2011.8.13更新



板橋区立美術館


 

「イタリア・ボローニャ国際絵本原画展」



に行ってきました ④

    




   

 

板橋美術館 014.jpg

8/14までのボローニャ展!

 

 

前回に引き続きまして、最後の記事では

板橋区立美術館の成り立ちについてのご紹介です。

 

  

☆地域と世界をつなぐ板橋美術館

 

  

—板橋区立美術館はどのような経緯で設立されたのでしょうか?

 

松岡:1979(昭和54)年の5月20日に、東京都23区内初の

区立美術館として誕生しました。現在の板橋区立美術館は

「世界の美術館と張り合える楽しい美術館を作りたい」という

気持ちから活動しています。 


 

板橋美術館のぼり.jpgのサムネール画像
再掲になりますが、私はこちらののぼりがとても大好きです♪
去年からできた新しい賞です。今までは絵本の多様性を重視して賞を設けてこなかったのですが、スペインのSM(サンタマリア)財団による「ボローニャSM出版賞」はボローニャ展のコンセプトに合致しているので新設されました。ボローニャ展入選者の中から35歳以下の若いイラストレーターに奨学金として3万ドルが出され、さらにSM出版社から絵本を1冊出すことができます。そしてその絵本を翌年のボローニャ展で発表して展覧会も行います。経済的に恵まれない若手の作家に非常に大きな機会を与える賞です。
そして去年、審査員が選んだのがフィリップ・ジョルダーノさんでした。彼は今年で31歳になります。

  

 

—なぜ「イタリア・ボローニャ国際絵本原画展」を始めたので

しょうか?

 

松岡:板橋区立美術館では、開館当初から他の美術館で

扱われにくいテーマで企画を作って展覧会を行ってきました。

その一つが絵本です。

板橋区立美術が絵本の企画展を始めた当時、

東京の公立美術館で絵本を取り上げているところは

一館も無かったようです。

  

 

板橋美術館 011.jpg今でこそ当たり前に絵本展覧会を見ていますが、実は…!?

 


—絵本を扱っている美術館が無かったなんて驚きです。

  

松岡:絵本の原画を美術品として扱い、一般の大人が見ると

いうことは、実は意外に新しい習慣だと思います。

日本で初めてボローニャ展を開催したのは

兵庫県の西宮市大谷記念美術館でした。

当時、板橋区立美術館の学芸員が訪ねたときに紹介され、

1981年からボローニャ展を始めました。

絵本原画展自体が新鮮なものでしたし、珍しい東欧の絵本原画が

見られるということで注目を集めました。

東欧の絵本は面白い物が多いのですが、東西の対立の時代で

あったために当時は見る機会がありませんでしたから。

1989年に西宮市大谷記念館が3年ほど工事のため

休館することになったので、板橋区立美術館がボローニャ展の

開催準備の業務を引き取ることになりました。

その時から私が担当学芸員となり、ボローニャで直接交渉する

など積極的に関わるようになりました。

 

 

—板橋区立美術館では、展覧会を行う他にどんなことをされて

いますか?

 

 松岡:様々なイベントを企画しています。 

その一つに「夏のアトリエ」という、作家を育てることを目標とした

ワークショップがあります。毎年講師を世界各地から招き、

皆で一週間かけてじっくり作品を制作します。

日本各地から参加応募はたくさんありますが、

参加できるのは20人前後になります。

参加者には出版歴のある人たちもたくさんいます。

ボローニャ展に入選した人もいます。

美術館での教育普及事業で、専門家育成とはっきり打ち出して

いるのは珍しいと思います。

初めの年はスロヴァキアのドュシャン・カーライさん※が来てくれ

ました。作品に対する姿勢がすばらしい方です。

「夏のアトリエ」という名前もつけてくださり、

ワークショップのすすめ方も決めてくださいました。

今でもそれを踏襲しています。講師になるアーティストによって

多少の変化はありますが軸の部分は変わっていません。

 

 

※ドゥシャン・カーライ…東欧を代表する絵本作家。

 

2009年、板橋区立美術館で

「開館30周年記念 幻惑の東欧絵本

ドゥシャン・カーライの超絶絵本とブラチスラヴァの作家たち」

が行われている。

http://www.itabashiartmuseum.jp/art/schedule/e2009-05.html


 

 

 IMG_0030トリミング.jpg真剣な語り声が聞こえてきそう……。

 

 

—特に積極的に行っていることはありますか?

 

松岡:絵本というものを通して様々なことが起きる出会いの場を

作るために、情報をどんどん出していこうと考えています。

ツイッターも始めました。絵本作家を目指しているのに子どもと

ふれあう機会の無いイラストレーターには、子ども向けのワーク

ショップの講師をしてもらいます。お互いに良い経験になります

から。

 

 

—来館者は区内の方が多いのでしょうか?

 

松岡:区内の小中学生全員に招待券を配布していますが、 小さい

お子さんがいる人にもゆっくり展覧会を見ていただくために

一時保育を行う日も設けています。

一時保育を美術館で一番最初に行ったのは

板橋区立美術館です。

未就学児、小学生、中高生、大人までそれぞれを対象にした

イベントを行ってきましたし、今年は翻訳講座も始めました。

絵本には様々な要素があるので、人によってつきあい方も変わり

ます。だからこそ絵本は一言で説明出来るものではないのです。

ボローニャ展という軸を大切にしつつ、出来ることを考えていくこと

で、板橋区を世界とつなぐ役割を担っていると思っています。

講師も受講生も世界中からやってくるので、身近なところから

国際的なつながりを実感できる機会だと思っています。 

  

 

IMG_2910.JPGのサムネール画像

確かにボローニャ展へ行くと、

外国の方を見かけることが多いです。

美術作品への情熱って、いつの時代も熱いですね!

 

 

 

—板橋区立美術館の特徴はありますか?

 

松岡:板橋区立美術館は東京にあるということなどが関係して、

出版社の方やイラストレーターさんなどの絵本関係者が

非常に多く訪れます。

ボローニャ展の開催期間内限定でオープンする絵本のショップ

には、国内で探してもここにしかない絵本がたくさんあります。

それを目当てに来館する方もいらっしゃいます。

ここにくれば何かがあると思っている人たちに対しては、

こちらもできるだけ求められているものをお渡ししたいと思って

います。

とてもありがたいことに、小さいときに板橋区立美術館で遊んで

いた子どもが、母親になって遊びにくることもあります。

小さな建物ですが、美術館ということで、

地域に密着しているところに意味があるのでしょう。

実は来館者は区外の方も多いのです。

あるとき韓国の方が団体旅行で来館されたことがあります。

「イタリアは遠いから、日本にボローニャ展を見に来た」と

言っていました。見たい展示があれば外国まで行くことのできる

時代になったと思っています。

 

 

 

美術館はただ美術作品の展示を行う建物ではなく、

地域に密着しながら様々なイベントや学びの場を作っているから

こそ、すてきな交流が生まれる場になるのだろうな、

とお話を伺いながら思いました。

松岡さん、すてきなお話をありがとうございました!(サイトウ)

 

 

  

 

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2011.8.12更新



板橋区立美術館


 

「イタリア・ボローニャ国際絵本原画展」



に行ってきました ③

    




   

 

かぐや展示.jpgのサムネール画像

「かぐや姫」の展示が見られるボローニャ展は8/14までです!

 

 

前回に引き続きまして、今回の記事では

ボローニャ国際絵本原画展でボローニャSM出版賞を受賞

された、フィリップ・ジョルダーノさんのご紹介をいたします。 

 

 

☆期待の新人 フィリップ・ジョルダーノ 

 

 

—ボローニャ展の入選者には順位をつけないと伺いましたが、

ボローニャSM出版賞とはどのようなものでしょうか?

 

松岡:去年からできた新しい賞です。今までは絵本の多様性を

重視して賞を設けてこなかったのですが、スペインの

SM(サンタマリア)財団による「ボローニャSM出版賞」は

ボローニャ展のコンセプトに合致しているので新設されました。

ボローニャ展入選者の中から35歳以下の若いイラストレーターに

奨学金として3万ドルが与えられ、

さらにSM出版社から絵本を1冊出すことができます。

そしてその絵本を翌年のボローニャ展で発表して展覧会も

行います。経済的に恵まれない若手の作家に非常に大きな

機会を与える賞です。

そして去年、審査員が選んだのがフィリップ・ジョルダーノさん

でした。彼は今年で31歳になります。

 

 


 

かぐや3.jpg

  ふしぎな精霊に守られているかぐや姫。

どんな精霊なのか、すっごく気になりますね

 

 

 

 かぐやひめ表紙.jpg

上の原画は絵本の表紙でこのようになります。

 実はこの絵本、板橋美術館でボローニャ展がスタートして

すぐに売り切れとなってしまい

実際に入手できたのはしばらくたってからでした。

スペイン語のタイトルは

 『LA PRINCESA NOCHE RESPRANDECIENTE』

 

 

 

 

かぐやひめ裏表紙.jpg

こちらは裏表紙。

ボローニャブックフェアのロゴが入っています 

 

 

ボローニャロゴ.jpg

ロゴ部分のアップです!

 

 

 

—彼のプロフィールをご紹介いただけますか?

 

松岡:彼は非常に面白い背景を持っています。

父親はスイス人で母親はフィリピン人、彼自身はイタリアで生まれ

たのでイタリア人といっていますね。

フィリップさんはイタリアの美術学校で学び、ボローニャ展には

2004年に初入選しています。それをきっかけにイタリアやイギリス

の出版社から絵本を出していましたが、去年もボローニャ展で

入選して、そしてSM出版賞に選ばれました。

絵本のテキストは出版社が選んだのですが、それが「かぐや姫」

でした。SM出版賞の国際性を強調したいという主催者側の意図

の表れです。

またSM財団前会長のコルテスさんがフィリップさんの絵を見た

ときにオリエンタルな感覚を感じたということから、日本の物語が

選ばれました。

フィリップさんの母親がフィリピン人であること、さらにフィリップさん

は小さい頃から日本のアニメを見て育ち、宮崎駿の大ファンである

こと、日本へ4回来訪したことがあったことなどは、SM財団の方

たちは知らなかったそうです。

 

 

 

 

かぐや姫と、仮面をかぶった5人の王子様です

 


 

 

—フィリップさんは日本がお好きなのでしょうか? 

 

松岡:そうでしょうね。絵本のお題を見たときには驚いたそうです。 

彼はかぐや姫が月に帰った後の話にも興味を示しました。

富士山の煙は帝が不老不死の薬を山の頂上で燃やしたときに

出たもので、だから山の名前が不老不死のフジという名前に

なった、というエピソードです。

フィリップさんはかぐや姫を描くために日本に長期滞在したいと

考え、現在も東京で生活しています。

絵本を見ると、日本美術の様式をずいぶん取り入れていることが

分かります。

 

 

かぐや5.jpg

二人目の王子がインドで仏陀の聖杯を探すシーンです。

トラの口から誰かの手が出ているのが、分かりますか……?

 

 

 

—展示を拝見しましたが、すごく細かいタッチですよね。

 

松岡:彼は線のとてもきれいな人です。コンピュータで描くことも

ありますが、今回は板に直接描いています。

かぐや姫は人間界と自然界の間にいる存在だと言っていました。

その言葉を表すように、絵の中にはもののけのような存在も

出てきています。

かぐや姫への彼独特の解釈が加えられ、表現された絵本に

なりました。

 

 

フィリップ氏の描く絵の世界観は、とっても複雑で不思議で、

見る人を引きつける魅力があります。

ボローニャ展の図録にもフィリップさんのインタビューが

掲載されているので、ぜひご一読ください!(サイトウ)

 

 

☆次回は、板橋区立美術館の成り立ちについてご紹介します。 

実ははじめて出来た「区立美術館」なんですよ〜!

美術館が好きな人だけでなく、いつか絵本作家になりたい人も

必見です!

 

 

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