江戸のデザインの最近のブログ記事

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すみだ川アートプロジェクト2012「江戸を遊ぶ:北斎漫画2089」に
参加することを決めてから北斎の絵を見続けたこの何ヵ月。
とにかく、何をみても上手い! そして面白い!
その発想や表現はとどまることを知らないかのよう。
だから未だまだ飽きることがない。
この感覚を多くの人に味わっていただきたいと企画したのが
今回のセミナー&ワークショップ。
見て、聞いて、切って、貼って……、想像と創造の体験楽習。
三連休の最終日、ぷらっと立ち寄って遊んでいってくださいましな。


【セミナー&ワークショップ「画狂老人北斎と遊ぶ一日」
日時:7月16日(月・祝) 13:00〜20:30
場所:アサヒ・アートスクエア4階
参加費:終日学んで遊べるチケット1,500円
                小学生以下無料
                ※ただし、ワークショップについては、
                iPhoneカバーかタンブラーカバーのいずれか。

                両方ご希望の方は、プラス500円。


①ワークショップ[切って貼って北斎コラージュ!]
13:00~17:30 ※出力受付最終17:00
北斎漫画をはじめとした北斎の絵を使ってオリジナルiPhoneカバー、
タンブラーカバー、ポストカードを作りましょう。その場で自分の写真を撮って
一緒に組み合わせてもOK! これ、大人もかなりハマります!
名画の力を借りて、発想の遊びを楽しんでください。

②セミナー昼の部[浮世絵版画ができるまで&実演]
1回目 13:00~14:30/2回目 15:30~17:00
彫師 石井寅男氏、刷師 長尾雄司氏をお迎えして実演を見ながら、順番刷りなどを
例に解説します。また、小さな版木での刷り体験も!
江戸からの技を間近に見せていただきましょう!

③セミナー夜の部[あ~、そうなんだ!冨嶽三十六景から何がみえる!?]

18:30~20:30
冨嶽三十六景、全46枚をはじめ、150枚を越す資料を次々と見ながら
富士だけじゃない、そこに描かれている江戸の人々の暮らしなどを解説。
語り手は、北斎研究家の島田賢太郎氏、今回もかなり気合いが入ってます。

「いくよ餅」は、焼いた餅に餡をまぶした、
あんころ餅のようなもので
江戸時代中期、両国の名物餅であったといいます。

「いくよ餅」の説はいろいろありますが
元祖は元禄17年に創業した
西両国の小松屋であるといわれています。
車力頭の小松屋喜兵衛が
新吉原河岸見世の遊女・幾世太夫を妻に迎え、
両国橋の西詰めで幾世自らが焼いた
あん入りの餅を「いくよ餅」と名づけ
売り出したのが始まりのようです。
1個5文で売り出したところ、町中で大人気となり

偽物まで出る始末となったそうです。


この商標は、その小松屋のもので上部中央には
神迎えの標木として重要な意味をもつ松をデザインした
家紋的な「変わり荒枝付き三階松」が
シンボルとしてに配置されています。
松は常緑で不老長寿に繋がるとして平安時代から
吉祥の象徴とされてきたことから
永々と店が続いていく意味も持たせていたと推測できます。
その下には真ん中に江戸文字で「いくよ餅」と書かれ、
商品の存在感を力強く表現しています。
左右には、地名の「西広小路吉川町」と
主人名の「小松屋喜兵衛」の文字が配され、
情報としても的確なものになっています。
周りには草花の飾り罫をほどこすデザインから
全体的に重厚感や華やかさを出すようにしています。

小松屋の店内を描いた上の挿絵からは、

——入口に掛けたる太き縄すだれ、ねじりてちぎり出す幾世餅——

——見付けから くひたさうなる 幾世餅——

 などの狂歌が当時のままを描いていることがわかります。

他にも「いくよ餅」には、自分の方が元祖という店があったそうです。
それは、浅草御門内の藤屋という店です。
餡餅の創業はこの浅草御門内の藤屋市兵衛の方が
早かったという説もあります。
小松屋が「幾代餅」で繁盛したので、
藤屋は元祖であることを主張して
大岡越前守に訴えを起こしたといいます。
結果は、藤屋は葛飾新宿。
小松屋は内藤新宿に移って商売をするようにとの裁きとなったそうです。

もうひとつは、両国吉川町の若松屋といわれていますが、
小松屋が後に若松屋となったともいわれ、これも定かではありません。
江戸中期に大変繁盛し、
明治以前には姿を消した「いくよ餅」。
江戸っ子たちが愛したその味を楽しみ、

その意匠を目にすることができないのは、とても残念なことです。

 

「桜もち 食うて抜けけり 長明寺」
「三つ食えば 葉三片や 桜餅」

俳人・高浜虚子も此処を訪れ、詠った「桜もち」について調べてみました。
江戸向島の長命寺門前には、何軒かの桜もちを売る店があったそうです。
その内でこの商標の店「山本屋」が桜もちの元祖と言われています。
創業は徳川八代将軍・吉宗の享保二年(1717年)になり
現在まで約300年余り続く老舗店です。

長命寺は、元須崎三丁目にあって常泉寺と言われていましたが
寛永年間(1674年)徳川三代将軍・家光が鷹狩りの帰途、
気分が悪くなり、この寺に休んだ時に、
住持の孝海が境内の井戸の水をさしあげたところ
気分が爽快になったそうです。
喜んだ家光が、この水を「長命水」と名付けたので、
以来この寺も長命寺と呼ぶようになったそうです。

江戸中期、この長命寺がある向島堤には数百本の桜の苗が植えられ、
桜の名所となり多くの人が訪れたそうです。

長命寺の門番をしていた銚子に先祖をもつ山本新八という人が、

おびただしい桜の落ち葉を掃除しながら、

それを無駄にするのが惜しくなり、
試みに桜の葉を醤油樽に漬けて売ったそうです。

その後こんどは、小麦粉を溶き、薄い鉄板の上でのばして白焼きとし、
中にあずきの漉し餡を包み二つ折りにし、

さらにその上から塩漬けの桜の葉で包み、
これを桜もちとして売ってみたところ、
立ったまま手軽に食べられるので大人気となったそうです。
これが「桜もち」の始まりだと言われています。
この桜もちは、中の餅が薄い小麦粉皮であることと、
桜の葉が両面から一枚ずつ包んであり、
葉の香りがほのかに移るのが大きな特徴でした。
淡味津々情趣あふれるこの餅の風味が江戸人の好みにぴったりと合って、
桜もちの名は一世を風靡したようです。


上の「面白草紙噺図会」(天保十五年)の詞書には、
「よしのさくらは山ぐちから咲きそめ、
すみだ川のさくらもちは、
この山もとのいへでうりそめて、
いま江戸中さかりにはやります」とあります。
翩翻と川風に翻る幟は「江戸名物詩初編」に
「幟りハ高シ長明寺辺ノ家」
と詠まれていて、写実の風景であり
幟には「桜もちと山本」の字が描かれています。

下の写真は現在「山本や」で使用されている
パッケージに貼られる商標上紙と包装箱です。
どちらもそれぞれ時代と共に少しずつ表情を変えてきていますが
いまも江戸の風情を感じさせてくれています。



 


 

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桜に寄せる、日本人の想いは格別。
短い間に咲き誇り、散りゆく姿に美学を感じ、その儚さに美しさをみる……。

それは江戸も今も変わることはない。
今年の桜の名残にしばし、その美しさをご堪能あれ。
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こうして写真として切り取ってみると、そのまま着物の柄にできそうだし、
実際にこういった柄が描かれた昔のものもある。
着物にしても浮世絵にしても、
それは案外、写実的でありながら説明くさくないのが粋なところだ。
きっと、江戸の時代も色々な角度から桜を見ては
どう表現するのが美しいのかを追求し、その結果として
削ぎ落とされたマイナスの美が今も残っているのだろう。
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はてさて、見事な枝垂れ桜を擁するこの庭はどこ?
約1万平方メートルもの広さの回遊式庭園の向こうには五重塔……。
正解は、金龍山浅草寺伝法院。
江戸時代から明治までは秘園とされていたこの庭が4月28日まで拝観できる。
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ぜひ、公開中に行かれるなら手入れの行き届いた庭木だけではなく

其処此処に残るこの地の歴史を知らせる痕跡も辿っていただきたい。
同時に公開されている浅草寺の寺宝である大絵馬も圧巻。
谷文晁や柴田是真、歌川国芳、長谷川雪旦など当代一の絵師に描かせた大絵馬は
奉納主の強い願いや信仰の姿を観ることができる。
自然に畏敬の念を持ち、安寧を願う当時の人々の
想いに触れてみてはいかがだろう。
金龍山 浅草寺 平成本堂大営繕記念 「大絵馬寺宝展と庭園拝観」
会期:4月28日まで 10:00〜16:00(閉館時間16:30)入場料:一般300円
春の気配が漂い始めた2月22日、「能楽セミナー①入門編」を開催。
歌舞伎に比べ「難しそうだな、とっつきにくいな」と思う人も多いはず。
この日、参加された方々も大半はあまり観たことがない……という。そんなこともあってか、開始前は少々緊張ぎみ。
しかし、江戸時代、能楽という演劇から独立した形で
「謡」は
一つの教養・嗜みとして庶民の間でも謡われていたという。

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講師をお願いした観世流若手能楽師、シテ方の武田宗典氏──、
教室に入り座るや、謡曲「高砂」の一節「四海波(しかいなみ)」を披露!
その迫力に一同圧倒され、さらに「場」に緊張感が走る。
謡が終わり、武田氏が「四海波静にて~」ではじまるこの謡曲は波風が
治まって天下国家が平和なことを祝うもの……と解説を始めると
物腰のやわらかさ、耳にやさしい声にやっと空気が緩む。
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大方の初心者のためにまずは百聞は一見にしかずと生の謡に続き

「石橋(しゃっきょう)」のDVDを見ながら
能の構成や能舞台、
演目などについて解説。
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喜怒哀楽の表現の仕方、女性、老人などの演じ分け方など
「謡」と「型」の実演も……。
その立ち姿、所作──、
すべてが柔らかい美しさとは違う凛とした美意識に満ちていて
頭の天辺から指の先まで目が離せない。

今回は特別に能装束もお持ちいただき、
限定2名に着付のサプライズ!
挙手早い者勝ちで幸運を掴んだのはこの方々……。
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最後に武田氏の後について、皆で祝言謡「老松」を謡う。
最初の緊張感からは想像もできないような、
なんともいえない一体感に包まれ、セミナーは無事終了。

そして、お茶とお菓子をいただきながら質問タイム。
今回のお茶菓子は湯島の「つる瀬」ふく梅とうぐいす餅。
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今回、江美研の無理なお願いをお聞き届けくださった武田宗典さまに感謝
ご興味のある方はぜひ、コチラを!
武田宗典ホームページ⇒http://takedamunenori.com

また、江戸美学研究会へのメンバー登録はコチラ!
https://www.jlds.co.jp/ebilab/moushikomi.html
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