#04 鎌田 奈穂インタビュー

 

「光」に導かれるような師匠との出会い

E:もともと美術系の学校に行っていたんですか?

Ka:美術の予備校でずっと油絵をやっていたんです。その時期に住んでいた目白に、好きな古道具屋さんがあってよく行っていて、たまたまそこで後にお師匠さんとなる(名古屋の金工作家・長谷川竹次郎氏)のDMを見つけたんです。それを見て、(竹次郎氏の)仕事場に何度か遊びに行くうち、たまたま弟子に空きが出て「やってみない?」って声をかけてくれた。それが金工の世界に入ったきっかけです。

K:えぇ!向こうから言ってくれるってスゴイですね。

Ka:女の子の弟子は初めてだったらしいんですが、私が何も金工を勉強したことがなかったから逆に受け入れてくれたようです。

E:お師匠さんのDMを見たとき、どんな感じでしたか?

Ka:作品がいくつか載っていたんですが、「もう、これ!」って思いました。「気になる」って、その古道具屋さんの人に言ったらすぐに、お師匠さん夫婦を紹介してくれて会うことが出来ました。そのまま気づいたら弟子になっていて。

E:他に弟子たちはいたんですか?

Ka:私がいた時は誰もいなくて、職人さん1名とお師匠さん夫婦だけ。3名の方に全部教えてもらってラッキーでした。いまはちょうど息子さんが海外から帰ってこられて跡継ぎとして勉強されています。

E:弟子の生活とは、どういうものなんですか? 

Ka:まず朝行って、仕事場を雑巾掛けしてお庭も掃除して。その後に集まって朝のお茶を点てるんです。一服したら正午まで仕事をして昼食作りを手伝って食べて、お昼1時ちょうどからまた仕事を始めて、3時にまたお茶を一服点てて夕方5時には終業する。

E:お師匠さんからどういう風に技を習得したんですか?

Ka:もう…、見て覚えるという感じですね。

初日から金槌を持たされて(笑)ある程度叩けるようになったら「やかんを作って」とか頼んでくれて。お師匠さん、ほとんど誰とも話さないんです。仕事についても何も言わないんですけれど、「古い物」については話して教えてくれて、たまに蚤の市に連れて行ってくれたり。

E:鎌田さんが作ったものに対してお師匠さんは何と言ってくれていたんですか?

Ka:特にないんですけど、私が作ったもので良く出来たものだったら、それを自分用にしてくれたこともありました。とても嬉しかったですね。贅沢な教え方をしていただいたと思います。

E:お師匠さんの姿を見て、「金工ってこういうことなんだ」って感じたことはありますか?

Ka:うーん…、すごい「ずーっと、続ける」という雰囲気が滲み出ていて…。地味な作業なんですけど、ずーっと続けたいし、続く仕事だなっていうのを感じました。

E:お師匠さんとの印象的な出来事は?

Ka:すべてが印象的だったんですけど。普段は寡黙なのに、たまにポロッとひとこと言うことがその時欲しかった言葉だったりして。私が弟子生活最後の名古屋を出て行く日に、「成るように成る」って言ってくれたんです。それを言われるまでは、すごく不安だったんですが、その言葉で本当に楽になった。

K:予備校時代にお師匠さんのDMに出会われたときって、「光」が見えたって感じですよね。その光に導かれた結果いまの鎌田さんがいると思うんですか、ご自身で振り返ってどうですか?

Ka:やっぱりあの時、すごいクリアになったというか・・・。予備校で絵を描いていた頃は違和感とか迷いがあったんですが、DMに出会ったとき先の道筋がクリアになりました。

K:光を見つけたこと自体が才能っていう気がします。

 

丁寧なものづくりの気持ちを忘れたくない。

E:いま作品ごとにテーマを付けていらっしゃいますよね。

Ka:「muslin」(アクセサリーのシリーズ)は、インドの布の名前から付けたんですけど、その布の制作工程が昔ながらの作り方で時間をかけて一つひとつ糸を紡いで、時間がかかっても丁寧に良いものを作るんです。それがすごく好きで、そういう丁寧なものづくりの気持ちを忘れないでおこうと思って、作品のテーマにしました。

E:2009年からは「linka」というアクセサリーのシリーズを始められていますね。

Ka:これも古いものにまつわるんですけど、中国の花から名づけたテーマです。しなやかな曲線の蓮の紋をイメージしていて。蓮の紋の、長く大切にされる、おおらかな強さを表現しています。

E:この古いボトルとキャップ(蚤の市で見つけた古い瓶に自作の蓋をつけた作品 エキシビジョンページ参照)は、棗(なつめ)ということですが、ごめんなさい、棗って?

K:茶道具ですよね。お茶の葉を入れる器。

E:へぇー、このボトルが茶道具って新鮮ですね。

Ka:それに限らず、「旅持ち」っていう外で楽しむお茶道具を作っていて。菓子入れなども作ってます。

E:ルールにとらわれず自由に作っているんですね。これらはもう生活の中でガンガン使ってほしい…?

Ka: はい、ガンガン…(笑)

E:美術作品というより、用品を作っているということですね。どういう人に使ってほしい、というのはありますか?

Ka:いや、もう誰でも。そこで普通に古くなっていけばいいなって思います。

 

誰かの手に渡った作品が、また新たな時間を重ねていく。

E:作品を作る上でのルールはありますか?

Ka:ルール…(しばし考えて)、丁寧に考えて仕事をするということでしょうか。

K:作品がすごく繊細だから、「大切に使おう」って思わせる。

E:作品が誰かの手に渡って、どういう風に古くなっていくと思いますか?

Ka:使う人によって変わると思いますけど、絶対に時間は経つので、凹んだり傷付いたりしても、またそれで楽しいんじゃないかな。

K:自分の手を離れて時間を経た作品をいつか見てみたいですよね。

Ka:ああ、見たいですねぇ。

K:ものが持っている時間に導かれて、それに鎌田さんがまた新しい時間を吹き込んで作品になっていると感じます。ものに導かれている感じ。

E:将来の夢とか、こんな作品をいつか作りたいとか、ありますか?

Ka:ないです(笑)。本当にその時その時を地道に…。いまは自宅マンションで作業しているから音の問題で大きいものはつくれないけど、いつか大きい作品も作りたいなぁ、と。ずっと同じものはやりたくない、という思いはあります。変わっていけるのがいいな、と思います。

(Ka:鎌田氏 E:遠藤 K:久保 2009年12月26日 鎌田氏の自宅にて)

 

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