#14 比留間 郁美インタビュー


手に職をつけなければだめ

 

S:陶芸を始められたきっかけを教えてください。

 

H:小さい頃、わたしテレビっ子だったんですよ。小学生のときに見ていた番組に、「焼き物探訪」というのがあって、テレビの前で正座して見るほど真剣に見ていました。その中で轆轤(ろくろ)をまわしている人を見たとき、なんだかとても気になってしまって。それからずっとやってみたいなぁって思っていたんです。

 

S:そんな小さい頃からなんて、なんだかすごいですね。

 

H:ただ単純に憧れていたって感じです。それから少しずつ真剣に考えるようになっていったんですけど、なぜかずっと「これからの時代は手に職をつけなければだめだ!」って思っていて。だから何か工芸的なものをやっていきたいなぁと思っていました。

その頃、そういう道に進むにはぜったい弟子入りしなくてはいけないと思い込んでいたんです。高校も行かずに陶芸家に弟子入りをしたいと両親に相談したら、反対されてしまって。母親に「美術大学に行ってみたら?」とアドバイスされて、なるほどそういう選択肢もあるのかって思ったんです。

 

S:それで、女子美術大学陶芸科に進学されたんですね。陶芸を学びはじめてどうでしたか?

 

H:楽しくてしょうがなかったです。同世代のひとたちが考えたり、感じでいることを知る事ができたのも面白かったですね。

 

S:学生時代にはどんな作品を作っていたんですか?

 

H:急須ばっかり作っていました。

 

S:急須ってすごく難しいんですよね。陶芸家のひとに聞いたことがあります。

 

H:そうなんです。教わっていた教授に「急須を作れると一人前だ」って聞いて。だから自分が納得のいく急須ができるまで、ひたすら作っていました。蓋の上に小さい動物がのっている急須とか、いろんな急須を。

 

S:急須もそうですけど、比留間さんの作品は食器など使えるものが多い印象ですが、それはどうしてですか?

 

H:生活にとけ込むものって、やっぱり一番触れるものなので。食事をするって独特の行為じゃないですか。

 

S:生きていく上で欠かせないですもんね。

 

H:そのときに出会うものって、特別でおもしろいなと思って。だからかもしれませんね。

 

 

どうやったら続けられるか

 

S:大学を卒業する頃には、陶芸家としてこれから生きていこうって決めていたんですか?

 

H:どうやったら陶芸を続けられるかっていうことしか考えていなくて。それで卒業後すぐに滋賀県にある「陶芸の森」レジデンスに参加したんです。

 

S:「陶芸の森」ってどんなところなんですか?

 

H:レジデンスなんですけど、アメリカ、ヨーロッパ、パキスタンやフィンランドなど世界各国の陶芸家が、一緒に生活をして、同じ作業場でそれぞれ作品を作ったり、時にはすごく有名な作家を招いて、その方がすぐ横で作品作りをしていたりという、本当に陶芸しかしなくていいっていう場所なんです。

20歳から80歳ぐらいの年齢層も、国もバラバラな人たちが集まっている環境で、とても刺激を受けました。

 

S:どれくらいいらしたのですか?

 

H:半年間滞在しました。3ヶ月から1年の間であれば、好きな期間滞在することができるシステムなんです。

 

S:影響を受けた人はいますか?

 

HTrees De Mits(トゥリース・デ・ミッツ )さんというベルギーの女性がいらして、臓器を表現した作品を作られていたんですけど、グロテスクではなくて本当に美しいんです。作品にアクリルガッシュで着彩していて、なんて自由なんだろうって驚きました。それから、Tapio Yli-Viikari(タピオ・ウリ・ヴィーカリさんというフィンランドの方はピンクでドットの陶器を作っていて、見たときにもっと思ったままに作っていいんだって思ったんです。それからいろんな国の陶器を見るようにしています。

 

S:ここで、ご自分の表現スタイルが見つかったのですか?

 

H:思ったのは、すごく自由でいいんだなと。日本の陶芸は型にはまっているところがあるんですけど、陶芸の森でいろんな人と触れ合って自由に作っていいんだと気がついたんです。

★陶芸の森 The Shigaraki Ceramic Cultural Park

滋賀県立陶芸の森は、やきものを素材に創造・研修・展示など多様な機能を持つ公園として、また、人・物・情報の交流をとおして地域産業の振興や新しい文化創造の場とするとともに、滋賀から世界へ情報を発信することを目的に整備され、平成2年6月に竣工、開設されました。

 

 

 

つながる瞬間

 

S:作品作りにおいてインスピレーションやアイデアってどうやって生まれるんですか?

 

H:旅が好きなんですけど、旅先で見たものとか行った場所とか興味を持ったものって、しばらくしてから何かとつながるっていう瞬間があって、そのときはそんなに深く考えていなかったもので、たくさん目にしたものが、後になってふわーっと思い出されたときに、作品を作ろうっていう気持ちになっていくんです。

 

S:おもしろいですね。思い出や記憶を表現している感じ?

 

H:そうですね。思い出してキーワードが見つかる瞬間っていうのがあるんです。

 

S:転写シリーズもどこか思い出とリンクするところがあるような気がするんですけど、この手法はいつからはじめられたのですか?

 

H「ピクニック」というテーマで作品を作ったことがきっかけです。 フランス語で「Pique-nique」には、「ありきたりなものを寄せ集める」という意味があって、 いろいろな既製品の絵柄を集めてコラージュしてみたのがはじまりです。

 

S:コンセプトもおもしろい。作品の構想を練ったり、轆轤をまわしたり、1日中制作しているのですか?

 

H:いろんなことをずっと考えてはいるけれど、陶芸って待ち時間も長いんです。待って、冷ましている間に、次に焼くものを削ったりしているっていう感じ。気長の人はある意味らくちんかもしれませんよ。

 

S:どこか料理を作っているのと似ている感じがします。

 

H:あぁ、すごく近いですね。煮込み料理しながら、オーブンでチキンを焼いて、ちょっとうっかりしてるとこげっちゃったみたいなね。

 

S:そうそう。ゆっくりじっくりだけど、目が離せない緊張感があって。ところで、これからトライしてみたいことはありますか?

 

H:海外のプロジェクトで、伝統のあるプロダクトの会社が若いデザイナーを起用してユーモアのある作品を作っていたりするんですけど、例えば、定点の監視カメラを転写したセーブルのお皿とか、お皿の上に動物がずどんと載っている作品とか。個人の力だけではできない、大きな会社とコラボレーションして初めてできる、そういう何か大きなことをしてみたいなって思います。

 

S:海外に比べて、日本の陶芸はやっぱり考え方が固い?

 

H:う~ん、ユーモアが足りない気がするんです。わたしは遊びがあるような、衝撃のあるような陶芸があってもいいかなと。そうすれば、もっと興味をもつひとが増えると思うし。そういうことをやっていきたいなと思っています。

 

S:たのしみにしています!それでは最後の質問です。比留間さんにとって、ARTとは何ですか?

 

H:一番むずかしい質問ですよね。ずっと考えてみてもきっとずっとわからなくて、わからないから自分の中をどんどん掘り下げていくことがアートなのかなと。陶芸と同じですね。きっと自分の中にしかこたえはないと思います。

 

 

やさしく、丁寧に話す佇まいからは

毎日、焼き物とひたむきに向きあっているひとの

あたたかさがあらわれていました。

インタビューの数日後、

比留間さんは北海道のギャラリーで開かれる個展へ。

日本に、そして世界に

彼女が生み出す素敵な陶芸の世界を愛すひとが

たくさんいます。

まるでおとぎ話をきいているような

絵本を読んでいるような

そんな気分になる比留間さんの世界を

どうぞお楽しみください。

H:比留間 郁美氏  SSAM 久保・森・奥村 201163日 angepatioにて) 

 

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