#09 小西菜津子インタビュー


日本美を感じさせる「間」。

E:これ油絵ですよね?

Ko:はい、油絵です。

E:大学に入る前から油絵を描かれていたんですか?

Ko:はい、高校の頃から。作風は全然違っていたんですけど。

E:油絵は、何の迷いもなくやろうと思ったんですか?

Ko:そうですね、わりと日本画とかよりは油絵の方がメジャーというか、始め易いと思うんですけど。

K:へぇ、意外だな。

E:油絵って細かいタッチが難しそう。この作風になる経緯というのはどんな感じなんですか?

Ko:高校生の頃は、ほんとに「油絵」って感じでゴテゴテな世界を描いていたりしていたんですけど、今の作風になる最初のきっかけは大学の課題だったんですよ。「室内風景」という課題だったんですが、それが自分にすごく合っていて。それから自然とこういう作風になってきて、どんどん内容は変わってはいるんですけど、わりとスタイルは一定ですね。

K:色合いがすごく渋い。それは昔から?

Ko:そうですね。高校の頃のゴテゴテしている時も結構渋い色が好きだった。

E:共通するテーマはあるんですか?

Ko:何だろう・・・。現代アートって思考の部分を大事にしていたり、空間を体験したりというのが結構あると思うんですけど、私はほんとに「昔からの平面」って感じで、こういう四角の中にどうやってものを配置するかとか、色とか形とかそういう単純なことっていうのを描きたいと思ってやっています。

E:なんで単純にしようと? 

Ko:何だろう・・・。

E:そっちの方が好きだから?

Ko:そうですね。予備校時代は「変なこと」をいっぱい考えなきゃいけないと言うか、自分なりの視点っていうのをすごく押し出して絵を描いていかなきゃいけなくて。でも大学に入ったらもうそんなことしたくなくなってしまって、もっと純粋に絵を描いたらいいんだ、と思ってしまって。

E:インスピレーションっていうのは、どこから来るんですか?

Ko:インスピレーション・・・? 日本美術が本当に好きで、そういうのを見て描いたりもします。絵巻物とかも見ますし。

K:やっぱりそういう片鱗が感じられますよね。最初に見たときに、なんか日本ぽいと思いました。色合いもそうなんだけど、空間の使い方とか西洋のものではないし、「日本の美」という感じがして。「間」をすごく感じる。
あと、キャンバスのサイズが自由なのが面白いなと思いました。

E:「紅掛空色」とか・・・、どうしてこういうタイトルにしようと思ったんですか?

Ko:これは色の名前です。日本の伝統色が載っている本があって、その中から選びました。

 

「四角の中」に立ち現れる、目に見えないもの。


K:描かれているモチーフは全部、画面から切れていますね。

E:そうそう、この切れているのは何でなんでしょう?

Ko:やっぱり、絵ってこの四角が大事だと思っていて。その中にどう配置するのかってことなんです。一部だけ見えているとその先を想像したりするじゃないですか。ここに人がいるのかなって思ったら、その線(画面の縁)がとても大事になってくるので、四角とか「間」とかもすごく強調できるかなと思って。

E:最初、描こうって思うときにこういう構図が浮かぶんですか?描いていくうちに出来上がる感じなんですか?完成形が先に頭にあるわけじゃなく?

Ko:いえ、完成形は先にあります。

E:具体的に、例えば、何の風景、何をモチーフに何を描いているっていうのはありますか?

Ko:うーん、あるんですけど。あんまりかっこいいことではなく、ほんとに家でグダグダしていて、マックの画面に映った自分を写真で撮って「これ使おう」って思ったり。

K:いっぱい描いてきていると、ものの形とか記憶していたりするじゃないですか、記憶を描く?

Ko:写真も見て描いたりもするんですけど、見ればもっと見られると思うんですけど、ある程度まで描いたらリアリティを追求をしようとは思わないですね。

E:小西さんの作品は、ちょっとドキドキする感じですよね。色っぽいというか、生っぽいというか。

K:日本画みたいなキレイな線が、艶っぽいのかなぁ。こうしてみると、女の人が多いですよね。それはご自身が女性だから?

Ko:男の人ってどうやって、絵にしたらいいのか分からないんですよね。

E:描き方とか、手法とかで独自の自分らしさとか、こだわっていることってあるんですか?

Ko:色のムラが出来るのがほんとに嫌です。

K:この色面は塗っているんですか?

Ko:ええ、全部、塗っています。

E:ほんとキレイですもんね。そこが肝ですよね。

壁もなければ地面もなければ、何というかブラックホールみたいな。

K:この世界観で、ムラというかテクスチャーが出てしまうと白けちゃいそうですよね。

Ko:自分の気持ちとしては最初に「部屋」を描いていたときと同じで、今でも描いているのは室内なんです。以前の作品では分かれているところを描いたり、多少室内っていうのを説明していたんですけど、そういうのを省いたりして少し変化をつけています。

E:そう言われると、今回のシリーズは、部屋だけどものが全然ない。この余白みたいな部分にこだわる理由とかあるんですか?

Ko:やっぱりそこがテーマなんだと思うんですよね。描いているのは、ものとか人なんですけど、表現しているのは余白の部分なのかなと思ったりしています。

K:わたしは絵画を観てあまり時間とか感じることって少ないのですが、小西さんの絵には時間と空間を感じました。

E:確かに、小西さんも事前のアンケートに「自然とそこに時間や音や湿度といった目には見えない物たちも表れてくるかも知れない」と、ご自身の作品について語っていますよね。

Ko:いちばん最初の課題で出たときのテーマが「室内風景」で、「時間と空間」っていうのがサブテーマでしたので、そこから続いているのかも知れないです。

E:やっぱり油絵じゃなきゃこの世界は出ないんですか?

Ko:うーん・・・

E:油絵にこだわっているわけではない?

Ko:いちばんの理由は油絵の具を使い慣れているから。これも日本画っぽくやったり水彩をやってみたりするんでけど、あんまり変わらないんですね。結果が。結局マットにしてしまうので、油絵でいいのかなって。

E:「マット」という言葉はしっくりきた。

Ko:これを版画とか日本画ですることも出来ると思うんですけど、油絵でやることで、マットにしたくてやっているんだっていうことがより伝わると思っています。



描き古されたテーマで、狭いところで。

E:描くときに絶対こういうのは描きたくないとか、こういうことは守っているというような自分のルールなどあるんですか?

Ko:あんまり特別なことをするのが嫌いで・・・。すごく普通のことを描きたいっていうのはあります。

E:ちょっと意地悪な質問かも知れませんが、小西さんにとって普通とは? 日常の風景、いつもの時間ってことですか?

Ko:初めに室内を描いていて、次に人を描いていて、今は植物を描いているんですけど、わりと絵を描く時のテーマとしてありがちというか、分かりやすいテーマだなと思っていて。
描き古されたテーマの中で人それぞれの違いが出てくるっていうのは・・・、そういうことが絵画なのかなと思います。
インスタレーションとか今多いですし、だいぶ芸術の幅が広がってきているんで、逆に「狭いところ」でやりたいっていう感じがしていて。

K:だから純粋な感じがするのかな。なんか奇を衒っていない感じ。

E:小西さんにとって表現することとは?

N:何でしょうね・・・。あまり意識していないです。

E:SMALL ART MUSEUMのテーマである生活の中のアート、インテリアとしてのアートについてはどう思いますか?

Ko:私が目指している日本美術、とくに屏風とか襖絵などはやっぱりインテリアとしてのものだったと思うし、私は家に飾ってほしいと思って描いているわけではないんですが、飾られることに抵抗はないです。

E:描いているものを誰かに届けたいとか、いろんな人に観てもらいたいと思いますか?

Ko:良いのか悪いのか分からないんですが、「表現する」とか、人に何か伝えるとか、あまり意識していなくて。描いている時って無心になるじゃないですか、あれが気持ち良くて描いている感じなので、もしかしたらこれはただの道楽なのかなとか思ったりもするんですけど・・・。

E:描いた後に人にどう見られるかっていうのはあまり気にしていない?

Ko:そうですね。

K:ところで、描いているときはいつまででも描いていたいという感じなんですか?

Ko:そんなことないです(笑)。早く出来上がったのを見たい。

K:これで最後だって決めないと終われないんじゃない? そういう区切りってどうやって決めるんですか?

Ko:私は「これで最後だ」って決めるといつも失敗していて。「そのうち終わるのかな・・・」と思いながら描いていると、「あ、終わった・・・」と、いうことが多いです。
もしかしたら、まだその先が自分には描けないから終わるという部分もあるかも知れないんですが。

E:そうなんですね。

これからの活動の予定、野望などありますか?

Ko:今、お絵描き教室で子供たちに絵を教える仕事をアルバイトでやっているんですけど、小さい子と絵を描くのがとても面白い。

E:そっちの方に進むんですか?

Ko:そうなるかも知れないです。

(Ko:小西氏 E:遠藤 K:久保 2010年6月9日 弊社にて)

 

interview09.jpg