囲み枠(上)
谷口正和 プロフィール

RSS

2017年7月25日

日本の滅び方 上野千鶴子

 


 

BLOG_shin_tops.png

 

 

ueno0723.jpg

 

 

世界は、もはや「グローカル」という新しい時代に突入していると思います。今、物ではなく体験が売れる時代です。それは、訪れた観光客が文化体験を購入していることからも明らかです。それが、いまの時代の商品です。そういった豊富な商材を持ち合わせているのが、地方です。
日本各地には、それぞれ独特の文化があり、個々の価値を持っています。私はそれを「文化資源」と呼んでいます。文化資源は歴史と伝統がつくりだし、日々、堆積していくものです。それが熟成し、やがて発酵していきます。それは、独特の匂いを発しますが、その癖のある匂いも徐々に芳醇な香りとなって深みのある味わいを醸し出していきます。その香りこそが地域に眠る財産であり、その価値をヨソモノが発見してくれます。日本はすでに成長期を終えた社会です。これからの高齢化や人口減少を考えたとき、ヨーロッパのような熟成感のある滅び方を考える必要があります。国民国家の歴史はたかだか2世紀余り、国家が滅びても都市は生きのびるでしょう。京都はそういう生きのびる都市のひとつでしょう。
これまでのやり方では通用しない、ギアチェンジしなければならないのに、今の日本にはそのための動機付けとなる危機感が不足しているのではないでしょうか。戦略的な視点から、利用可能な文化資源を最大限活用した地方や都市の経営を推進していってもらいたいものです。
[2015年8月1日発行『構想の庭』第1号  再録]
世界は、もはや「グローカル」という新しい時代に突入していると思います。今、物ではなく体験が売れる時代です。それは、訪れた観光客が文化体験を購入していることからも明らかです。
それが、いまの時代の商品です。そういった豊富な商材を持ち合わせているのが、地方です。
日本各地には、それぞれ独特の文化があり、個々の価値を持っています。私はそれを「文化資源」と呼んでいます。文化資源は歴史と伝統がつくりだし、日々、堆積していくものです。
それが熟成し、やがて発酵していきます。それは、独特の匂いを発しますが、その癖のある匂いも徐々に芳醇な香りとなって深みのある味わいを醸し出していきます。その香りこそが地域に眠る財産であり、その価値をヨソモノが発見してくれます。
日本はすでに成長期を終えた社会です。これからの高齢化や人口減少を考えたとき、ヨーロッパのような熟成感のある滅び方を考える必要があります。国民国家の歴史はたかだか2世紀余り、国家が滅びても都市は生きのびるでしょう。京都はそういう生きのびる都市のひとつでしょう。
これまでのやり方では通用しない、ギアチェンジしなければならないのに、今の日本にはそのための動機付けとなる危機感が不足しているのではないでしょうか。
戦略的な視点から、利用可能な文化資源を最大限活用した地方や都市の経営を推進していってもらいたいものです。
[2015年8月1日発行『構想の庭』第1号  再録]

 

 


 

上野千鶴子(うえの ちづこ)

1948 年富山県生まれ。京都大学大学院社会学博士課程修了。社会学博士。コロンビア大学客員教授や東京大学大学院人文社会系研究科教授を歴任。2011 年4 月から認定NPO 法人ウィメンズアクションネットワーク(WAN)理事長。専門は女性学、ジェンダー研究。著書に『ケアのカリスマたち』(亜紀書房)など多数。

 

BLOG_shin_unders.jpg

 

BLOG_shin_amazons.png

HOME