CAN Healthy Design Club

2013年1月 8日 13:35

~筑波大学大学院人間総合科学研究科教授

 株式会社つくばウエルネスリサーチ代表取締役社長 久野譜也先生~

 

 

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少子高齢化の進行やライフスタイルの多様化により

健康を取り巻く環境は大きく変化し、生活習慣病が増加。

医療費や介護給付費の増加が大きな社会問題になっています。

そこで、街づくりから住民の健康改革を行う

Smart Wellness City(スマートウエルネスシティ)

プロジェクトが進行中です。

その発起人であり、事務局長の久野譜也教授に

前編となる今回は、街と健康の関係性についてお話を伺いました。



人間の健康は、身体活動、食生活、睡眠といった生活習慣以外にも、

様々な要素が絡みあって成り立っています。

最近では、美的景観の良い地域に住んでいる人や

社会的つながりが高い地域ほど健康度が高いといった、

様々なデータが出てきています。

そうした考えの中から、その街に住んでいるだけで自然と歩いてしまう、

住民が健康で元気に幸せに暮らせる新しい都市モデル

「Smart Wellness City(スマートウエルネスシティ)」の

構想が生まれました。

 

 


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「歩く」という行為は、手軽に生活の中に取り入れられる

有酸素性運動の1つで、脳卒中や心疾患を防ぐために

十分な効果があります。しかし、運動の効果は貯金ができないため、

日常生活にいかに浸透させるかがポイント。

Smart Wellness Cityには、このポイントが解決される仕組みがあり、

さらに歩くことで、人々との接点が増えて地域も活性化し、

健康につながっていく。

住民が“健幸”になれる新しい街づくりの取り組みです。


今の日本で問題視され続けていることは、

地方都市における中心市街地の過疎化。

通過交通が多く、商店街を歩いている人が

ほとんどいないという都市が多数存在します。

車社会が前提で街が設計されているのです。

車さえあれば、少し遠くの大型ショッピング

施設でも行くことは可能ですが、

確実に歩く行為を少なくし、運動不足を招く原因になります。

また、高齢化が進むにつれ、75歳以上の人口が多くなると、

当然、車の運転が厳しくなる人が増えます。

市街地にはお店がない、遠くのショッピング施設には歩いて行けない、

仕方がなく宅配システムを利用し始める…

これは、引きこもりになりやすくなり、

しまいには寝たきりを促進させてしまうことになります。

中心市街地が活性化されていないと、

近隣住民の健康づくりにも影響を及ぼすことが科学的にも分かり、

総合的に街づくりからやらないと、

いろいろな社会問題が解決されないのです。

 

 

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無関心層への仕掛けづくり


しかし、街を変えるということは、莫大な費用がかかります。

そして、住んでいる人たちの今の状況に何かしらの

制限を与えることでもあり、合意を得ないと何も変えることが

できないのが実情です。一度慣れた生活を変えるのは

簡単なことではないので、大反対になるのは当たり前。

Smart Wellness Cityの必要性を科学的根拠とともに示しながら、

住民一人一人に承諾を得ることを行っていますが、

その中でも、現状の生活を変えることに対して、

特に抵抗を感じてしまうのが健康に対して無関心層の人々です。


今の日本は、健康に関心がある層が全体の3割、

無関心層が全体の7割というのが現実です。

厚労省が2003年から進めている国民の健康づくり運動「健康日本21」は

この10年間、国や自治体、たくさんの研究者や企業と一緒になって、

健康になれる取り組みを推進してきましたが、結果は変わらなかった。

我々が調査した5000人のデータから見えてきたことは、

無関心層は健康情報を取ろうとしないということ。

自治体の広報サイトなどで健康情報を掲載しても、

関心がない人は見ないし、講演会にも行かない。

世の中は健康ブームと言われていますが、

テレビや雑誌なども関心のある人しか見ないし買わないのが現状です。

 

 

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この無関心層の人々に、きっかけをつくることが重要になります。

それこそが、Smart Wellness Cityにおける、

ソフトとハードの仕組みです。


<後編(2013年1月15日更新予定)> へ続く……

 

 


 

 


kuno_0108.jpgProfile

くの・しんや 筑波大学大学院人間総合科学研究科教授、株式会社つくばウエルネスリサーチ代表取締役社長。1985年筑波大学体育専門学群卒業、92年筑波大学大学院博士課程医学研究科修了。92年 東京大学 教養学部保健体育科助手医学博士、96年筑波大学先端学際領域研究センター講師を経て、10年より現職。96年より茨城県大洋村と共同で行った高齢者を筋肉トレーニングで健康にするプロジェクトが大きな成果を生み、「NHK クローズアップ現代」で紹介され注目をあびる。02年に筑波大学発のベンチャー企業となる株式会社つくばウエルネスリサーチ設立し、「Smart Wellness City」構想を立ち上げる。


 

【筑波大学体育系久野研究室】
http://www.taiiku.tsukuba.ac.jp/~kuno/ 

 

【株式会社つくばウエルネスリサーチ】
http://www.twr.jp/

 

 


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