭』第1号  再録]

世界は、もはや「グローカル」という新しい時代に突入していると思います。今、物ではなく体験が売れる時代です。それは、訪れた観光客が文化体験を購入していることからも明らかです。それが、いまの時代の商品です。そういった豊富な商材を持ち合わせているのが、地方です。
日本各地には、それぞれ独特の文化があり、個々の価値を持っています。私はそれを「文化資源」と呼んでいます。文化資源は歴史と伝統がつくりだし、日々、堆積していくものです。それが熟成し、やがて発酵していきます。それは、独特の匂いを発しますが、その癖のある匂いも徐々に芳醇な香りとなって深みのある味わいを醸し出していきます。その香りこそが地域に眠る財産であり、その価値をヨソモノが発見してくれます。日本はすでに成長期を終えた社会です。これからの高齢化や人口減少を考えたとき、ヨーロッパのような熟成感のある滅び方を考える必要があります。国民国家の歴史はたかだか2世紀余り、国家が滅びても都市は生きのびるでしょう。京都はそういう生きのびる都市のひとつでしょう。
これまでのやり方では通用しない、ギアチェンジしなければならないのに、今の日本にはそのための動機付けとなる危機感が不足しているのではないでしょうか。戦略的な視点から、利用可能な文化資源を最大限活用した地方や都市の経営を推進していってもらいたいものです。
[2015年8月1日発行『構想の庭』第1号  再世界は、もはや「グローカル」という新しい時代に突入していると思います。今、物ではなく体験が売れる時代です。それは、訪れた観光客が文化体験を購入していることからも明らかです。それが、いまの時代の商品です。そういった豊富な商材を持ち合わせているのが、地方です
 

 

望月照彦(もちづきてるひこ)

1943 年静岡県静岡市(元清水市)生まれ。1979年望月照彦都市建築研究所を設立。多摩大学経営情報学部教授、 同大学院教授を経て、現在、構想博物館の館主を務める。エッセイスト。『商業ルネッサンスの時代』(ダイヤモンド社)、『都市民俗学講座全5巻』(未来社)、『センス・オブ・ハピネス』(日本紀行)など多数。

 

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