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谷口正和 プロフィール

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2017年12月26日

歌集『海の石 鳴る』

 

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先日、青戸紫枝さんと食事をした際にいただいた。

青戸紫枝さんは武蔵美術大学の後輩であり、私の父からフランス語の学んでいたメンバーの一人、弊社の優秀なクリエイター小沼亜美さんの母上でもある。
表紙の写真は同じ画家である、ご主人が撮られたもので、タイトル文字は日本を代表する詩人であり、彼女のご兄弟でもある大岡信さんが書かれた。 

青戸紫枝さんは4歳まで沼津の千本松原の近くにおり、当時住んでいた和洋折衷の家を細部まで覚えているという。
家の近くの海岸では、砂浜の石が波で洗いざらいしながら丸くなる。
その石たちが重なり合って音を鳴らす様を「海の石 鳴る」と表現した。 

青戸紫枝さんは画家でもあり、美術の教員も引き受けられていた。
生活の中の日々の思いを、画家であるがゆえに視覚言語を用いながら、私情豊かな風景を彷彿させるような語らいを表現する。
日本は万葉の世界から短文・短歌、風景を写し取る「思いの写生」という構造の中にあったが、歌集(和歌)はその表現の総合性を圧縮した姿でもある。 

今は亡き大岡信さんや、自分を慈しみ、支え育ててくれた方々にそっと捧げるように形になった本書。
歌はその人の等身大であり、その人自身でもある。
そのような作歌理念というのは本当に奥が深い。 

様々な思いと見えざる出会いの中で、歌は見えざる赤い糸を通じて行き来する一つのリズムのようにさえ思えた。
出版おめでとう。

 

『歌集 海の石 鳴る』

出版社:ながらみ書房
定 価:2,500円+税

 

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