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谷口正和 プロフィール

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2011年4月26日

ヘルプ・マーケティング。

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今回の大震災復興には、10年、20年かかるだろうという人が多い。

特に原発の問題を抱えているので、

予想も付かない時間を必要とするのかもしれない。

 

東北は日本の台所でもあり、

どのように産地を応援するかは我々の喫緊の課題だ。

私が考える方法は「東北のお客さんになる」ということである。

直接お客さんになるのも一法だ。

私はWEBデザイナーズ協会の顧問をしているが、

先日の会合で、ウェブデザイナーたちが現地へ飛び、

そこの生産者と話して、

直接その生産者の産物をネットで販売してはどうかと提案した。

 

またもう一つ重要なのは、小売業の役目である。

すでにスーパーや百貨店などは産地の生産物販売応援に

積極的に乗り出しているが、

都心に構えるショッピングセンターや専門店がどう動くかである。

ファッション産業であれ何であれ、このような緊急時に、

高度成長時代の発想の売出しを相変わらず

やっていないかということだ。

どのような産業も、この大震災と無縁の業種はないのである。

顧客と産地を結ぶ「絆」として、

小売業に求められることは両者のネットワーキングである。

小売業とは、さまざまな生産者を顧客と結びつけるネットワーカーなのだ。

今こそ大勢の被災者、生産者を助けるための

「ヘルプ・マーケティング」発動の時である。

 

 

 

 

 

 

 

2011年4月25日

モチベーション。

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人間が持つ最も根源的な力は「気」だろう。

気力、気合、熱気、根気、ヤル気。

モチベーションとは、この「気」に火をつけることだろうと私は思う。

自分で火を付けるもよし、他人から火を付けられるもよし。

気持ちに火がつくことがすべてなのだ。

モチベーションは一方、気分でもあるから、

気の持ちよう次第で燃え盛ったり鎮火したりする。

 

リンクアンドモチベーション代表の小笹芳央氏から

新著『変化を生み出すモチベーション・マネジメント~

6つのマジックで思考と行動が変わる』(PHPビジネス新書)をお送りいただいた。

「この時期に・・・」と恐縮されておられたが、

今こそ高いモチベーションが必要な時期だとも言える。

本書はUnfreeze(解凍)→Change(変化)→Refreez(再凍結)

という3ステップを基本に、

人にモチベーションを与える方法を解説している。

 

モチベーションを与える人をモチベーターというが、

キリストもお釈迦様も偉大なモチベーターだったと言える。

この混乱期、傑出したリーダーを求める願望が高まっているが、

それは強いモチベーションを与えてくれるモチベーターのことだろう。

そして本当のモチベーターは、

1人1人の心の中にいるのだ。

その自己内モチベーターと出会うことこそ、最良のモチベーションになるに違いない。

2011年4月21日

小さくても理想主義。

 

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シングルカット社の鳥居昭彦氏から、3冊の本が送られてきた。

薄くて小さな本だが、この3冊には鳥居氏の編集者としての

プライドとクリエイティビティがぎゅっと詰まっている。

特に村上龍の『寂しい国の殺人』は英文対訳で、

何カットもの美しい写真が添えられている。

 

本は必ずしも「読む」ということだけがその機能ではない。

「見る」もそうだし、「飾る」も本の機能の一部である。

本はオブジェでもあるのだ。

この3冊の本には、そういったデザインスピリットがこめられている。

装丁とコンテンツとタイポグラフィーとエディトリアル・デザイン。

本が忘れかけていた、

そのような理想主義が、この3冊には感じられる。

鳥居氏自身の哲学や美意識が反映されているのがわかる。

2011年4月20日

温泉は文化。

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伝統ある台湾を代表する温泉地、

台湾北投温泉に「日勝生 加賀屋」がオープンした。

加賀屋のもてなしの真髄が海外に出て行ったということである。

 

温泉は日本の文化である。いわば文化が輸出されたのだ。

この『究極之宿~加賀屋的百年感動』は、

台湾の人たちに向けて中国語で書かれている。

現地に溶け込もうという意欲が分かろうというものだ。

「もてなしの心」は加賀屋の永遠のコンセプトであり、

日本企業が本来持っている最良のサービスでもある。

加賀屋の会長、小田禎彦氏の情熱と志を、私も応援したい。

 

2011年4月19日

知の伝承。

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『福田恆存評論集』全20巻の別巻『ホレイショー日記・年譜』が

麗澤大学出版会の西脇礼門氏より送られてきた。

一個の巨大な知性の完結である。

福田恆存は戦後の文芸、論壇をリードした、まさに論客であった。

評論家、翻訳家、劇作家であり、

ウィリアム・シェイクスピアの戯曲の翻訳で知られる。

ヘミングウェイの『老人と海』の翻訳も見事だった。


この別巻を見れば、いかに編集者というものが

“知性を支える裏の知性”であるかが分かる。

年譜や年表の整理は、

細心の注意と知力を注ぎ込まねばならないものだからだ。

西脇氏にあらためて敬意を表したい。

そして福田恆存という巨大な知性が、

丸ごと後世に残されることをともに喜びたい。

最終頁に福田恆存作詞の

「日本の山河~ものみな滅びしのちに」の楽譜が付いている。

編集者冥利に尽きるだろう。

ありがとう西脇礼門氏。

 

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2011年4月18日

直感と視座。

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NAVER(ネイバー)という情報サイトがある。

私は日本WEBデザイナーズ協会の顧問をしているが、

昨年の大賞に、このネイバーを選ばせていただいた。

グーグルに比較して、視覚情報が非常に多いのが特徴である。

時代はビジュアライゼーション、視覚情報の時代だ。

視覚は人間のコミュニケーションの80%以上を

占めていると言われており、今日の高度映像社会においては、

90%、100%に近付いているに違いない。

 


コミュニケーションは絵札と字札である。

絵札を活用することは、今後ますます重要になってくるだろう。

情報は解説性によるのではなく、

全体を直感させる方向へと動いており、だからこそ

視覚情報にウェイトを置かねばならないのだ。

シンボリックに、一発分からせることが大切なのである。

情報が津波のように押し寄せてくる今日、

下手をすると私たちは飲み込まれてしまう。

あの原発を可愛く平和に見せるために描かれていた

イラストレーションデザインは、最もデザインがしてはならないことだ。


だからこそ、感性と直感の力で、その本質を見抜く必要があるのだ。

あの津波によってもたらされた瓦礫の山と破壊しつくされた風景は、

長く私たちの脳裏に残像効果として刻み込まれることだろう。

その残像効果の力によって、プラスの方向へと針を回さなければならない。

 

直感力のもたらす確信こそ、最大のエネルギーなのだ。

未来に対して何が大切なのか。

その根源を直感し、拝金主義を脱し、

クリーンエネルギー、ネイチャーエネルギーに転換する勇気を持ちたい。

あの先進国ドイツでさえ、エネルギーを25%カットしても、

クリーンエネルギーで十分にまかなっていくことが出来ると言っている。

 

直感による視座の転換こそ、今私たちがなさねばならないことだろう。

2011年4月14日

結びの達人。

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残間里江子さんから『人と会うと明日が変わる』という

近著が送られてきた。

残間さんと言えば、人間関係学の達人である。

その根底には、本著の中にもあるが、

<生命には限界がある。だから、会えるうちは

できるだけたくさんの人に会おうと思っている>という、

ある種の観念がありそうだ。

 

今はまさにネットワークの時代である。

人と人がある関係で結ばれて網の目のように世界を覆い始めている。

そのネットワークが、新しい価値を創出する時代だ。

「1人天才」から「集合天才」の時代へと変わってきているのだ。

 

その結び目を担っているのが残間さんである。

その意味から、残間さんが果たしている役割は大きい。

今後ともすばらしい人間関係と価値創出の編み手でいてください。

2011年4月13日

長く生きる価値の創造。

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超高齢社会の到来である。

人口シミュレーションで言えば、

このような時代が来ることはとっくに分かっていたはずである。

戦後の日本には、高齢社会に対する長期的視野と構想力が

欠けていたといっても過言ではあるまい。

 

東京大学高齢社会総合研究機構が、独自の研究を積み重ね、

~「ジェロントロジー」が、日本を世界の中心にする~

というサブタイトルのもとに、

『2030年超高齢未来』(東洋経済新報社)という本を出した。

高齢社会全般を俯瞰するのに最適の本である。

 

当社も「長寿の森研究会」というシニア社会研究の

サイトを立ち上げている。

そのテーマは「長く生きる価値の創造」である。

そのメインイメージは「生涯幸福村」だ。

重要なのは、シニア社会の幸福な心理学とは何かということだろう。

モノではない、心の幸福とは何かということを

基点の視座に置いている。

かなりの頻度で更新している。

一度のぞいてみて欲しい。

2011年4月12日

図面は「見える化」。

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本書『図面の読み方がやさしくわかる本』

(日本能率協会マネジメントセンター)の

著者、西村仁氏は、私の立命館の教え子である。

本書は大変専門的な本なのであるが、

見方によっては大きな示唆に富んでいる。

それは「図面」とは、

頭の中で考えたものを整理して「見える化」することだ。

マーケティングの世界でも、図面化は大変重要である。

私はまずなんでもコンセプトスケッチにするが

(コンセプトイラストレーテッドと呼んでいる)、

それもいわば私の思考の図面化だ。

世の中、何にでもヒントが潜んでいる。

垣根を越えたところに新しいアイデアがあるということだろう。

西村氏のこれからを応援したい。

 

2011年4月11日

SURSUS CONCEPT

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SURSUS(サーサス)とは、

SURVIVALとSUSTAINABILITYを組み合わせた造語である。

サバイバルとサステナビリティ、生延びることと継続すること。

人間も含めた自然、地球が、生命の連鎖帯であることがはっきりした以上、

生き延び、継続することは連鎖を前提とすることである。

 

まず自分の足、つまり脚力を強化することは、

個人サバイバルの大前提だろう。

自分の足で歩くことは第一のサーサス・ツールである。

当社は7階にあるが、すでに7階まで階段で登ることを

毎日続けている社員がいる。

無理なく続けていくことは、体質そのものを変える。

 

第2のサーサス・ツールは自転車だ。

これも自力エネルギーで移動するには

大変エネルギー効率がいいツールだ。

安定性も考えて、前が2輪の自転車が考えられる。

 

サーサスを合言葉に、時代を変えて行きたい。

今、大変な社会革命期に私たちはいる。

たぶん震災がなくても、

 

社会は変わっていこうとしていただろう。

パラダイムは人間の都合に関わらず動いていくのだ。

 

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海に汚染水を流すことを、

日本は海外に告知していなかった。

日本が唯我独尊、自分だけよければ、

の国であることが図らずもオモテに出てしまった。

世界目線社会力に欠けた国家だといわざるを得ないだろう。

世界はつながっていて、一つの生命体をなしているのだから。

このようなときこそ、私たちは

自分たちの与えられた仕事をきちんと果たさなければならないだろう。

1人1人の仕事が、また世界と連鎖しているのだ。

生命は無限に連鎖している。

小魚を食べた魚をより大きな魚が食べ、

最後は人間が食べる。

小魚が死ねば人間のも死ぬのだ。

生命は一蓮托生、同じ蓮の葉の上に共存しているのである。

私たちはエネルギーを過剰に消費しない生き方に

シフトしなくてはならない。

 

生命のデザインそのものとしてのライフデザインを、今こそ問い直すべき時だろう。

 

 

2011年4月 5日

社会から預かる。

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栄久庵憲司氏から「GK Report」が届いた。

日本のプロダクト・デザイン界をリードしてきた同氏の発言には、

やはり長い経験と深い見識に裏打ちされたものがある。

巻頭の「開かれたGKを求めて」

~あらためて「運動・事業・学問」の意味を考える~

をマーカーを引きながら読ませていただいた。

一言で言えば、デザインが社会から預かっているものは何なのか、

という問いかけである。

デザインの社会化とはどういうことなのか、という自己質問である。

いまだ解決されていない様々な課題を、

デザインの力を通じて解決するということだ。

その基本になるのはやはり「学ぶ」ということで、

「学問」という出発点から「運動」の風を吹かせなければならないという認識だ。

私の考えていることとほぼ同意見で、

大変共感を覚える。

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