#02 東樋口 徹インタビュー


手作業感を見せたくない

K:最近ではペインティングもやられていますが、中心はシルクスクリーンですよね。シルクスクリーンを表現方法に選んだのはどうしてですか?

T:版画の集中講義っていうのを学部2年のときに受けて、そこで初めてシルクをやったんです。それで、こういうフラットな感じに刷れるっていうか表現できる技術があるんだっていうのがわかって。やっぱり手で描くとこう筆致であったりとか、そういうものが表に出ちゃうっていうのがずっとひっかかっていて。もうちょっとクールで無機質な感じに、なるべく手作業感っていうのを、手作業していても画面の上では見せたくないというのがあったから、僕にとって一番しっくりきて、よしこれだ!と思って始めたんです。

偶然みつけた手法

K:東樋口さんの作品は平面でありながら、インクの盛り上がりや質感が特徴的で立体的に感じます。

T:当時、シルクの非常勤で来ていた先生に、シルクスクリーンはいろんな版種の中で一番インクを厚く、一回でしっかり乗せることができる手法だと聞いて、じゃあ刷り重ねていけば、どんどん厚くなるんじゃないかなと思ったんです。

K:画面からはみだしたインクが自立しているのが面白いですね。

T:ある作品を制作したときに、偶然、画面からはみ出したインクが自立したかたちで残ったんですよ。で、残るんだったら、もうちょっとしっかりはじめから残す方向でできるんじゃないかと思って始めたんです。

K:こうして近くで見ると、刷り重ねられたインクの部分がボコボコしていて、なんだか不思議ですね。

T:これもまた偶然見つけた手法なんです。いろいろやっているうちに、あ、できた。って感じで。それから今までずっと続けているっていう。

気づくアート

K:東樋口さんの作品は、はっきりものを描いていないのも特徴的ですよね。それはなんとなく見ていて、あっ!て気づくアートというか、記憶と結びつけて作品を見てほしいっていう意思を感じるんですが、そういうコンセプトは最初から変わらないんですか?

T:昔は普通にちゃんと描いたりしていたんですど、いろいろやってみてやっぱりなんか違うなっていうのがずっとあったんです。まぁ、ちゃんとものを描くのがちょっと恥ずかしかったのかもしれないですけど。単純化したいっていうのがあったんです。あまり個々の表情というか、もの自体が持っている表情を説明的に描くのではなくて、自分なりに簡略化して特徴を捉えて、面白く作品として成立させられればいいなと。結局どういうモチーフでも、僕としては別に描いているもの自体に意味がある訳じゃないんです。例えばハサミとか女の人の裸とか。ほんとなんでもいいんです。ただ見てもらって、気づいてもらえるとうれしいなっていう。

人に見てもらわないと意味がない

K:表現するということは、あなたにとってどういうことですか?

T:生活の一部っていうのとはまたちょっと違う気がするんですけど…。もともと単純に絵が好きっていうのがあったから。絵が好きで、自分がこういうの面白いなって感じるものを表現というか、作品を作ることでみんなに見せていくっていうのが、単純に楽しいっていう。

K:インテリアとしてのアートとかインテリアとアートの関係ってどういう風に思いますか?飾られることに抵抗はない?

T:抵抗はないですね。作ったものは飾られるなり置かれることがなければ、誰の目にも触れない。ただ作って自分と誰かが所有しているだけで満足されるだけだと、結局自分が表現したかったことが誰の目にも触れないで終わっちゃうんで。人に見てもらわないと意味がないと思うんですよ。だから飾るっていうことは非常に重要だと。まあ平面描いているっていう以上、もともと飾られるってことは念頭に置いて作っているところもあります。やっぱり紙なんで、版画はだいたい額装するんですよ。その額装の仕方も、それはどう見せるかってことのひとつだから、とても重要なことなんです。

(T:東樋口氏、K:久保 2009年6月16日東京芸術大学東樋口氏アトリエにて)