〜株式会社K.T.スカンクワーク代表取締役 /ファッションディレクター 照井加代子さん〜
「今日は、クラス会がある」「明日から友人と旅行に出かける」。
人は様々なオケージョンに応じた装いを意識して生活しています。
年齢を重ねてもその気持ちに変わりはありません。
装うことへの意識を失わず、ファッションの力を
より良い人生を送るための力とするにはどうすれば良いのでしょうか。
ファッションディレクターの照井加代子さんにお話をうかがいました。
3回に渡ってお届けします。まず、1回目は、60代と70代の
ファッションアイテムの買い方の違いについてです。
中高年のファッションを考える時に、現在の70代と60代では
買い方に大きな違いがあることに着目する必要があると思います。
70代はどちらかと言えば「人が勧めてくれたもの」を購入する傾向にあり、
一方の60代は「自分が選んだもの」を買いたい、
という気持ちを明確に持っています。
70代は、ハレの場で身につける洋服も普段着も
百貨店を中心に買っていた人が多くみられますが、
今の百貨店では、普段着にあたるような商品がなかなか見つかりません。
都心の百貨店で展開していたこの世代向けのブランドもどんどん縮小されて、
今は買いづらいと感じている人も少なくないでしょう。
60代は、同窓会などのちょっとしたハレの場に行く時の服は、
百貨店で捜そうと思いますが、大抵のものは、
郊外のショッピングセンターや量販店で十分に買えています。
ノンエイジで展開しているユニクロやZALAなどもすごく上手に使っていますし、
人によってはH&Mあたりも面白がって利用していますね。
とにかく購入チャネルの選択肢が驚くほど広がっているので、
一つのアイテムを買うにしても「もっと低価格で良いものが買える」と思えば、
別のチャネルにすぐチェンジできる選択眼を持っています。
私の義母は86歳になりますが、カタログを見ながら
結構いろいろな商品を買っていますよ。
以前百貨店にあって、今はもうなくなってしまった商品などは、
案外通販がカバーしているのだと思います。
この20年位で、ファッションアイテムの買い方は、本当に大きく変化しました。
60代の半ばに差し掛かった団塊世代には、様々なタイプの人がいますが、五年先、
十年先にどんな70代になっていくのか、
もっともっとリサーチする必要があるでしょう。
購買意欲は少しずつ低下し、行動範囲も狭まっていくにしても、
人口の多い層ですから、提供する側としては極めて重要なターゲットです。
ただ、残念ながら国内のアパレルは依然として20代や30代を中心に考えていて、
本格的な取り組みは見えてきていません。
※明日は、「機能だけに特化するのではなく、重要なのはデザイン」をお届けします。