
江戸時代、寄席や見世物小屋だけでなく
町には様々な芸をする人が家々を回っていた。
獅子舞、万歳、太神楽、鳥追いなどは正月のその代表的なもの。
これらの芸は門の前で行われることから「門付け芸」と呼ばれていた。
獅子舞は、舞いに曲芸や道化の要素をプラスした
ストーリー性のあるもので、笛や太鼓とともに賑やかに正月気分を
盛り上げた江戸の娯楽である。
もともとは、信仰に基づくもので、神からの祝福を運ぶものと
考えられていたという。
だから正月ともなれば祝儀もたんと弾んだのであろう。


現在でも正月の寄席や劇場で神楽と獅子舞はみることができるが、
家々を回わる風習が残るのは、一部の下町あたり。
昭和も40年代ごろまでは、獅子に頭を噛んでもらうと
厄払いになるといわれ、正月、獅子を見て泣く子どもの声が
家々から聞こえたものである。

一方、門付け芸に対して「ご用とお急ぎでない方は〜」の物売り芸。
これは、いかに客を集め、気を引くかを考えた物売りの芸だ。
さらにいかに売りつけるかも芸のうち。
写真の「南京たますだれ」も簾売りの物売り芸が寄席や見世物小屋の
芸に昇格したもののひとつ。
庶民は、こうして木戸銭を払わずとも
町を歩けばこうした娯楽を楽しむこともできたのだ。
2010年1月3日 大江戸骨董市(国際フォーラム)にて