江戸のデザイン: 2010年4月アーカイブ

江戸文字とは、江戸時代に盛んに使用された図案文字の総称で
江戸情緒豊かな、相撲、歌舞伎、寄席、提灯や千社札に
使われる文字などを総称して「江戸文字」と呼んでいる。

提灯や千社札に使われる肉太の力強い書体を指して
「籠文字(かごもじ)」と言われています。

提灯連続.gif

江戸末期の浮世絵師、梅素亭玄魚・書家名「田キサ」、
歌川芳兼、書家名・「田てう」らが
提灯や千社札に用いた力強い書体・力(ちから)文字が、
町火消しの纏(まとい)や半纏(はんてん)などの
染物の文化の中で熟成され、洗練されてきました。

この書体が、明治大正になって、
題名納札(だいめいのうさつ)(千社札)の大家である「太田櫛朝」、
提灯や千社札の意匠の達人である
初代と二代の「高橋藤」という三大名人たちによって確立されました。



籠文字は篭文字とも書きます。
文字は一筆書きでなく、輪郭をとってから中を塗りつぶします。
塗り潰す部分に篭目状に斜線を入れたことから「籠文字」と
呼ばれるようになったと言われています。
籠文字は、江戸文字の中でも、
太い筆で墨をたっぷり付けて書くのではない装飾的なつくり文字で、
現代のレタリングに通じるものがあります。
字画が厚めで、やや四角いフォルムを持つのが特徴で、
提灯、千社札、半纏などに入れる文字として用いられてきたので
めりはりの効いて、くっきりとして、

遠目でもよく目立つような工夫がなされています。
反転文字として使われることも多く、輪郭線として使われることもあります。




浅草寺の大提灯の文字が籠文字であるかどうかが疑問となり
浅草寺指定の大提灯を制作した職人に問い合わせたところ
この文字は籠文字ではなく、文字の周りに「髭」がついている書体で
通常「髭文字(ひげもじ) 」と呼んでいる書体で書かれているそうです。
提灯に描く文字はすべて籠文字ではなく、
依頼主の要望によってさまざまであることを知ることができました。
昨今、巷には江戸文字のフォントがいろいろ出てきています。
このフォント文字だと形だけをとらえているようで、

なにか物足りなさを感じます。
やはり江戸文字は、基本的に「手(筆)で書く」伝統的な技術であることから
この提灯のように手書きであると、人間的な温もりや個性が出ている

手書き文字が本来の姿だと思いました。



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