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2013年10月28日 09:30
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資生堂ビューティートップスペシャリスト 原田忠 氏


次々と新商品が発売され、かつてない盛り上がりをみせる男性美容マーケット。異業種からの新規参入も目立ちます。しかし、未だ多くの男性ビジネスマンが“近くて遠いマーケット”と感じているのではないでしょうか。

そんな男性美容業界について学ぶため、イマジナスでは、資生堂にてメンズブランドを手がける原田忠氏にお話をうかがいました。


――資生堂ビューティートップスペシャリストの役割と、原田さんの活動について教えてください。

資生堂で美容に携わる社員1万2,000人の“頂点”に位置する称号であり、資生堂創立から140年の歴史に裏付けられたビューティーマインドを継承しながら、常に新しい美の価値を創造・発信する役割を担っています。

活動領域は多岐にわたり、宣伝広告のヘア&メーキャップや商品開発、人材育成、ソフト情報作成など、現場やデスクワークを行き来し、その中で今すべき自分のミッションを明確化し、同時にその先を見越して仕事をするよう心がけています。

最近では企画段階から、ビューティーディレクターとして参画し、宣伝広告やCMのビジュアル創りに関わることが多いです。

商品開発は先のトレンドを予測して数年後の発売に向けてスタートしますが、このとき頼りになりのが、肌感覚。データも確証もないなか、経験と現場の空気で“次はこうなる”という感覚を肌で読み取る。

最先端のファッションシーンでもある海外コレクションのバックステージや今現在のリアルな日本の都市を定点観測する中で見える兆しと肌感覚をマッチングさせ、キャッチした情報を開発メンバーと共有する作業を繰り返します。

世の中の時代性や共感性に訴えた新しい価値を商品に込めて、美の提案を発信することが資生堂ビューティートップスペシャリストとしてミッションだと感じています。


 

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――最近では「ウーノ フォグバー」が大ヒットしました。

霧状スタイリング剤「フォグバー」の発売は2009年でしたが、その開発は2007年以前にすでにはじまっていました。“2年後に流行するヘアスタイル”を予測し、ヘアスタイルありきで商品開発が進んだ、新しい取り組みでした。

ここしばらくの流れであった“無造作ヘア”の次は、フレッピーやトラッドのファッションに似合う“さりげなく自然なヘア”が来るという兆しが、肌感覚としてありました。

同時に、「フォグバー」発売まで期間を逆算し、2年後にターゲット層に入ってくる10代後半の男の子たちのマインドにも照準を合わせ、意識調査や嗜好、従来の整髪剤に対してのネガティブな部分を吸い上げ、まったく新しい商品価値を生み出したことが、ヒットにつながったと言えます。


 

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今夏にはリニューアルも遂げ、まだまだ進化中のフォグバー。

 

 


――原田さん個人のことをお訊きします。原田さんの美意識がどのように形成されていったのか、教えてください。

自然が豊かな群馬県の田舎に生まれましたが、美容師をしていた母親が努めて色彩豊かな記憶を作ってくれたように思います。山や川で遊ぶうちに大自然の色彩美を知らず知らずのうちに刷り込まれていたようです。

戦闘機のパイロットの夢を抱いて航空自衛隊に入り3年を過ごしますが、自分の原風景でもある育った環境の素晴らしさに気づき、人生を1度リセットとするよう美容の道に進みます。

退官したあとは美容学校で学び、都内でサロンワークを5年経験しました。転機となったのは、プロを対象とした資生堂のヘアメーキャップスクール「SABFA」に入学したことです。第一線で活躍するヘアメーキャップアーティストがそのまま講師として授業をする、贅沢な教育環境でした。授業内容もヘアメーキャップだけにとどまらず、色彩、造形、デッサン、ファッションの歴史など、多くの気づきの扉を開けてくれる――「ここから先に踏み込むかどうかはあなたの自由ですよ」というスタンスで(笑)。踏み込みたくなるに決まっているじゃないですか!

SABFAにいた1年間は、寝る間も惜しんで勉強しましたし、資生堂の入社試験を受けようと思ったのも、美の表現の可能性をもっと追求したいと思ったからだと考えています。



――原田さんがお仕事をされる上で、これだけは外せないという美容哲学を教えてください。

僕たちの仕事は目の前の“人”が美しくなるためのお手伝いをして差し上げること。その人をその人らしく輝かせ、外面だけでなく内面の心までも満たすことができてこそ、真の美容に携わる人間の使命であると考えています。相手のことを知ること、ライフスタイル、趣味、嗜好はもちろん、服やバックなどの小物を観察し、しっかりとしたコミュニケーションを通じて相手に歩み寄ることこそがその人を思いやる最初の一歩だと思います。

表現としての自分の作品(※美容表現や個展の作品群)を作るときは、そのアプローチは若干変わります。自分自身を掘り下げ、自分と向き合い、搾り出す作業(生みの苦しみ)。テーマやコンセプトを練り、自分がリーダーシップをとり、スタッフとのコミュニケーションや方向性を決め、撮影当日までメンバーを引っ張っていきます。

何をするにも“コミュニケーション”が最重要になります。

 


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  上が2004年、下が2012年のJapan Hairdressing Awardsグランプリ作品。初期の作品には原田さんの根底に根ざすものが色濃く表れ、近年のものはそれを昇華し次のステージで自己表現している。



 

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こちらは原田氏が「表現の可能性への挑戦」と話す、『ジョジョの奇妙な冒険』のアートプロジェクト。原作ファンも認めた恐るべき芸術性。話題を作る力にも優れる。



● 後編につづく。後編の配信は11月1日(金)です。