
桜に寄せる、日本人の想いは格別。
短い間に咲き誇り、散りゆく姿に美学を感じ、その儚さに美しさをみる……。
それは江戸も今も変わることはない。
今年の桜の名残にしばし、その美しさをご堪能あれ。

こうして写真として切り取ってみると、そのまま着物の柄にできそうだし、
実際にこういった柄が描かれた昔のものもある。
着物にしても浮世絵にしても、
それは案外、写実的でありながら説明くさくないのが粋なところだ。
きっと、江戸の時代も色々な角度から桜を見ては
どう表現するのが美しいのかを追求し、その結果として
削ぎ落とされたマイナスの美が今も残っているのだろう。


はてさて、見事な枝垂れ桜を擁するこの庭はどこ?
約1万平方メートルもの広さの回遊式庭園の向こうには五重塔……。
正解は、金龍山浅草寺伝法院。
江戸時代から明治までは秘園とされていたこの庭が4月28日まで拝観できる。




ぜひ、公開中に行かれるなら手入れの行き届いた庭木だけではなく
其処此処に残るこの地の歴史を知らせる痕跡も辿っていただきたい。
同時に公開されている浅草寺の寺宝である大絵馬も圧巻。
谷文晁や柴田是真、歌川国芳、長谷川雪旦など当代一の絵師に描かせた大絵馬は
奉納主の強い願いや信仰の姿を観ることができる。
自然に畏敬の念を持ち、安寧を願う当時の人々の
想いに触れてみてはいかがだろう。
金龍山 浅草寺 平成本堂大営繕記念 「大絵馬寺宝展と庭園拝観」
会期:4月28日まで 10:00〜16:00(閉館時間16:30)入場料:一般300円