2011.5.31更新 

 

きょうの絵本

 

『リディアのガーデニング』

 

 

 

『ティールグリーンインシードヴィレッジ』の種村由美子さんから

 ご紹介いただいた2冊目は、アメリカ人女性サラ・スチュワート

文に夫デイビッド・スモールが絵を描き1998年のコールデコット賞

オナー(次点)ブックに選ばれた作品『リディアのガーデニング』

です。 

なお、コールデコット賞(Caldecott Medal)とは、アメリカで前年

出版された絵本の中でもっともすぐれた作品の画家に対して年

に一度贈られる賞。1937年にアメリカ図書館協会によって創設

され、翌年から授与されだしました。

賞の名前は19世紀イギリスの絵本画家、ランドルフ・J・コールデ

コットにちなんでいます。優れた児童文学の作者に与えられるニュ

ーベリー賞と並んでアメリカで最も権威のある児童書の賞で、その

オナーブックとは次点候補に授けられる名誉ある賞です。

ちなみに前回ご紹介したバージニア・リー・バートンの『ちいさいお

うち』は1943年にコールデコット賞を受賞しています。

 

 

 

 

  リディアのガーデニングのサムネール画像のサムネール画像

 

『リディアのガーデニング』

サラ・スチュワート/文 デイビッド・スモール/絵 

福本友美子/訳 アスラン書房/刊

 

 

 

舞台は1930年代のアメリカ。大恐慌によって両親が失業した

主人公の少女リディア・グレース・フィンチは、暮らし向きがよくなる

まで家族から離れて、一人だけパン屋を営むジムおじさんのところ

に居候させてもらうことになります。

でも、ジムおじさんはいつも気難しそうに眉間にしわを寄せにこり

ともしない人。お店も質素で殺風景でした。 

そこで、ガーデニングが趣味だったリディアは、少しずつお花で

お店の中や外を美しく飾ることにしました。

さらに実家から持ってきた花の種やクリスマスプレゼントとして

おばあさんが贈ってくれた球根も植えます。 

春になる頃には、それらがいっせいに芽吹き、花を咲かせ、お店

劇的に変わっていました。

 

お店で働く人たちとはすぐに仲良しになりました。近所の人やお客

さんたちまで「ガーデニングのリディア」と呼んでくれ、花を植える

コンテナや家の植物などを持ってきてくれるようになりました。

 

今やお店は花であふれんばかり。唯一やり残した仕事は、

おじさんににっこりしてもらうこと。リディアはそのために秘密の

計画を立て、その日が来るまでおじさんに見つからないように

こっそり準備します。

そしていよいよ準備ができたその日。

「美しいものについて、今まで教わったことをぜんぶ思い出して

作りました。」リディアが家族に宛てた手紙の一節です。

 

胸のあたりがほんわか温かくなる文章だと思いませんか?

この一節で、リディアの心根の美しさと、家族がリディアを大事に

慈しんで育ててくれたことがわかります。

そして、ジムおじさんをにっこりさせたい一心で作った秘密のもの

何なのか、猛烈に知りたくなります。

はたして、ジムおじさんはそれを見てにっこりしてくれたのでしょう

か?

 

絵本の中ではジムおじさんは最初から最後まで、一言も発しない

のですが、ちょっとしたしぐさによって少しずつリディアに心を開い

ていく様子がわかります。心なしか口もとがだんだんほころんで

いくようにも見てとれます。

そして最後の見開き。圧巻です。おじさんのリディアをいとおしく

思う気持ちがあふれんばかりに描かれていて、思わず熱いものが

こみあげてきます。

 

親の失業、家族との別れ、気難しいおじさん、陰気な環境。普通

の人だったら絶望的と言える状況にありながら、持ち前の明るさ

と、美しいものを美しいと思える素直な心、そしてまわりの人たち

を喜ばせたいと思い実際に行動を起こす勇気。

小さな少女リディアにハッと気付かされ、自分もたとえ逆境にあっ

てもこのようにけなげでありたい、楽しい人でありたいと強く思い

ました。心の有り様ひとつで、人生がバラ色になるかグレーのまま

か。そして、本当の美しさを知っているということの大切さをあらた

めて気付かされた絵本でした。

今、悲しみを感じている友がいたら、この絵本のことを教えてあげ

たい。そう思いました。

 

 

 

●サラ・スチュワートと夫デイビッド・スモール夫妻について

(『リディアのガーデニング』プロフィール欄より抜粋)

 

サラ・スチュワート(Sarah Stewart)

 

米国テキサス州育ち。子どもの頃、やせっぽちで近眼でひどい

ずかしがりやだった。家にお客さんが来ると、ぬいぐるみと

お気に入りの本をもってクロゼットに逃げ込んでいた。

ほかに図書館と祖母の庭が安心していられる場所だった。

静かなところで一人で過ごすのが好きなので、今でも庭と図書館

はお気に入りの場所である。5月の初めから霜が降り始める頃

まで、ほとんど毎日庭仕事をし、晩秋から冬の間は書斎にこもって

書いたり読んだりして過ごしている。

 

デイビッド・スモール(David Small)

 

米国ミシガン州デトロイト育ち。少年時代の体験の中で、芸術家と

しての現在を作るうえで影響があった3つあるという。

校外学習で訪れた美術館で見た、メキシコの画家ディエゴ・リベラ

力強い壁画「デトロイトの産業」。

X線技師だった父が働いていた病院の、一種独特な雰囲気の中

かいま見た生と死。

春休みのたびに訪れたインディアナ州の祖母の家。日中は戸外

過ごし、夕闇が迫ると祖父と停車場に蒸気機関車を見に行っ

た。テレビ無しに育った子ども時代と、その頃の田舎の生活を

体験したことを幸運だと思っている。

現在、ミシガン州セント・ジョセフ川の近くに夫婦で住んでいる。

 

<夫妻が共作した絵本作品>

『The Money Tree』 (1991年)

『エリザベスは本の虫』 福本友美子訳 アスラン書房刊 (1995年)

『リディアのガーデニング』 福本友美子訳 アスラン書房刊 

(1997年、コールデコット賞オナー賞)

『The Journey』 (2001年)

『ベルのともだち』 福本友美子訳、アスラン書房刊 (2004年)

 

(ミヤタ)

 

 

 

 

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2011.5.30更新 

  

新企画「きょうの絵本」スタート!

 

バージニア・リー・バートン作

 

『ちいさいおうち』

 

 

 

先日訪問させていただいた絵本屋さん『ティールグリーン イン

シードヴィレッジ』店主の種村由美子さんに、絵本のチカラ

プロジェクトにおすすめの絵本を3冊うかがいました。

本日から「きょうの絵本」として3回にわけてご紹介いたします。

また、これから先も継続して絵本屋さんや作家さんに取材させて

いただいたり、当プロジェクトの研究員が出会って感動した本

などを頻繁にご紹介していきたいと思います。

 

このブログを読んでくださった皆様も「私もこの絵本が好きでした」

とか「素敵な絵本を見つけました」などのご感想や新たに出会った

素敵な絵本のことなどをぜひコメント欄を通じておしえてください。

お待ちしています!

 

 

 

 

ちいさいおうちのサムネール画像

 

『ちいさいおうち』

バージニア・リー・バートン/作 石井桃子/訳 岩波書店/刊

 

 

今日ご紹介する絵本は、種村由美子さんが絵本の世界に興味を

もち、最初に探し求めたアメリカの絵本の黄金時代を支えた作家

たちの一人、バージニア・リー・バートンの代表作です。

 

20年ほど前、お子さんと一緒にこの絵本を初めて読んだとき、

種村さんは特別の驚きと感動を覚えたそうです。なぜなら、一軒の

小さい家を中心に、移り変わる歳月の流れ、家のまわりの環境の

変化がみごとに描かれていたからです。

 

絵本のチカラプロジェクトの研究員ナカガワも好きな絵本として

この『ちいさいおうち』をあげています。

 

主人公は静かな田舎の丘の上に建てられたきれいで丈夫な

「ちいさいおうち」定点観測のように全ページがこの家を真正面

からとらえた同じ構図で描かれていきます。

 

最初、「ちいさいおうち」は周囲ののどかな光景や移り行く季節を

楽しんでいました。ひなぎくの可憐さや動物たちの愛らしさなど、

まわりの描写が生き生きとして楽しくて、読む私たちもその景色の

中にいるようでワクワクします。

 

「ちいさいおうち」はたまに遠くの街のあかりをながめて、憧れと

興味を覚えることもありました。ところが自動車が現れたのをきっ

かけに、おだやかな生活が一変します。開発がどんどん進み、

丘は切り崩され街が出来、やがて両隣には高層ビルまで建って

しまいます。今では誰も「ちいさいおうち」に住んでくれません。

 

「ちいさいおうち」は自然にあふれていた昔をなつかしんで悲しい

気持ちになり、身も心もボロボロになってしまいます。ところがある

日、その前を偶然通りかかった女の人(実はこの家を建てた人の

孫の孫の孫でした)が、「ちいさいおうち」を広い田舎に移して救っ

てくれました。

 

自然の中に戻れた「ちいさいおうち」に“笑顔”が戻ったように見え

て、私たちもほっとします。

 

種村さんは、子どもたちに初めて「社会」というものを教えてくれた

絵本だったと思われたそうです。そしてそれまでの絵本に対して

の認識が大きく変わった1冊でもありました。大人にとっても、この

絵本は「人間の幸せって何だろう」「本当の豊かさって何だろう」と

いうことを鋭く問いかけてくる凄い絵本だと思います。

そして「夜は暗いものなんだ」という当たり前のことにあらためて気

付かされます。

 

1942年に発表された古い作品ですが、今の日本の状況と照らし

合わせ、さらに深く考えさせられました。

 

 

●作者バージニア・リー・バートンについて

(フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』より抜粋)

 

バージニア・リー・バートン(Virginia Lee Burton, 1909年~1968年)。

米国マサチューセッツ州生まれの絵本作家。出版した多くの絵本

アメリカ絵本の古典とされている。

奨学金を受けてカリフォルニア美術学校で絵画を学ぶ。そのかた

わらバレエを学び一時はダンサーを志したが、パートナーだった父

親が骨折したことで断念。1931年、ボストンで教えを受けた

ギリシア人の彫刻家と結婚し、海辺の村フォリー・コーヴに住む。

野菜や果物を栽培したり羊を飼育したりなど自然を慈しんだ生活

ぶりがそのまま絵本の創作主題につながっている。素朴さや自然

との調和を尊重する一方で、文明のもたらす自然破壊に対して

懐疑を投げかけていた。

 

<主な絵本作品>

『いたずらきかんしゃ ちゅうちゅう』 

村岡花子/訳 福音館書店/刊(1937年)

『マイク・マリガンとスチーム・ショベル』 

石井桃子/訳 童話館出版/刊(1939年)

『名馬キャリコ』 瀬田貞二/訳 岩波書店/刊(1941年)

『ちいさいおうち』

井桃子/訳 岩波書店/刊(1942年、コールデコット賞受賞)

『はたらきもののじょせつしゃ けいてぃー』 

石井桃子1/訳 福音館書店/刊(1943年)

『はだかのおうさま』 アンデルセン/著 バートン/絵 

乾侑美子/訳 岩波書店/刊(1949年) 

『ちいさいケーブルカーのメーベル』 

桂宥子 ・石井桃子/訳 ペンギン社/刊(1952年)

『せいめいのれきし』 石井桃子/訳 岩波書店/刊(1962年)

 

(ミヤタ)

  

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