2013.5.27

さいとうれいこさん

『おしゃれっぽきつねのミサミック』

制作裏話 ①

 

こちらの記事でご紹介した絵本、『おしゃれっぽきつねのミサミック』。
出版されるまでに、どんなことがあったのか?
制作時は、どんなことを考えているのか?
絵本作家のさいとうれいこさんと、担当編集者の安藤康史さんに
制作の裏側を教えていただきました。

 

絵本好きな人はもちろん、絵本作家を目指す人必見のインタビューを
4回にわけてご紹介します! 


IMG_5385_s.jpgさいとうれいこさん(右)、安藤康史さん(左)です。


第1回「絵本の持ち込みから出版まで」

 

―出版に到った経緯を教えてください。

さいとうれいこ(以下S):3年をかけて3冊のダミー絵本を作りました。
それを持って絵本の出版社を直接訪ねるつもりでした。
ただ、絵本を編集者の方に直接見ていただく機会がなかなかないのです。
郵送だけの受付が多くて困っていました。
ふと自室の本棚にある、母に昔買ってもらった絵本の奥付を見たら、
その出版社が草土文化でした。
試しに電話をかけたら、編集の方に取り次いでいただいて。
「持ち込み、OKです。ただ出版化できるかどうかはわかりませんよ」
とおっしゃったので、
「出版することにならなくてもいいです、ただ見ていただきたいだけです」
と正直にお話ししました。
それで初めて絵本を持ち込むことになりました。

安藤康史(以下A):見せていただいたのは、
そのまま出版できそうなくらい完成度の高いダミーでした。
原画も何枚か見せていただいたのですが、特に色が美しいと感じました。
色彩設計もきちんと考えられていて、
ここまでの完成度で持ち込みをされる方は初めてでした。

S: 知り合いの絵本作家さんから、
「原画を描いても、出版する際に必ず描き直しになる。
原画は参考程度に何枚か描けば、ダミー絵本をたくさん描く時間が作れるよ」
とアドバイスをいただいて、色鉛筆でダミー絵本を作りました。
その時点で、使った色鉛筆の名前はすべて書き出しておきました。

A:ちょうど新しい企画を立てたいと思っていたときだったので、
すぐに絵本の企画書を作り、企画会議を通しました。

 

 

IMG_5378_s.jpg

こちらがダミー絵本です。驚きの完成度!
色鉛筆で描かれています。 

 


―3冊のダミー絵本のうち、1冊の出版が実現したのですね。

S:「絵本を持ち込みに行くとき、1つだけじゃなくていくつも持って行った方が、
相手も選びやすくなるよ」
とアドバイスがあって。
複数持って行きたい、でも私は多作のタイプじゃない。
なので、昔作った話を作り直してダミー絵本にしたんです。
当時は人間の出てくる話ばかり描いていて、
唯一動物を主人公にしたのが『おしゃれっぽきつねのミサミック』だったのですが、
人間を描くということにこだわりがあったのでしまいこんでいて。
ただ、学生時代に武蔵野美術大学の今井良朗教授に
「しゃべる動物を描くということは、動物を通して人間を描いているだけなんだよ」
と言われたことを思い出して、人間にこだわるのをやめました。
そうして、きつねの女の子を主人公にして作ったダミー絵本が
『おしゃれっぽきつねのミサミック』でした。



―絵本を出版に向けて制作するにあたって、意見がぶつかることはありましたか?

S:まったくありませんでした。すごくスムーズに話が決まっていきました。
A
さんが私のことを尊重してくださったということもありますが、
私の絵を気に入ってくださったり、私の考えと重なる部分があったのだと思います。
Aさんに指摘されたことで、納得できなかったことはほぼありません。
絵本を作った後に、ほかの作家さんや関係者さんとお話ししたとき、まず
「編集とのやりとりは大丈夫だった?」
と心配されました。
ですが、私は編集者の方についてもらったのは初めてだったので
(Aさんのように)話が合うのがあたりまえだと思っていました。

A:普通、細かい部分まで気になってくることが多いのですが、
そういうことはありませんでした。
文章を練るときは何度も話し合いましたが、
2
人で納得したうえで決まっていきました。
どちらかが折れたことはありません。
私が、その文章で伝えたい意図を説明し、
実際に絵本に使う言葉はさいとうさんに決めてもらいました。

S:Aさんの使われる言葉は、少々難しいことが多いのですが、
ニュアンスは納得できるので、簡易化した言葉を私が考えます。
意図を明確にしていただくことで、どうしたらよいのか浮かびやすくなりました。
ぶつかってやりとりをして決めていく、という方法もありだと思うんですけど、
私の場合はスムーズにやりとりできる方が、気持ちよく作れたし、
発想も広がりました。

A:2人の性格は正反対ですが、
絵と言葉について考える方向性は似ているんです。
だからこそ、ダミー絵本を見たときに、出版したいと思ったのかもしれません。

S:いくつか印象に残ったことがあります。
「おひさまのはなが咲いたみたいだ」と、ジャケットを表現した言葉があります。
Aさんから、
「花と太陽の色がいっしょであることと、そこからインスピレーションを受けて
ジャケットができたということが、もっとわかるように」
とすごく難しいご指摘を受けました。
そしたら、「おひさまのはな」という言葉がぽんと出てきたんです。

A:世界観を伝わりやすくするために、
よりよい言葉を探しながら少しいじるだけ、ということがほとんどでした。

S:Aさんは論理的思考を優先されるので、
理屈さえ通れば、あとは自分で言葉を選べる、というところがやりやすかったです。



―ほかにもアドバイスを受けることはありましたか?

S:奥付のクレジットにも掲載してありますが、
今井教授にアドバイスをいただきました。
絵本としての見せ方ですね、角度を変えるなど。
「ムウムさんが描いた絵を読者に見せたいなら、
いま斜め横になっている角度を、正面に直した方がいい」
と教えていただいたり、
私の表現したい感情をくみとってもらって、意見をいただいたりしました。
今井教授にアドバイスをいただくことで、それをほかの部分にも応用して、
自分から思いつけるようになりました。
初期の段階では、ミサミックがムウムさんの絵を見る場面には、
ミサミックのスカートの赤が入っていたんです。
でも、赤は楽しいイメージなので、
泣いているシーンなのに赤を入れるのはおかしいと思って。
スカートが画面に入らないように位置を調整しました。
誰かが教えてくれると、独力では気づけなかったところも気づけるというのは、
1人で作っているときとの大きな違いです。

 

 

IMG_5377_s.jpg

ダミー絵本をもとに絵の具で彩色されたのがこちら。
実際の絵本ではキャンバスの向きやミサミックの位置が変更されています。
絵本と見比べてみてくださいね♪ 

 


A:ミサミックが怒ってしまう場面も、今井教授とやりとりしたうえで
変わった画面でしたよね。

S:はい、今井教授と、Aさんとのやりとりを経て変更しました。
初期の段階では、怒った場面の次のページでミサミックが機嫌を直していたんです。
ところが、
「あんなに怒っていたのにもう機嫌を直すのか、早すぎはしないか」
とAさんに指摘されました。
それじゃ、まだまだ怒らせていようと思って、構図をいろいろ考えているときに、
「怒っているのに画面の枠に向かっていく構図はありえない」
と今井教授に指摘をいただいて。
それなら画面のどこに置くのが正解なんだろうと、自分でいろいろ考えて決めました。
背中を向けているのも、怒っていることを伝えるためです。


―怒っているということがしぐさから見えてきます。

S:自分1人で制作しているときには、顔の表情だけで表現することが多かったので、
からだでも怒りが表現できるなんて、と目からうろこでした。

 

 

②に続きます。お楽しみに!

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