江戸のデザイン: 2010年6月アーカイブ

江戸のデザイン研究でこれからは
「江戸の商標」をテーマに調べていきます。

まず商標についてですが、
解説によると需要者が自社の商品又はサービスを他社の商品
又はサービスと見分けることができるように、
商品又はサービスについて使用する目印(識別標識)のことです。
つまり、自他識別性を本質とする識別標識が商標です。

文献によると商標のたぐいは江戸以前の古い時代からあったそうですが、
商標に対する関心や興味が特に高まったのが
江戸の成熟期である文化文政年代と言われています。
今日われわれが見られる江戸時代の商標は
大きく分けて二つの形で存在しています。
一つは趣味家の蒐集した張込帖にあるもので
全国の公私の図書館や個人所蔵として残っています。
もう一つは、数は少ないが書物の中に挿画として残っているものです。

「江戸の商標」についての解説や図柄は、
図書館や資料館の書物や先人たちの研究から適宜利用させてもらいました。


江戸の商標「笹乃雪」

今回は、豆富料理で有名な根岸「笹乃雪」の商標です。
「笹乃雪」の名の起こりは、初代玉屋忠兵衛が元禄四年(約三百十五年前)
上野の宮様(百十一代後西天皇の親王)のお供をして京より江戸に移り、
江戸で初めて絹漉豆富を作ったそうです。
この頃、江戸には木綿漉豆腐はあったが絹漉豆富は無かったそうです。
こうしたことから宮様はこの豆富をことのほか好まれ
「笹の上に積もりし雪の如き美しさよ」と賞賛され、
「笹乃雪」と名づけ、それを屋号としたそうです。
淡雪とか笹の雪とかは、すべて豆富の異名で、
春の雪のように舌にたまらないという意味もあるそうです。

この商標の矩形は、古くから伝わる調和的で美しい比率である
黄金比(黄金分割)のフォルムを持っていて
見る人が自然と美しいと感じる
矩形(長方形)になっているのがすごいです。
ビジュアル的には、笹の葉の上に雪が落ちている様を右上と左下に配し、
その斜め中間に店名である「笹乃雪」を位置づけるなど
人間の視覚導線を巧みに活用したレイアウトになっています。
「笹乃雪」の「乃」に特徴を持たせているのも面白い。
店名のショルダーとして「きぬごし」を入れ、
その上に「御膳」、そして右には所在地、
左下には初代玉屋忠兵衛の略字「玉忠」で締めています。

 

笹乃雪のお店のHPは、http://www.sasanoyuki.com/です。

私も何回かおじゃましたことがありますが、とても良いお店です。

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