犬好きなあなたへ贈る
せつなくて、いとおしい
犬の絵本 5選
絵本のチカラプロジェクトがスタートして3年半、
昨年のブログリニューアルから半年が過ぎようとしています。
この間、絵本研究のために集まった絵本は300冊をゆうに超え、
その数はまだまだ増え続けています。
今日は私たちの蔵書のなかから
「犬」にテーマを絞って、とくにお気に入りの5冊をご紹介します。
最初はこちらの絵本です。
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『アンジュール ある犬の物語』
ガブリエル・バンサン/作 BL出版/刊
この絵本は文字のない、いわゆる”サイレント・ノベル”の
はしりともいえます。
発行は1986年。版を重ねて、私たちの手元にあるものは
第52刷!
圧倒的な筆力で描かれた鉛筆デッサンによる絵本です。
ある日突然、走るクルマから捨てられた犬の
驚愕、とまどい、絶望、あきらめ、そして期待、安堵までの
一連の心情とせつない表情に
読み進むうちにどんどん胸が苦しくなってきます。
「絵を読む」とはこういうことを言うんですね!
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『アンジュール』の裏表紙です。
犬のかなしみがうしろ姿からビンビン伝わってきて
たまりません・・・。
でも最後は「ああ、よかったね」と
犬といっしょに心の底からあたたかい気持ちになれます。
だから好きな絵本なのだと思います。
作者のガブリエル・バンサンはベルギーのブリュッセル生まれ。
ブリュッセルの美術学校で絵画を学び、以降長期にわたりデッサンに
専念したそうです。
この『アンジュール ある犬の物語』のほかに、
木炭デッサンの絵本『たまご』、インクによるデッサン絵本『セレスティーヌ
アーネストとの出会い』(いずれもボローニャ国際児童図書展グラフィック賞)
などがありますが、いずれも当プロジェクトの蔵書にあります。
いずれご紹介したいと思っています。
次にご紹介したい絵本はこちらです。
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『さいごの こいぬ』
フランク・アシュ/文・絵 ほしかわなつよ/訳
童話館出版/刊
9ひき生まれた子犬のなかで、いちばん最後に生まれた
子犬の物語です。
おかあさんのおっぱいを飲めたのも、目があいたのも、
犬小屋へ入るのもいつも最後。
やがて兄弟たちは1ぴきずつもらわれていくのですが
ここでもやっぱり最後までこのコをもらってくれる人は現れません。
子犬は選ばれるようにいろいろアピールするのですが
すべて裏目に出てしまうのです!
いろいろやっても駄目だった・・・。
子犬のあわてたようす、かなしい気持ちが
絵本全体から伝わってきて
思わずもらい泣きです。
わーん、誰か早くもらってあげて!
でもだいじょうぶ。
最後の最後に、とっておきの言葉が待ってました。
それは読んでのお楽しみ!
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『さいごの こいぬ』の裏表紙です。
この最後の絵で
「よかった、よかった」ということが
わかります! 私たちも「やれやれ」です。
シンプルな絵と平面構成ながら
実に多彩な子犬の表情としぐさが表現されていて
ぐんぐん物語の世界に入り込んでしまいます。
作者のフランク・アシュは、1946年ニュージャージ生まれの
アメリカの作家。1969年『George’s Store』が最初の子どもの本で
著書は70冊以上もあります。
『さいごの こいぬ』は1980年の作品です。
さて、3冊目の絵本はこちらです。
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『チャッピィの家』
いまいあやの/作 BL出版/刊
いまいあやのさんの作品をご紹介するのは今回で2作目。
バックナンバー(2011.7.1更新)の『くつやのねこ』は
献身的で賢いねこが主人公でしたが、
こちらは世間知らずで自立心旺盛な犬の物語です。
それぞれが忙しい3人家族に飼われているチャッピィ。
みんなにかまってもらえず、
散歩にも連れて行ってもらえなくなったチャッピィは
かなしさのあまり、みんなに嫌われたのかなと思い込み、
ついに家出をします。
もっと良い場所があるかもしれないと思って・・・。
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『チャッピィの家』の中面より。
頭の上にかかげているのは、自分の家。
煙突からちゃんとけむりが出ているところが
シュールでなんともいえない味わいがあります。
犬はおよそ人間の2~3歳の知能があるといわれます。
犬を飼っている人は、「犬は家族の一員」と言う一方で
犬にもちゃんと2~3歳の子どもがもつのと同じ心があることを
ついつい忘れてしまいがちなのかもしれません。
私もこの絵本を読んで、ハッとさせられました。
うちの犬も、散歩、がまんしてるんだ・・・。ごめんね・・・。
いまいあやのさんのプロフィールについては
バックナンバーをご覧いただけたらと思います。
『くつやのねこ』の動物たちと同様に、
この作品でも犬の毛並みがとても丁寧に描かれ、
ありえないしぐさが違和感なく感じられるのです。
その一方で、後ろ脚の開き具合など、本当によく犬のことを
観察されてるなあと、犬好きにはたまらない描写もあって
チャッピィの心に寄り添いたくなります。
4冊目の絵本はこちらです。
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『コートニー』
ジョン・バーニンガム/作 谷川俊太郎/訳
ほるぷ出版/刊
この物語の何がすごいって、
冒頭の犬をもらいに行く場面です。
両親からは血統書付きのちゃんとした犬にしなさい、と
言われていたにもかかわらず、
子どもたちは野犬収容所に行き
係のおじさんにこう言うのです。
「誰も欲しがらない犬、いない?」
「見た犬はどれも、すぐもらわれていきそうな犬ばかり」
こうして誰も欲しがらない老いた雑種のコートニーは
理解のある子どもたちと
理解のない両親のいる家にもらわれていきます。
ところがところが、このコートニーは
とんでもないスーパー・ドッグだったのです・・・!
そして、最後の場面、
ぐっときます。
犬好きな人には、わかる最後なのです。
それは読んでみてのお楽しみ!
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『コートニー』の裏表紙です。
コートニーは、こんなことやあんなこと、
あっと驚くことができるスーパー・ドッグ!
それは野犬収容所から自分を選んで救ってくれた子どもたちへの
せいいっぱいの恩返しに思えて
読み進むうちに胸が熱くなっていきます。
作者のジョン・バーニンガムは1937年、英国サリー州生まれ。
兵役を拒否し、農場や森林で働いたり、
スラム街で地域活動をしたりしながら世界各地を放浪。
その後、ロンドンでイラストの勉強をし、
クリスマス・カードやポスターのデザインの職に就きます。
1964年、はじめて手がけた絵本『ボルカ』(ほるぷ出版)で
ケイト・グリーナウェイ賞を受賞、今や英国の現代絵本作家の
巨匠であり、多くの作品が邦訳され親しまれています。
奥様も絵本作家でヘレン・オクセンバリーという人です。
バーニンガムの絵は、シンプルな線、淡い色えんぴつを
要所要所にサッと塗っただけの簡単なものなのですが
瞳と指先、つま先をしっかりと描いているので
焦点がぼやけません。
「うまいな~」とため息が出てしまうような鮮やかなタッチで
”ポストモダンの巨匠”と呼ばれているのもうなづけます。
さて、ラストの1冊をご紹介しましょう。
この絵本は、”犬好きなあなたへ贈る”というテーマで
くくっていいものかどうか、とても悩みました。
なぜなら、”犬好きなあなた”は
この絵本のことを思い出すたびに
涙してしまうかもしれないからです。
ですから、犬に関して泣き虫な方は、
こ・こ・か・ら・先・は・読・ま・な・い・で・く・だ・さ・い・!
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『イヌココロ だいすきなあなたに伝えたいこと』
著者/ごとうやすゆき イラストレーション/牧野千穂
ブックデザイン/かねこまさみ 幻冬舎/刊
著者のごとうやすゆきさんは、愛犬の一生をつづり
ベストセラー&ロングセラーになっている
『ダメ犬グー 11年+108日の物語』(文藝春秋/刊、文庫版・幻冬舎/刊)
の作者。
そしてイラストレーションは、絵本『うきわねこ』が
2011年度絵本屋さん大賞(月刊MOE選)の受賞作となった
牧野千穂さんというゴールデンコンビによる2006年の作品です。
私は自分でこの絵本を買ったわけではありません。
中味を知っていたら、買わなかった、いえ買えなかった。
それほどこの絵本を読むには、毎回勇気がいります。
でも、しばらくするとまた読みたくなってしまう。
そんなわけで、いつも目につくところに
この絵本は置かれています。
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『イヌココロ』中面より。
飼い主が自分を置いて出かけてしまうとき
犬は寂しい気持ちになるのはあたりまえですね。
がまんしてるんですよね。
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『イヌココロ』中面より。
犬がうれしい興奮状態になったときのしぐさ4態。
本当にこうなりますね。
全身でうれしさを表現するんです。
うちの犬もよくやります。
描かれている犬のかわいらしいこと!
きっと犬を飼っている人は、「うちの犬に似ている」と
全員が全員、思うはず。
それほど、犬好きの心情をわしづかみします。
だからこそ、最後の最後で・・・。
これ以上、言えません・・・。
・・・・・・・号泣です・・・!
「きっといつかくるその日のために
この絵本を知っておいてよかった。」
すでに読んでしまった人は
そう自分をなぐさめるのがいいのかもしれません。
そして、もし友人が
そういう事態になったときには、
最大限、悩んで悩み抜いて
この絵本を贈った結果、
友人からすごく喜ばれる、そんな本だと思います。
私がこの絵本を知らないまま、そんな事態で贈られたとしたら、
やっぱりものすごくあたたかい涙を流して
じんわり嬉しいと思うような気がします。
こんな書き方しかできず、すみません。
以上、今回は犬好きのための企画でした。
今度は猫好きのスタッフが、猫好きの方のための
猫の絵本の企画をアップしないといけませんね!(ミヤタ)














