15 cookieboy 夏山 孟浩インタビュー


クッキーというキャンバス

S:ホームページに「僕は、クッキーというキャンバスを見つけた」という一文があって夏山さんの作品を見ていると、「なるほど」と思うんですけど、改めて聞かせてください。どうして、クッキーでアート表現をしようと思ったんですか?

N:あの文章!自分ではほんとはちょっと照れくさいんです。実は、僕に「cookieboy」という名前をつけてくれたVERO TWIQO 野村 知紗さんが書いてくれた文章で。彼女は僕の高校の先輩で、(部屋のあちこちを指差して)この鏡とか、玄関に置いてある靴とか作っている人なんです。とにか くパワフルで、ものづくりが好きなひと。この鏡(クッションで縁取られている)は『Mt.Hari』という、針山をイメージした野村さんのブランドのもの なんですけど、僕のデザインした生地で作ってくれたんです。

S:すごくかわいい!いいですね、自分と同じ感覚の人がすぐそばにいて。

N:彼女とは好きなものがとても似ているんです。お互い派手もの好き。高校の頃はよく一緒に買い物に行ったり、遊んだりしていました。でも、卒業してから は疎遠になっていて。僕が東京に出てきてから再会して、以前にも増して仲良くなりました。あるとき、彼女の展示会にクッキーを焼いて持って行ったんです。 ほんとにとっても喜んでくれて。展示会はいつもギャラリーで開いているんですけど、そこのオーナーさんにも気に入っていただきました。あのとき、とてもう れしかった。それが、今の活動のきっかけです。そのギャラリーでの次の展示には、一緒に僕の作品を展示させてもらえることになって。

Scookieboyはとても自然に誕生したんですね。でも、高校の頃はテキスタイルを学ばれていたんですよね?

N:実家が西陣織をやっていて、僕はファッションに興味があったんですけど、ファッションのもとになるテキスタイルを学びなさいと両親にすすめられたんです。実家に帯を作る工場があって、そういうのを見ていたら、布から始めてもいいかなって。

S:大学でもテキスタイルを続けて学ばれたんですよね。

N:織りじゃないんですけど、シルクスクリーンを好きになって、学校ではずっとシルクをやっていました。

 

食べものを作るたのしさ 

S:テキスタイルを学んで、ファッションブランドを立ち上げたり、アパレルよりの活動をされていましたが、その後プロフィールには「パン屋で修行」という経歴が。どうして急に食の方にシフトされたんですか?

N:東京に出て来たくて、就職活動していた時に、こども服のテキスタイル部門に合格したんです。でもなんか、違うなーと思って断りました。でも東京には出 てきて。バイトしながら暮らしていたんですけど、自炊し始めて、食べものを作る楽しさを知りました。始めはお菓子を作って友達にプレゼントしたりしていた んです。それがとても喜ばれるようになっていって。当時、マフィン屋さんやパン屋さんで働いていたんですけど、そういうお店はベーシックなものしか作らな い。働きながらも個人の制作として(今みたいな)クッキーを作っていたんです。でも個人的な活動は勤務先で歓迎されなくて。じゃぁ、ひとりでやってみよう と決心して、本格的に制作し始めたんです。

S:きっと、もともと何かを作るのが好きなんですね。

N:作ることが苦じゃないので、ずっと作っていられる。勉強もなんも出来ないし、作る事しかできないんです(笑)

S:だから強いんだと思うんですけど。それに何より、キャラクターの魅力っていうんでしょうか、人を惹き付ける力があるなぁって、思うんです。影響を受けた人っているんですか?

N:うーん、あんまりいないんですよね。でもやっぱり、母ですかね。書道の先生をしていて、服も作れるし、絵も描けるし、何でも自分でする人だったので、影響が大きいのかなって思います。

 

人のやらないことをやりたい

S:ワークショップも、内容がいつもおもしろいですよね。

N:人のやらないことをやりたいなっていうのがあって。クッキーのワークショップは他にもたくさんあるけど、教室って感じでプロセスを丁寧に教えるのではなくて、僕は自由にやってくださいと(笑)。参加してくれたひとにまかせている部分が大きい。

S:それが、いいですよね。それぞれの感性を引き出すっていうか。こどものお絵描き教室みたいで。
クッキーボーイになっていなかったら何をしていましたか?

N:(しばらく考えて)テキスタイルかな。僕のもう一つの夢なので。布がメーター売りできたり。今はcookieboyとして活動しているので、クッキーを使った布をやりたいなと。

S:すぐにでも実現しそうですね。たのしみです。
クッキーに関してですが、お友達へのプレゼントから始まったものが、今や、いろんな人の贈り物になり、展示の装飾になったり...こんな言い方はちょっと 違うかもしれないけど、クッキーでの表現はもう行けるところまで行っちゃったんじゃないかなと思ったりするのですが、今後の活動について教えてください。

N:モチーフとしてはやり尽くしてはいないですけど、作りたいものは表現できる様になってきたので、それとはまた別に、自分が本当に表現したいものをし ぼって、もっとマニアックにやっていってもいいのかなと思っています。今ちょうど、本を出版することになっていて、マニアックなものにしたいなと。数社の 出版社からオファーをいただいたんですけど、レシピ本を作ってほしいというオーダーばかりで。でも僕はレシピ本は出したくなかったんです。

S:レシピ本なら、他の人でもいいと思うんです。cookieboyだから作れる本を、私だったら見てみたい。

N:そうそう。僕は作品集みたいな、絵本みたいなものを作りたいと思っていて。そういうやりとりを何度か経て、やっとOKが出たんです。本のデザインは僕が大好きなデザイナー、AMDRの村上 周さんにお願いすることも決まりました。ほんとに楽しみです。

S:わくわくしますね。どんな本になるんだろう。たのしみ。
先日、deux poissonsさんで七宝作家の方とコラボレーションされましたが、今後何か新しくコラボレーションしたり、挑戦してみたいことってあるんですか?

N:七宝も焼き物でしたけど、陶器とかやってみたいなと思っています。

S:陶器、見てみたいです!クッキーも陶器も同じ焼き物。なんだかおもしろいですね。

 

作りたいものを作っているだけ

S:では、最後の質問です。
クッキーボーイさんにとって「アート」とは何ですか?

N:「アート」!!??(笑)「アート」ってよくわからないものじゃないですか、言葉的にも、物としても。だから僕は「アート」という言葉が好きじゃなく て、見て「アーティスティックだな」っていうのはいいんですけど。僕は自分が作るクッキーを「アート」と思って作っているわけじゃなくて、作りたいものを 作っているだけなので。

S:それが「アート」なのかなって思いますけど。自然発生的な。それってとてもしあわせなことだなと思います。

N:そうですね。こういうことが仕事になっているっていうのは、ほんとにうれしい。でも東京じゃないと無理だなって思います。

S:これからもずっと東京で?

N:そうですね、発表の場もたくさんあって、いろんな人と出会える東京が僕には向いている気がします。


終始、笑顔で話す夏山さんはなんだか、ほわほわとした
日だまりのようなしあわせのオーラに包まれていました。
NY
にもいつか行ってみたいと話していた夏山さん。
今後の活躍が楽しみです。
甘い香りと日だまりとお土産のクッキー。
いっぱいしあわせな気分をいただきました。
cookieboy
さんの作品展、どうぞご覧ください。


N:夏山 孟浩氏  SSAM 久保・奥村・森  2011824 cookieboyアトリエにて)

 

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